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201、ジェラの実力は



 皆の元に戻るとリーリア達も戻ってきていた。


「お父さーん!」


 リーリアが笑顔で出迎えてくれる。

 近くまで飛んでいくと、待ちきれないとばかりにジャンプして抱きついてきた。

 

「オルトロスを倒したよ! それとね、お父さんの薬のおかげでジェラが進化できたんだよ!」

「ははは、よくやったなリーリア」

「えへへ! うん!!」


 抱きかかえながら地面へと着地する。リーリアは俺に抱きついたまま離れようとしない。まだまだ話したりないといった様子だ。


「ダンナ、お疲れにゃ」

「ああ、お疲れジェラ……大変だったようだな?」

「にゃはは、まあにゃ。でもダンナとリーリア、ついでにレヴィアのおかげで進化できたにゃ」

「おい……なぜ我がついでなのだ!」


 銀色の美しい髪をした女性が目の前にいた。

 喋り方と獣人の象徴である耳と尻尾が生えていたのでジェラだということはすぐに分かったが……なぜ裸なのだろう。

 まあ、本人がまったく気にしてないので触れないでおくが。


「随分と強くなったな……はっきりいって見違えたぞ」

「にゃはは! あたしも自分でビックリだにゃ」


 これなら10階層も心配なさそうだ。


「わ、我も頑張ったのだぞ!」


 ジェラを押しのけるようにして主張するレヴィア。

 その様子に少しだけ笑いがこみ上げてきた。


「ふふっ、分かってるさ。レヴィアも偉いぞ」

「う、うむ。分かればいいのだ」


 どうやらその言葉だけで満足したらしい。

 顔がにやけている。可愛い奴だ。


「ところでベアル……麒麟はどうなったの? 倒したの?」


 サリサが聞いてきた。

 俺は少し険しい顔をしながら本当の事を言うことにした。



「────ということがあった」


 はっきりいって信じられることではない。

 空間を切り裂いて女が出てきたなど。さらにはそれが人ならざるもので、神のような存在だったなど。にわかには信じられないことだ。

 だが皆は信じてくれた。誰一人として疑うものはいなかった。


「一体何者で、何のために現れたのかしらね?」

「……わからん。だがそんなことよりもぜっかく戦闘を楽しんでいたのに水を差されたことに腹が立つ」

「はあ……昔から本当に戦闘狂よね」



 サリサは呆れていた。

 そしてサリサは知っていた。

 こんな時、ベアルは夜の街に出かけて女をあさるということに。

 ターゲットが自分になることもあるが……今は妻たちがいる。

 今日は誰だったかしらと考えると、ゆっくりとレヴィアの方を見た。

 ……ご愁傷様。サリサは手を合わせる。



 レヴィアはサリサの行動を首を傾げながら見ていた。

 どうやら自分に手を合わせているらしい。

 意味が分からなかった。でもまあそんなことはどうでもいい。

 レヴィアはベアルの手に持っている武器に注目した。

 どうやら斧のようである。しかもかなりレアなものだろう。

 それを今まさにジェラに手渡そうとしている。

 レヴィアの心に激しい嫉妬が渦巻いた。



「そうだジェラ。これお前なら使えるんじゃないか?」

「にゃ! 斧は助かるにゃ! ついさっき壊れてしまったからにゃ!」


 差し出された斧を掴むとジェラは妙な感覚に襲われた。

 よく分からないドラゴンの頭をした獣が体の中に入り込むような感覚だった。

 不快なものではなく、むしろ体になじむような、一体化するような不思議な感覚だ。

 

「それは『雷星アックス』という宝具だ」

「雷星アックス……にゃ……」


 むしろ昔から持っていたかのような懐かしさもある。

 ジェラはそれを構えると、素振りを数回、連撃を何度か繰り返した。

 以前よりも数倍鋭さをました攻撃は見事としか言いようのない出来栄えだった。


「さらに強くなったな……今のジェラは俺の次に強いんじゃないか?」

「にゃはは! それは言い過ぎだにゃ」


 ジェラは謙遜するが、実際かなりの実力差が出たように思える。

 対抗できるとすればリーリアの真セレアソードしかない。だがあれはかなり危険なものなのでおいそれと使うことは出来ない。


 皆の視線がジェラへと集まっている。

 そしてそれは様々な感情が向けられているといっても過言ではない。

 中でもレヴィアの表情はかなり分かりやすい。

 嫉妬や焦り。そんな感情が見て取れた。

 闘争心をたきつけたわけではないのだが、そういうことなら丁度いい。


「頑張った褒美といってはなんだが……ジェラ、少し俺と戦ってみるか?」

「にゃ!? 本当かにゃ? それは嬉しいにゃ」


 ジェラは俺と同じで戦闘狂だ。

 新しい力をどれだけ発揮できるのか試してみたいはずだ。


「ああ、力の使い方を教えてやろう」


 俺はリーリアを降ろすと、距離を取った。

 ジェラは好戦的な笑顔を見せ雷星アックスを構える。

 

