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195、オルトロス退治


 

「ただいま……ってレヴィアその腕大丈夫!?」

「う、うむ大丈夫だが……その女はジェラなんだな?」

「わからないのかにゃ!? まあ髪の色が変わったからかにゃ?」


 いや、どちらかというとその魔力量だとツッコミたかったレヴィア。

 だがそんな悠長なことを言う前にオルトロスが口をはさんできた。


「あらあら……誰かと思えば雑魚の獣人じゃない。なんか少し強くなったみたいだけどあたしの敵じゃないわね」

「雑魚とはにゃんだ雑魚とは!! って……なんかオルトロスも強くなってないかにゃ?」

「本当だ……さらに魔力量が上がってる気がする……」

「すまん……我の両腕を喰われたのだ」

「えぇぇ!!?」

「にゃんと!!」


 二人の反応が面白かったのか、オルトロスもうふふと笑う。


「いい反応ね……そうね、あなたとっても美味しそうだから食べてあげるわ」


 リーリアを指さしてじゅるりと舌なめずりをする。

 

「冗談! お前なんかに指一本でさえ食べさせるものか!」

「威勢はいいわね!」

「威勢だけじゃないもん! ジェラ、準備はいい?」

「おうにゃ!」


 普段から一緒に修行をする仲であるためコンビネーションはばっちりだった。

 打ち合わせなしに左右対称に分かれ間合いを取った。

 だがオルトロスもじっと待っているわけではない。


「ふんっ!」


 羽ばたきをして無数の刃を生成し、二人めがけて飛ばした。


「はあぁぁぁぁぁ!!」

「にゃあぁぁぁぁ!!」


 リーリアとジェラは走りながら円を描くように大きく回りそれを避けた。

 最初にいた位置から反対側に差し掛かるときリーリアとジェラは交差する。

 オルトロスはこの瞬間を見逃さない。


「馬鹿ね! そのまま二人で切り刻まれなさい!! ──秘儀、網の刃」


 オルトロスはさらに大きく羽ばたくと、網目状の刃が広範囲に展開された。それを二人の方角へ飛ばす。


「まずい! 二人とも避けてくれ!!」


 あれは絶対に避けられないと頭では分かっているのだが、叫ばずにはいられなかったのだ。

 

「エクスプロージョン!!!」

「あははは! そんなんじゃ防げないわよ!!」


 刃の進行を防ぐようにオルトロスの眼前で炎の爆発が起きる。

 だがこの程度の攻撃では刃どころかオルトロスにさえダメージは通らない。

 

「──手応えあったわ!!」


 爆発によって視界はさえぎられたが、刃が確実に二人を捉えていた。


「そ、そんな……」


 レヴィアは絶望し、膝から崩れ落ちた。


「あはははは!! 完全勝利ね!!」


 オルトロスの笑いが山間にこだまする。

 あとはここにいるやつらを全員喰らえばあの男に挑戦できる──それを考えるだけで嬉しさがこみ上げてきて笑いが止まらなくなったのだ。

 

 ああ、あの子供の顔だけは取っておこうかしら?

 それを見せたらあの男はどんな顔をしてくれるのかしら?

 楽しみでゾクゾクしちゃうわ!


 オルトロスはもう完全にベアルとの戦いしか考えていなかった。

 ──それが決定的な油断となった。

 


 爆発による砂煙が徐々に薄まっていく。

 するとそこにはジェラが一人で立っていた。


「はっ!? 無傷ですって!?」

「にゃははは! そんなものは効かないにゃ!」


 ジェラの前方にはヴェールのような薄い膜があった。


「な、なんなのよそれ!!」

「にゃははは! 教える必要はないにゃ!」

「えっ──上っ、しまった!?」

「くらええぇぇぇぇ!!!」


 頭上から振り下ろされた一閃がオルトロスをぶった斬る。

 

「ぐぉおおぉぉぉぉぉ!!」

「まだまだ!!」


 リーリアがオルトロスを連続攻撃で切り刻んでいく。

 さすがのオルトロスもこれでは再生が間に合わない。

 だが肉片となっても蠢き本体に戻ろうとしている。ものすごい再生力だ。


「キリがない! レヴィアお願い!!」

「! わかった!」


 こま切れにした肉片を剣でバチーンとレヴィアの方にはじく。

 そこには口をあけたレヴィアが待ち構えていた。


「はいはいはいはい!!」

「もごもごもご!!」


 飛んできた肉片をレヴィアは口でキャッチして咀嚼する。

 

「まだまだいくよ!!」

「もぐもぐもぐもぐもぐ」


 ひたすらただ愚直に、口元を血で汚しながらも、休むことなく食べ続けるレヴィア。


「ほらほらほらほらほら!! あ、核発見──これもレヴィアに投げちゃえ」

「うぐぐぐぐぐぐぐぐぅぅぅぅぅっぅぅぅ!! (し、しぬぅぅぅ)」


 次々と口に放り込まれる。

 飲み込むより多くの肉片を投げ込まれるため、噛まずに丸のみをすることとなる。


 ──数分後。

 

 死んだように寝ているレヴィアがいた。


「さすがにレヴィアのお腹に入っちゃえば復活できないでしょ」

「体を乗っ取られたりしないにゃ?」

「同じ人魔獣なら大丈夫っぽいけど……レヴィア大丈夫?」


 パンパンになった腹を抑えながら、よろよろと手を上げるレヴィア。

 大丈夫だと言っているようだ。


「あれはしばらく動けそうにないね」

「にゃはは! オルトロス退治大成功にゃ!」

「だね!」


 リーリアとジェラはパチンとハイタッチをした。


 


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