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220、リーリアvsレヴィア



 雑談を交えつつ、戦闘の反省点と今後の課題を語って休憩時間は終わった。


「両者、もう少し離れて」


 審判役を買って出たサリサが注意する。

 手を出せば届く距離に二人は向かい合って立っていた。


「ここでいいけど」

「我もここでいい」

「そう……分かったわ」


 バチバチにやる気満々だ。

 互いに引かず接近戦でやってやるっていう意気込みが凄い。

 接近戦はリーリアの十八番なのだが、レヴィアにもプライドがあるのだろう。


「では──始っ──ッ!!!!」


 サリサがそう言った瞬間、嵐のような殴り合いが始まった。

 鈍器と鈍器がぶつかるような音が激しく流れる。

 拳と拳が幾度となくぶつかり合い、それが衝撃波となって辺りに四散する。

 素手での組手はリーリアに一日の長がある。俺が素手であるため必然と鍛えられているのだ。


「一撃が強力すぎないか!?」

「ふふーん」


 レヴィアは拳に神力を込めている。対してリーリアは神力を使えない。

 いや、媒体がないと使えないと言った方が正しいか。

 

「なるほど! 拳に巻かれていたのは髪か」

「そうだよ! セレアからもらったの」


 数本のセレアの髪がリーリアの拳に巻かれている。これを媒体にして神力を行使していたのだ。

 互いに殴られては殴り返す。顔を殴られれば腹を、腹を殴られれば顔を。やったりやられたり、一歩も引かない根気比べの時間が続いた。

 そんな中、少しだけ流れが変わった。多少レヴィアが押され始めたのだ。拳を受けることに必死になっている。

 余裕のできたリーリアは時折フェイントのようなものを混ぜ翻弄し始める。

 リズムを狂わされたレヴィアは顔に強烈な一撃をくらった。


「うぐっ!」


 無視できないダメージを受けのけぞるレヴィア。

 その隙をついてリーリアは畳み込む。

 腹に、腕に、胸に、肩に、顎に、的確に拳を当てていく。

 流れるようなコンボにレヴィアの体は宙に舞う。


「はあああぁぁぁぁぁ!!!!」


 リーリアはサリサ戦でも見せた圧縮魔力球を両手で練りだした。それを空中のレヴィアに向かって──放つ!


 ドオォォォォォォォォン!!!


 近距離で凄まじい爆発が起こる。

 だがその爆発でさえもリーリアは制御している。すべての爆発の威力をレヴィアの方角だけに一点集中して起こしていた。

 あまりの衝撃に5階層は地震のように揺れ動き、空気は振動する。

 それをくらったレヴィアはもちろん、はるか上空へと吹っ飛ばされた。


「セレアソード!!」


 リーリアは九星剣とセレアソードを構えると空中へ飛んだ。

 

 ────

 ──

 ─


 この一か月、リーリアは悩んでいた。

 それは仲間の成長速度が異常に速くなったことだ。

 理由は分かっている。神力による恩恵の為だ。

 パーティーの中で唯一神力が備わってないのはリーリアだけとなった。

 そのことで俺は何度も相談されていた。

 

「お父さん……私も神力が欲しい」


 じっと見つめられて腕をゆすられる。

 俺はこの光景をどこかでみたことがある。

 そう、それは子供が大人に玩具をねだる行為である。


「リーリアはそのうち手に入れるよ」

「えー、そのうちっていつー?」

「そのうちはそのうちだ」

「だからいつってばー!」


 ガクガクと肩をゆすられる。

 ここまで駄々をこねるのは珍しい。

 まあ、気持ちはわかる。自分だけ持ってないのは嫌だし、おいていかれるのも怖いだろう。

 だが……今は機が熟してない。

 リーリアが覚醒するのは──セレアの種を受け取った時であろう。

 それがいつかは俺にも分からない。予想は出来るが確実ではない。知ってるのはセレアだけだ。


「リーリア」

「ぶー」


 俺はリーリアの頭を撫でてやる。

 頬を膨らませながらもリーリアは撫でられるがままだ。


「その代わり戦い方を教えるから勘弁してくれないか?」

「うーん……ずっと一緒にいてくれる?」

「ああ、ずっと付きっきりで教えるぞ」

「わーい! やったぁ!」


 この一か月は殆どリーリアの為に使った。

 他の皆の助言などももちろんしたが、常に一緒にいたのはリーリアだけだ。

 そのおかげか、リーリアは魔力とセレアの髪の媒体だけでも戦える強さを手に入れた。


 ────

 ──

 ─


 リーリアは空中へ舞う。まるで蘇ったフェニックスのように炎の翼を目一杯広げぐんぐんと昇っていく。風魔法と火魔法を利用した高速上昇だ。

 

「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 レヴィアを標的とし、高速回転しながらグングン近づく。それが炎の竜巻となりレヴィアを襲った。


「ぐうぅぅぅぅっぅあっつっ!!!!」


 神力ガードしているのだが、鋭い刃に切り刻まれる。その一瞬の隙間から灼熱の炎が入り込みレヴィアを焼いた。

 竜巻がレヴィアを追い抜いた瞬間、ピタッとリーリアは静止した。

 丁度レヴィアの背後を取った感じだ。

 

「これでっ!!」


 セリフを言い終わる前にセレアソードはレヴィアを捉えていた。

 肩から胸にかけて深い傷をつけた。

 

「……やるな……リーリア」

「鍛えたもん」

「だがまだだっ!」


 レヴィアの内から膨大な魔力と神力が溢れてくる。

 

「簡易融合!?」

「そうだっ!!」


 ドンッっとリーリアの体に強烈な水圧がかかる。

 レヴィアの体から凄まじい勢いで水が放出された。

 まともにそれを受けたリーリアは大きく後方へ吹き飛ばされた。


「さて、反撃させてもらうぞ」


 胸にできた傷を、「ふんっ」と気合で治すと、リーリアに襲い掛かった。


「うううぅぅぅ!!」

「どうした! 動きが遅くなってるぞ!」


 レヴィアの拳がリーリアのガードを貫きダメージを与えていく。

 空中に浮遊している状態は不利と考え、地上に降りようと試みるが、それを立ち回りで阻止するレヴィア。

 空中ではフェニックスモードを発動しているレヴィアの方が自在に動けるのだ。

 魔法による超加速で突破しようとしたが、それも魔法の発動の瞬間を狙われ強烈なパンチをくらう。

 ぐったりとしたリーリアの首袖を掴み、顔を覗くとリーリアは既に涙目となっていた。


「リーリアは攻撃力はバカ高いがガードは脆いな」

「……だって自分で神力が使えないんだもん」

「まあそうしょげるな。セレアの媒体だけでそこまで強くなったのは誇れることなのだぞ?」

「……お父さんに特訓してもらったからね」

「む……ズルいぞ」

「いいじゃんもう3日はお父さんを自由にできる権利を手に入れたんだから」

「ふふふ、もう5日は確定したようなものだ」

「まだシャロかジェラがいるよ?」

「我がその二人に負けるとでも?」

「……負けちゃえばいいのに(ぼそっ)」

「──っておい! リーリア何か言ったか!!?」

「なんでもないよーだっ!」


 リーリアは棄権をした。

 レヴィアにはあと一歩届かなかった。

 この後めちゃくちゃ、「やっぱり神力欲しいよぉー!」と駄々をこねられるのであった。



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