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203、復活のエルサリオス



 翌日、俺とナルリースは中央大陸へと向かっていた。

 普通に風魔法で飛んでいくと数週間はかかってしまうのだが、俺がフェニックスモードの超高速スピードでいけば1日もかからない。

 ナルリースは俺が抱っこをしており、落ちないように首にしっかりと抱き着いてもらっている。


「そういえばレヴィアは神力を扱えるようになったのですか?」


 ナルリースは何気なくその話を聞いたつもりだったのだろう。

 だが実際は旅立つ前からソワソワしており、この話をずっと聞きたがっていたように思えた。そんなナルリースの態度をみて、聞かれるまで話すのを止めようかなとちょっとした悪戯心がわいたのだ。


「気になるのか?」

「そ、それは仲間ですから……話したくないのならいいですけど」


 若干拗ねて感じに視線をそらし始めたので、どうしようもなく可愛く思えてしまった。

 

「お前は可愛いな」

「な、なんですか突然!? そんな話してましたっけ?」

「ははは!」

「も、もうベアルさんってば!」


 ひとしきり笑った後、レヴィアのことを話した。

 あれから特訓を開始した成果もあって神力の基礎ともいえる神力ガードを発動させることができた。今頃は力になれるためにダンジョンで特訓をしているだろう。

 そんな話をしながら数時間。眼下の風景が海に変わった。魔族大陸を脱したのだ。


「本当に速いです! この調子ならお昼には着いてしまうのではないですか?」

「ああ、そうすれば今日のうちに用事を済ませることができるな」

「…………その用事って……エルサリオスですよね?」


 ナルリースには何も説明しないままだった。

 ギリギリまで沈んだ気持ちにさせたくなかったからだ。

 だがナルリースは気付いていたようだ。ならば説明してもいいだろう。


「ああ、エルサリオスからお前が神力をどうやれば使えるようになるのかを聞き出す」

「──っ!? 私も使えるようになるんですか?」

「少なくともエルサリオスは使えるようだぞ?」

「えっ……エルフの城で戦った時に使ってきたのですか?」

「いや……戦闘時というより結界だな。俺をあの島に封印したのはエルサリオスだ。そしてあの結界はおそらく神力によって作られたものだ」

「そうだったんですか!」


 それも限定的な力だ。

 あの結界は俺だけを通さない特別な結界。

 本来なら全てのものが通れないようにすれば俺は生きてはられなかった。

 しかしあの時のエルサリオスはあえて俺を生かすようにして封印した。

 そんな自由自在な力など……神力以外にありえない。

 さらにその証明といえるのがセレアソードで結界を破ったこと。

 セレアソードは魔力を神力に変換する能力がある技だ。

 だからこそカオスを倒す唯一の力としてリーリアに託されたのだ。


「一万年前、アイナノア女王がカオスを封印した。多分それも神力だ。そして現代。エルサリオスは神力を持っていた。そこから神力は代々エルフの王族に伝わる秘伝なのだと推測ができる。だからそれを教わりに行くんだ」

「なるほど……」


 ナルリースは煮え切らない顔をしながら、ムムムと唸っている。

 ……やはりエルサリオスに会うのは嫌なのだろうか。


「エルサリオスに会うのは嫌か?」

「……正直、あまり会いたくはありません……ですが、私が強くなるためなので覚悟を決めます」

「よし、いい子だ」


 ─


 迷いの森の上空に到着する。

 そこはかつての森とは大分かけ離れていて、所々に穴ぼこのように木が消滅している部分があった。


「エルフが管理しなければ森は死んでしまいます。森の規模は縮小するでしょう」


 ナルリースは少し悲しそうだった。

 エルフの国に未練はないと言っていたのだが、多少は思う所があるのだろう。


「そろそろつくぞ」

「……はい」


 ボロボロに朽ち果てた城の残骸が見えてきた。

 周りも木々は倒れ荒れ放題となっている。

 そんな場所に一つ。巨大な石柱が立っていた。

 何重にも張られた石の壁。その中にエルサリオスがいるはずだ。

 石柱の近くで止まると、ゆっくりと地面に下り立った。

 

「……ついにきましたね」


 ナルリースは震えていた。

 極度の緊張からか、俺の首にしがみついたまま離れようとしなかった。


「このままの状態でいいか?」

「……え? あっ! す、すみません下ります!」


 今気づいたようで慌てて俺から離れた。


「まあ、怖いなら俺の後ろにいるといい。会話は俺がしよう」

「だ、大丈夫です。覚悟は決めましたから」


 そう言いつつも体が防衛本能をだしているのか、隣にピッタリとくっつき腕を掴んでいる。

 俺はそんな姿に微笑ましくなりながらも、一枚一枚と石の壁をはがしていった。

 そしてついに最後の一枚。


「いくぞ?」


 ナルリースはこくりと頷く。

 

 ──最後の一枚をはがした。


「こ、これは……」


 そこにいたのは……まるで骨と皮になった死体のような物体だった。

 体の水分の大部分が抜け、髪の毛は抜け落ちている。

 これを見た殆どの人は死んでいると勘違いするだろう。

 だがこいつはカオスの断片を取り込んだ人魔獣。油断することはできない。


 まだ燃え続けている黒い炎を解除する。

 音もなく消えた黒い炎。それと同時にエルサリオスの体が脈打つ。

 ボコボコと体が膨れ上がり艶を取り戻していく。

 代わりにエルサリオスが立っている地面が乾燥していった。水分を足から吸収し、体へと補給しているのだ。

 数秒後には元のエルフ姿へと戻った。


「ふははは! この時を待っていたぞ!!」



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