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197、ケツァルの能力


 

 俺以外の全員がケツァルの存在に気付けなかった。

 それもそのはずで魔力探知には引っかからなかったのだ。


「ベアル……どういうこと? あのケツァルってやつは魔力が無いわけ!?」


 サリサが肩越しから喋りかけてきた。それもかなり困惑気味だ。

 

「クカカカカ!」


 そんな動揺を感じ取ったのかケツァルが高らかに笑った。。


「──ッカッカッカ! …………ああいいねえ! その表情ナイスだ! 興奮しすぎて股間が盛り上がってきちまうぜ!!」


 下品な言葉にサリサが顔をしかめる。


「気に入ったぞ女! ベアルを殺した後はお前は俺の嫁にしてやろう! クカカカ!」

「誰があんたなんかの嫁にっ! いい度胸じゃない……私があんたの相手を──」


 サリサが前に出ようとしたところを俺は手で押さえた。


「──やめておけ。サリサじゃあいつに勝てない」

「えっ!? なんでよ! 私だって魔王なのよ!? そりゃあなたには勝てないけど、そこらへんの敵には負けない自負があるわ!」


 悪いがサリサでは絶対に勝てない。

 その理由が──


「ケツァルは魔力を失ったかわりに神力を手に入れているんだ」

「え……」

「だから魔力探知ではなく神力探知の方に引っかかった」


 オルトロスが襲ってきたあと、念のために神力探知をしてみた。すると谷底にいた強力な気配を探知した。その神力があまりに強大だったために全員を守り切れるか分からなかったのでパーティーを二手に分散したのだ。


「しかもあの様子だとかなり使いこなせているみたいだな」

「……さてどうかなぁ? 今ならその女にも勝ち目はあるかもしれないぜ?」


 ケツァルはワザとらしく腰をカクカクと激しく振るとケタケタと笑い出した。


「あいつ……!」

 

 サリサはああいう男は大嫌いだった。

 コメカミがピクピクと反応する。


「あんな挑発にのるな!」

「くっ!」

「なんだなんだ? 威勢がいいのはそのおっぱいだけかよ! クカカカカ!」

「五月蠅い!」


 サリサは最大限に魔力を込めた鞭を打ち付ける。

 強烈な一撃は尾根を砕き土をえぐる。

 だがその場所にケツァルの姿はなかった。


「どこ──」

「サリサ! 鞭を放せ!」

「──っ!?」


 慌てて鞭を手放すと、鞭は生きたように暴れ狂い、太く巨大なものへと変わっていく。それはやがて蛇のような形となり、先端に顔ができると、鎌首をもたげチロチロと舌をだした。


「私の鞭がなんで蛇に!!?」


 これには俺も驚いた。

 神力は万能の力とはいえ、物を生き物にかえるなど想像の範囲外だったからだ。

 

「クカカカカカカ! 愛鞭が蛇に変わっちまうのはどんな気分だ? 俺の嫁になるんだったら返してやってもいいぞ?」

「死んでもお断りよ!」


 サリサは悔しそうに歯を食いしばる。

 さすがに武器がなくなってしまったら戦闘力は半減する。これで完全にサリサの勝機はなくなったのだ。

 俺はサリサの肩に手を置いた。


「お前はよくやった。あとは俺に任せておけ」

「……ベアル……」


 サリサは力なくコクリと頷くと後方に下がった。


「お、ついに本命登場か? あぁ?」

「ああ、俺の嫁をいじめた償いをさせてやる」

「クカカカカカ! できるものならやってみな!」



 雷雲はいつの間にか消え、さっきまでのか嘘のように晴天となった。

 対面する両者の間に虹ができ、遠くから見れば絵画のように美しかっただろう。

 俺が本気だということがわかるとケツァルも余裕の笑みがなくなり真剣な表情となった。

 

 どっちから動いたのかは分からない。

 いや、同時だったのかもしれない。

 俺は一気に勝負を決めるべく前方に消滅の魔力砲をお見舞する。

 尾根表層を削り、サリサの愛鞭から生まれた蛇も消滅させる。

 後方から「あぁ私の鞭が……」と悲しそうな声が聞こえた気がするが無視をする。

 その時、空中へ高速で飛び出す影が見えた。

 

「クカカカカ! 容赦ねえなぁ!!」


 ケツァルの背中には翼のようなものが生えている。

 あれは……アナスタシアのフェニックスモードと同じような翼だ。

 アナスタシアの場合、融合したフェニックスの力で作り出し制御しているものなので操作は簡単だが、自身で作り制御するとなるとかなり難しいものだ。だが一度やり方をマスターしてしまえば風魔法による飛行よりもスピードがあり細かい動作もできる。


「アナスタシアの顔を立てて使用は控えていたんだが……不利になるならやむを得ないか」


 ふんっと力を込めると俺の背中にも同じような翼が生えた。

 するとまた後方から声が聞こえた。


「お、お前もできたのか! わ、わたしのフェニックスモードがこんなにもあっさりと……」


 やはりアナスタシアはショックを受けていた。

 そりゃ自分だけの技だと思っていたんだから当然だ。

 俺も今まで使用する事態にならなかっただけで、使おうと思えば使えたのだ。

 同じように驚いていたケツァルの眼前に瞬時に移動した。


「クケッ!?」


 変な声をだしたケツァルの顔面を殴りつける。するとボンッという汚い音がして顔が破裂した。

 次に体をひねり、無くなった顔の部分からかかと落としをくらわせると、ぐちゃっという音と共に体を地面に叩きつけた。


「すべてを燃やし尽くせ! ──ゴッドインフェルノ!」


 ケツァルの体が瞬く間に青い炎に飲み込まれた。その体はみるみる溶けていき跡形もなく消え去るのだった。

 俺はそれを確認したあと、さらに神力探知を行った。念には念をいれる。


「……反応はまだあるか」


 独り言のように呟き。一旦皆の元へと戻った。


「すごい! すごいですベアルさん!」

「べーさんナイス~。さすが私の夫」

「お父様カッコいいです!」

「私のフェニックスモードを使用したんだから当然の結果だな!」

「何よあのゴッドインフェルノって、いつ編み出したのよ」


 大歓声、拍手喝采の出迎えだ。


「いや、説明したいのは山々だが奴はまだ死んでない」

「「「「「えっ!?」」」」」

「奴はスライム型の人魔獣だ。核を壊さない限り何度でも蘇る」




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