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223、最悪最強モンスター



 落ち着いたセレアは10階層の秘密を話してくれた。

 それは衝撃的な内容だったのだが、新情報の前に旧情報を整理しようと思う。

 以前シャーリが語ってくれた内容は、10階層には神ランクのF級までのモンスターが出現する。神ランクのG級がSSSランクとほぼ同等なので、Fとなればかなりヤバいモンスターである。

 あとマップは宇宙を疑似再現している場所で空気がないことと、気温が-150度だってことだ。だがこれは指輪によって問題解決している。

 そしてここが一番重要なのだがランダム転送だっていうこと。

 これがあったからこそ、俺たちは一か月間頑張って訓練して、太刀打ちできるようにレベルアップしたのだ。

 ここまでが旧情報。


 そして新たにセレアの口から知らされた情報……それが──


「10階層は……この世界よりも広いのです」


 沈黙が辺りを包んだ。


「え……セレア……それって本当?」


 リーリアの顔が引きつっている。

 いや、誰もが引きつっていた。


「はい……この世界の二倍の広さはあります」


 ………………。


 開いた口が塞がらないというのはこのことだろう。

 

 ──まてまてまて。

 それって全員が合流するまでに一体何日かかるんだ?

 その間、一人で戦えっていうのか?

 俺は大丈夫だが、はっきり言って他の皆はヤバい。そこまで長期間戦う想定はしていないのだ。ナルリースとシャロに関しては数時間もてばいいだろう。

 俺がフェニックスモード改で即座に合流するつもりだったのだが、そこまで広いとなると合流までにかなり時間がかかる。そうなると生存確率はグッと下がる。

 そんな危険な賭けをしてまで皆で行きたいとは思わない。


「そういうことなら全員で行くのはやめよう。危険すぎる」


 俺は即座にそう決断したが、セレアが首を振りながら再び口を開く。


「いえ、9階層の階層魔法陣は9人以上で乗らないと発動しない仕組みになっています」

「なっ……」


 つまり、攻略するならここにいる全員で行く必要があるのだ。

 俺は再び言葉を失った。


「うーむ、とするとまた修行をしなくてはならないのか? 我は大丈夫だがナルリースとシャロは危険だろう」

「レヴィア、そうね……皆無事でってことを考えると行くのは早計な気がするわね。まあ、正直私もその実力があるかと聞かれたら自信がないのだけど」


 レヴィアの発言にサリサが返答をする。


「私もセレアの髪の毛を大量に貰わないとダメかもしれない」

「リーリア! た、大量は困りますわ! なくなってしまいます!」


 リーリアが手をワキワキとさせ、セレアは髪の毛をガードするように後退る。だがリーリアは至って真面目である。そうしないと戦えないのだ。

 皆が皆、自信がない。しかし、それも仕方がない。神ランクのモンスターなんて経験したことないのだから。


「それじゃあまた数か月間ダンジョンにこもって訓練しないとダメなのぉ~? 僕これ以上強くなるのは無理だよぉ」

「私も頑張るつもりではいますが、皆さんの足を引っ張ってしまうのは忍びないです」


 ナルリースとシャロもちょっと諦めムードとなっていた。

 ……このままではダンジョン攻略がさらに延期となってしまう。

 俺としては何としても明後日には10階層攻略を始めたい。

 さっさとダンジョンクリアして10階層で訓練をしたいからだ。

 というのも神ランクのモンスターは神力があるはずなので、倒せば神力が手に入り大幅なレベルアップとなる。皆も俺だけに頼るという事はなくなるのだ。さすがに毎日配っていたら俺が神力を伸ばせないからな。


「皆さんには申し訳ないのですが……もう一つ言ってないことがあるのです」


 セレアは控えめに挙手しながらそう言った。

 

「それはなんだ? この際だから全部言ってくれ」

「これで最後ですわお父様」


 セレアは両手で胸を押さえて深呼吸をするとこう言った。


「10階層には最悪最強モンスター『うろつくもの』がいます」

「うろつくもの……? それはどういったモンスターなんだ?」

「そうですね……名前だけでは判断がつかないもの無理はありません。では一つエピソードをお話ししましょう」


 セレアは語った。

 うろつくものはその名の通り、宇宙をうろつきながら目についた星を破壊して遊んでいたとんでもない悪だったという。

 さすがの神々も怒り、うろつくものを討伐することにした。

 だが力の弱い神では倒すどころか返り討ちに合いすべてを破壊しつくされた。

 そんなうろつくものもついにはこの星の近くまでやってきたという。


「絶体絶命かと思われたその時! なんと、とある神がうろつくものを倒してくれたのですわ!」


 セレアは言いながら興奮したようで、俺のシャツを掴みながら鼻息をふんふんとさせそう言った。


「そ、そうなのか」


 すごい神もいたものだ。

 しかしスケールが違いすぎてまったく実感がわかない。


「ん? ていうか倒したのならなんで10階層にいるんだ?」


 俺がそう言うと、セレアはハッとしながら、


「それは……その神の趣味といいますか。強い者にはそれなりの敬意を表するのです。仮にも神を倒した相手……このまま消滅させるのには惜しいと」

「なるほど……それで匿う意味も込めて10階層に閉じ込めてあるということか」

「おっしゃる通りですわ」


 いやいやいや。

 気持ちはわからんでもないが何をしてくれてるんだ。

 そんな神をも倒す奴をどうやって倒せというのだ。


「でも安心してください。一回倒されたうろつくものの力はかなり弱くなりました。さらに9つに分離させられているのでさらに弱くなっておりますわ」


 つまり、10階層には『うろつくもの』が9体いるということだ。

 弱くなっているとはいえ神を倒したという相手。今のままでは不安が募るばかりだ。


「ちなみに聞くが……この中でうろつくものを倒せそうな奴は誰だ?」

「えーっと……」


 セレアは皆の顔をざっくりと見渡し、最後に俺の顔を見た。


「…………お父様だけですね」


 空気がさらに重くなった。

 弱くなりさらに9分割されたうろつくものでさえも勝てるのは俺だけなのか。


 どうやら10階層攻略は絶望的……いや、一つだけ希望がある。

 俺と同程度か、超える実力者を一人作ればいい。

 その方法がここにはあるのだ。

 


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