「どこからでもかかってこい」

「──では、いくにゃ!」


 一気に跳躍し距離をつめるジェラ。

 そのまま振りかぶると渾身の一撃を俺に叩きつけた。

 俺は仁王立ちしたまま腕を組んでいる。


 ガンッ!


 振り下ろされた雷星アックスは神力ガードによって簡単に弾かれた。


「にゃっ!?」

「アイスボール」


 隙だらけの胴体に氷球をぶつける。

 ジェラはもと居た場所まで吹き飛ばされた。


「ただ武器を振るうだけではダメだ。しっかりと神力を武器に伝わせろ」

「にゃ! わかったにゃ!」


 もう一度、跳躍するジェラ。

 だが今度は俺も反撃をする。


「ゴッドウインド」

「にゃ!?」


 強風にあおられ、また元の位置まで吹き飛んだ。


「ズルいにゃ!!」

「反撃しないとは言ってないぞ。しっかりと体も守りながら戦え!」

「うにゃにゃ! わかったにゃ!」


 今度はじりじりと間合いを測りながら近づく。

 武器にも体にもしっかりと神力ガードで覆っており隙がなさそうに思えた。


「そんなにゆっくりしてたら敵にやられるぞ! ──ゴッドプチメテオストーム」

「にゃああぁぁぁぁぁ!!」


 石礫のような隕石が大量に降り注ぐ。

 ジェラは必死になって斧を振るい、それらを破壊していく。

 だがあまりに大量なため打ち損じが出てきた。顔は必死にガードしたが、手や足などにあざができた。

 隕石がやんだ瞬間を見計らって、俺はジェラに近づいた。


「隙だらけだぞ」

「──ッ!?」


 雷星アックスを掴み持ち上げる。ジェラの体は簡単に宙を舞った。


「にゃああぁぁ!!」


 ガンッ!


 地面に叩きつける。

 背中から落ちたジェラは武器こそ放さなかったが、完全に無防備状態だ。


「まったく勝てる気がしないにゃ……」

「まだまだ力の使い方があまいな」

「にゃはは……ダンナにはかなわないにゃぁ」


 手を伸ばしジェラの手を掴む。

 するとジェラはニコッと笑った。


「サンダーにゃああああああ!!!!」


 ジェラから強力な電撃が発生した。

 それは渾身の神力をこめた一撃だ。

 ──だが。


「ふっ!」


 俺は笑顔のまま握手を続けた。


「な、なんで効かないにゃ!?」


 さっきまで麒麟と戦っていた俺から言わせればこんなものなど静電気程度の軽いものだ。そもそも体の中の避雷針をまだ取り除いていなかったからな。


「で、まだ戦うすべはあるか?」

「……ありませんにゃ」


 今度こそ本当に降参のようだ。

 そのまま手を引いて起こしてやる。


「今度特訓してやる」

「にゃ! 本当かにゃ!? ありがとうにゃ!」


 そういうと嬉しそうに抱きついてきた。

 ……そういえばこいつまだ裸だったな。

 直に伝わる感覚がとてもやわらかい。


 しばらく抱き合っているとレヴィアに近づいてきた。


「いい加減もう帰るぞ! 今日はもう疲れたのだ!」


 ご機嫌斜めだった。

 まあ、今回はジェラを少し特別視したから仕方ないとはいえ。

 ……嫉妬とは可愛らしいやつだ。

 俺はレヴィアに近づき耳元で呟いた。

 

「消滅の魔力の正体がわかった。あれは神力と魔力を混ぜて作られるものだ。だからお前も神力を持っていることになる」

「なっ! それは本当か!?」


 寝耳に水だったようで、驚いているがあまりに突然だったため疑いの眼差しを向けられた。


「本当だ。今夜お前に教えてやる」

「……あっ! そうか!」


 本日が自分の番だったことを思いだしたようだ。

 嬉しさを抑えたような顔をして、にへっと顔を崩した。


「わ、わかった……今夜よろしく頼む」



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