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184、これが正解



 同じ場所で同じように鎮座しているそれは間違いなくリヴァイアサンだった。

 すべてが元通りになっており、たった今倒した奴は実は幻だったんじゃないかと疑ってしまうほどだ。

 

「なんで復活してるの!!?」


 リーリアも俺と同じように海へ飛び込んできたようだ。

 続くように他の皆も海へ入ってきて、誰もが驚愕し戸惑っていた。

 

「少し離れてろ」


 念のためもう一度倒してみよう。

 俺は皆を後ろに下がらせると、魔力の糸で巨大な網を作り出した。

 それをリヴァイアサンへ向かって投げる。


 バシュッ! 


 リヴァイアサン全体を包み込むようにして網は丸まっていく。ギュウギュウと音が鳴りそうなほどみっちりと詰め込んだ網の中で、リヴァイアサンは身動き一つとれずに咆哮だけが悲しく響く。


風球ウインドボールからの────インフェルノ!」


 風球ウインドボールに閉じ込めたリヴァイアサンをインフェルノで灰になるまで燃やし切った。


 魔法をすべて解くとそこには何も残っていなかった。


「これでどうだ?」


 ──10秒後。


 突然、リヴァイアサンは現れた。

 何もなかったかのように一瞬にして姿を現したのだ。

 リヴァイアサンは同じ格好で全く変わらずにそこに鎮座している。


「これじゃ永遠に倒せないよ!」


 リーリアの叫びは全員の心を代弁している叫びだった。

 

「本当に倒すだけしかないのでしょうか?」

「他のリヴァイアサンを倒しても同じなのかな?」

「当たり外れがあったりしてね~あはは~」


 シャロの言った何気ない一言に皆が注目する。


「それよ!」

「一体が本物で二体が偽物ってこと?」

「なら、他の奴も倒してみましょう」


 こうなったら何でも試して見るしかない。

 俺たちはすぐに移動を開始した。


 

 

 ──結論から言うと予想は外れていた。

 他の二体を倒しても同じように復活したのだ。


「ふーむ……困ったな」


 今は中央の島で休憩中だ。

 小さな島であるからギュウギュウ詰めになりながら寝転んでいる。


「疲れたぁ~僕もう動けないぃ」

「シャロは何もしてないでしょう! 倒したのはベアルさんなんだからね」

「とか言いながらナルリースはちゃっかりべーさんの横取ってるし!! こら~僕にそこを譲れ~」

「だ、ダメよ!!」


 右横で何やらわちゃわちゃとしている。

 どうやらまだまだ元気のようだ。


「しかし倒してから復活するまでなんで10秒あるのかな?」


 左隣のリーリアが俺にくっつきながらそう呟いた。


「確かにそうだな……何か意味があるのかもしれな──」


 突然ひらめいた。

 もしかしたら倒し方が解ったかもしれない。


「サリサ! 分裂スライムを覚えているか?」

「え? 分裂スライム……あっ!!」


 どうやらサリサも解ったようだ。


「お父さん分裂スライムってなに?」

「分裂スライムは正式な名前ではないんだが、そういう種類のスライムが中級ダンジョンにいるんだ。そいつ厄介なことに攻撃するたびに分裂するという特性を持つ。しかも一匹を攻撃したら他の分裂スライムも呼応したかのように分裂する。さらに大量に現れるものだから生半可なパーティーでは倒しきれずに全滅してしまうこともあるんだ」


 そこまでいうと勘のいいリーリアも解ったようだ。


「む? どういうことだ? リヴァイアサンは分裂しているわけではないだろう?」


 アナスタシアが何を言っているんだと怪訝そうな顔をしている。


「分裂スライムは攻撃すると増える。ならばどうするのか……」


 俺は神力を使用してウルトラノヴァを作り出した。


「一度にすべてを吹き飛ばすのが定石だ!!!」


 俺はウルトラノヴァを空中へ放り投げた。

 次の瞬間、激しい閃光が8階層全体を照らす。


 ──刹那。


 激しい爆発が俺たちを巻き込んで広がっていく。

 海は蒸発し、島は塵へと変わる。

 俺を中心として神力ガードで包んでいるため、皆は平気だ。

 だが周りの状況に皆は唖然とするばかりだ。

 威力はブラックノヴァの方が上だが派手さではこちらだろう。


 すべての爆発が収まるとそこはただただ広い真っ白な空間が広がっていた。

 海も岩も砂も、全てが消え失せたのだ。


「あ、相変わらずすごい威力だな……っていうかいきなり使うな!!」


 皆は白い地面で、各々に抱き合いながら怯えていた。

 アナスタシアがそう怒鳴るのも無理はない。 


「……本当にすごい威力ですね。ブラックノヴァも恐ろしかったですが、ウルトラノヴァは純粋に生きた心地がしなかったです」


 隣にいるナルリースが震えていたので、俺はそっと肩を引き寄せてやった。

 それを見ていたアナスタシアはむすっとした顔となる。


「おい! こんなの地上で使ったら大地が吹き飛ぶぞ!」

「確かに使いどころは考えないといけないな」

「そ、それに私も怖かったぞ!」

「アナスタシアなら耐えられるんじゃないか?」

「……ブラックノヴァは一瞬にして神力が尽きたが、確かにこれなら神力ガードで耐えられるかも知れない」

「すごいじゃないか」

「ふふふ──ってそういうことではない!」


 分かりやすい奴だがあえてそこはスルーをしておく。


「では手分けして帰還魔法陣と階層魔法陣を探そう。モンスターの気配はなくなっているから出現してるはずだ」

「はーい」

「お、おい! 無視するなー!」


 ぷんすか怒ってるアナスタシアを放置して手分けして探索を始める。

 そのうちアナスタシアもドシドシと歩き出した。

 俺はそんなアナスタシアに近づく。


「アナスタシア」

「な、今更なんだ!? 私は怒ってるぞ!」


 そんなアナスタシアに顔を近づけ、耳元でこう囁いた。


「今夜はお前だから覚悟しておけ」

「~~~~ッ~~~~ッ!!


 声にならない声を上げて驚くアナスタシア。

 目を白黒させて俺の顔をじっと見ている。

 数秒の後、事態を把握したのか今度は顔が茹で上がったかのように真っ赤になった。

 口をパクパクとさせ、「あ」とか「う」とか何も言えない状態になっていた。


 その様子があまりに面白かったのでさらに俺のいたずら心に火が付いた。


「明日は休みの日だ……これがどういうことかわかるよな?」

「──────ッ!」


 アナスタシアは俺を全力で突き飛ばした。

 神力を使っていたのでかなりの衝撃だ。

 ある程度距離ができるとアナスタシアはフェニックスの翼を生やして飛び去った。

 逃げたのである。


「…………さすがにやり過ぎたか」


 だが俺は見ていた。

 飛び去る寸前のアナスタシアの顔がにやけていたのを。

 


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