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181、アナスタシアに……



 しばらく戦っていると三人娘が戻ってきた。


「ふう……ならば次は私が休憩しようかな」


 そう言ってアナスタシアは踵を返す。


「アナスタシア」

「わかっている」


 アナスタシアに襲い掛かってくる3匹のサメ。

 鞘から剣を引き抜くとゆらりと海水が歪む。

 それと同時に3匹のサメは上下に綺麗に断ち切れた。

 

「こんなものか?」

「ああ、さすがだな」


 後方から「おぉ~」という感嘆の声が聞こえる。

 三人娘が拍手をしていた。


「アナスタシアすごいわ!」

「あんな技みたことないよぉ」

「うぐぐ……すごいにゃ」


 若干一名は悔しそうに歯ぎしりをしているが概ね好感触だ。

 

「ありがとうベアル……この短期間で物凄くレベルアップしたきがする」

「いや、お前がこんな短期間でマスターできるとは思わなかった。正直俺も驚いているぞ」

「ふふ、ベアルにそう言われると嬉しいな」

「お前はすごい女だよ」


 神力は何にでもなる万能の力だが取り扱いがとても難しいものだということが教えていて分かった。

 俺の場合は神力という存在を知った瞬間に、どういうものか、どうやって扱うのかが頭の中に浮かんだのだが、アナスタシアの場合はそうではなかったようだ。

 まずはフェニックスモードに体を慣れさせるところから始めなければならなかった。

 神力を意識しながら力を振るうことにより本質を見極めるのだ。

 そしてアナスタシアはすぐに順応した。

 人間族特有の成長力……いや、もともと備わっていた勇者としての格が違ったのだ。

 剣を振るうたびに理解し、調整する。

 周りの魚モンスターを一掃するころには神力の扱いが格段に上達していた。


「うっ……」

「アナスタシア大丈夫か?」


 ふらつくアナスタシアの肩を支える。


「少し疲れた……」


 さすがになれない神力での戦いを続けたせいか、アナスタシアの疲労はピークを越えていたようだ。


「後は俺達に任せてお前はゆっくり休め」

「悔しいがそうするしかないようだ」

 

 アナスタシアの体は震えていた。

 その場から一歩も動けずに泳ぐ姿勢もぎこちない。


「お前まさか」

「……ちょっと……神力が……」


 アナスタシアの顔は赤くなっており息も荒い。

 これは魔力酔いと同じ症状である。

 一度に魔力を限界まで使いすぎると起こる容体だ。

 魔力酔いがあるのだから神力酔いというのもあるのだろう。

 ……仕方ない。


「よっ」

「──なっ!!」


 俺はアナスタシアをお姫様抱っこした。

 腕に柔らかくて温かい感触が伝わる。


「上まで運んでやる」

「──だ、大丈夫だ! 下ろ──」

「──いいから黙ってろ。ナルリース、シャロ、ジェラ、少しの間頼むぞ」


 俺は三人娘にそう言い残して島へと上陸した。

 すると荷物がまとめておいてある場所に麻の布が敷いてあった。三人娘もここで休憩をしていたのだろう。

 その場所にアナスタシアを寝かせてやった。


「今からお前を治してやる」

「そ、そんなことができるのか?」


 俺は治せる自信があった。

 神力を失ったというなら神力をアナスタシアに送り込めばいいだけだ。

 あとはその方法なのだが……。

 

「今からお前に神力を送り込む」

「えっ!! そ、それって……」


 アナスタシアは顔を真っ赤にして今にも湯気がでそうだ。

 ……こいつ、なにか勘違いをしているな。


 …………まあ面白いから勘違いさせたままにしておくか。


 俺のいたずら心に火がついた。


「覚悟はできてるんだろうな?」

「えっ……あ、そ、それは……うぅ、き、聞かないでくれ」


 そう言って真っ赤に染まった顔を手で覆い隠す。

 俺はその手を無理やりはがすと地面に抑えつけて、真っすぐに顔を見た。


「否定しないってことはオーケーってことだな?」

「……あ、うぅ……」


 アナスタシアは視線をそらしながらゆっくりと頷いた。


「や、やさしくしてくれ……」

「わかった……それじゃいくぞ」


 俺はアナスタシアの手を握る。

 そしてそのまま神力を流し込んだ。


「………………え?」


 みるみるうちにアナスタシアの神力が回復していく。


「よし、これくらいだろう」


 そして数秒もしないうちに満タンに達した。


「……え? 一体どういうこと……あれ」


 アナスタシアは混乱していた。


「ああ、神力を持つ者同士なら受け渡しが可能なんだよ」


 実はシャロ相手に実験は済ましていた。

 本質を知った時にそれができると分かっていても実際に試してみないと不安だったからだ。

 シャロ合意の元、実験して見た所、できるということが分かった。

 なのでアナスタシアには全力で戦ってもらったのだ。神力がなくなれば補充すればいいだけだからな。

 

「え、えっと……つ、つまりは……そういうことをしないってことなのか?」

「ん? そういうこととはなんだ?」


 ちょっと意地悪に聞いてみた。

 

「う~~~~ッ!」

「どうし──」

「──わわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 何でもない! 何でもないんだ!! 忘れろ忘れてくれえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


 暴れて俺の手から逃れるとダッシュして海へ飛び込んでしまった。

 

 ……ううむ、ちょっとからかいすぎたか?


 まあ、あとで謝っておくとしよう。


 そう心の中でふんわりと考えながら、三人娘が待っている海中へと戻っていった。


 


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