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177、超超究極魔法



 俺はずっと疑問に思っていたことがある。

 人は何故これほどまでに魔力を扱うのが下手なのかと。

 俺の師でもあり親でもあるオリアスは、「お前は特別な存在だ」と言った。

 その言葉の意味はすぐには分からなかった。


 俺のいた監獄島では強い奴しかいなかった。そうでないと生きられなかったからだ。

 だが島をでてすぐにオリアスの言った意味が分かった。

 周りの人々はビックリするほど弱かったからだ。

 子供ながらにして魔法を極め、監獄島でベヒモスを屈服させた俺にとっては魔族大陸も退屈なものだった。

 そんな中にも出会いはあった。

 それがサリサと他の仲間たちだ。

 仲間と出会ってから自分が特別な存在だとは思わなくなった。

 人それぞれ得意な分野があり、俺にとってのそれが魔法なんだと分かったからだ。


 仲間とダンジョンを攻略していく中で冒険者ランクもS級まで上がった。他の仲間も続々とS級に上がる中、俺は一足先に特別な魔獣を倒してSS級へと上がることが出来た。

 その時からだろうか、他の仲間との差ができ始めたのだ。

 最初は俺が運よく出会ったから倒せたのだと思っていた。他の仲間もSS級の魔獣に出会えば倒せるだろうと。

 だがそれは俺の思い込みにしか過ぎなかった。

 いや、そう思い込みたかっただけかもしれない。

 俺と仲間との間には明確な実力差ができ始めていたのだ。

 俺も居心地の良いこの場所を失いたくないからわざと実力を合わせたりもしてみた。

 

 それからは自身の実力を押さえて戦うことが癖になった。

 人とかけ離れすぎるのが怖くて人の領域で戦うことにしたのだ。

 魔法の創作をせずにただただ魔力操作を練習していた。

 それで十分だった。

 大概の敵はそれで事足りたからだ。


 しかし今、カオスという人類史上最大の敵が待ち構えている。

 皆か恐れているところ悪いが、はっきりいってワクワクしているのだ。

 今まで封印していた魔法の創作が楽しくて仕方ないのだ。


 そしてつい先日、俺に神力というのが宿っているという話を聞いた。

 さっそくダンジョンに入ってから試して見たらすぐに使えた。どうやら『神力』という存在を認識した瞬間に意図して操れるようになるようだ。

 実際使ってみると……なるほどこれはすごいものだと確信した。

 神力というものは魔力とは似ても似つかないもので、全てにとって万能の力であった。

 例えば神力で火炎球ファイアーボールを発動させることもできるし、法力のように単純な身体能力の強化をすることもできる。

 一番使いやすいと思ったのは、神力で発動する魔法は無限に合成ができるってことだ。

 例えば相性の悪い火と水の魔法も合成ができ新たな魔法を作り出すことができること。さらに言えば4つの属性をすべてごちゃまぜにすることだってできる。


 俺はおもちゃを与えられた子供のように創作に必死になった。

 そして今、究極を超えた超究極のさらに上の超超究極の魔法を生み出したのである。



 ■



 俺は巨大火炎犬を素手でボコボコに殴っていた。

 それでも巨大火炎犬は俺にに襲い掛かってくるがすべてを返り討ちにしていた。


「所詮は火炎犬か……魔力は高いがそれに相応しい攻撃手段がないから宝の持ち腐れだな」


 超再生能力はないようなので このまま殴っていてもいずれは倒せるだろう。

 だがそれには時間がかかる。


「──ダブルスーパーノヴァ!」


 宙に二つのスーパーノヴァを維持した状態で出現させる。

 

「ふんっ!」


 それを空中のまま結合させハイパーノヴァを作り出す。

 襲い掛かってくる巨大火炎犬を足で踏みつけ上空に飛ぶ。


「まだまだ!」


 もう一度同じ作業を繰り返してハイパーノヴァをもう一つ作り出した。


「これを──」


 ハイパーノヴァとハイパーノヴァを結合させ白く輝く丸い球体が完成した。


「これがウルトラノヴァだ」


 俺がそう名付けた。

 これも史上初の魔法である。

 ……だが。

 

「こんな凄まじい魔法があるのか!」

「お父さんすごい!」


 レヴィアとリーリアがそれぞれ感嘆の声を上げる。

 他の皆も同様に目を輝かせてこちらを見ていた。

 

「ベアル本当にすごいわ! あの時は制御するのも大変で誤爆しそうになっていたのにもうマスターしただなんて」


 あの時はサリサもすぐ近くにいたから本当に焦ったものだ。

 だが今は神力のおかげで汗一滴もかかずに維持できている。


「いや……これではつまらんだろ?」

「……え?」


 サリサが何を言ってるのと表情を曇らせる。

 ここにくるまでに試作品は完成してある。

 そして今なら完成品も完璧にできるだろう。


「はあぁぁ!!!!」


 俺は合成の過程をすっ飛ばしさらに三つのウルトラノヴァを発動させる。

 頭上では白く輝く4つの球体が綺麗に並んでいた。


「な、なななななによそれ!!!」


 サリサが驚きのあまり掴みかかってきた。

 胸倉を掴む力は過去一番で強烈だ。


「これはウルトラノヴァ4つだ。これを今から合成する」

「そ、それは分かってるわよ! っていうかそんなことしたら──」

「──おっと危ないぞ」


 会話も何のそので火炎犬が襲い掛かかってくるが、サリサを抱えながら火炎犬の顔面を殴るとまた後方に飛んでいった。


「あ、ありがと」

「どういたしまして」

「──ってそうじゃなくて!」


 ジタバタと暴れるサリサ。

 心なしか顔が赤いのでどうやら恥ずかしいようだ。

 仕方ないのでゆっくりと下ろしてやった。


「失敗なんかしたら暴発して全滅しちゃうわよ!!?」

「大丈夫だ。神力があるっていっただろ?」

「……名前からすごいってことは分かるけど……そこまでなの?」

「ああ、まあ安心して見てろ」


 俺の自信満々な態度に渋々引き下がるサリサ。

 他の皆はいつのまにか盾を構えたアナスタシアの後ろに隠れていた。


 やれやれ。

 信じていない訳じゃなさそうだが、そうとう怖がっているようだ。

 ……リーリアだけは瞳を輝かせているから違うみたいだけどな。


「さて……やるか」


 俺は上空の4つのウルトラノヴァを手中に収めていく。

 それをギュッと握り飯を作る様に合成していった。


(……思ったより大量の神力を使うな……)


 俺は枯渇を心配して魔力を神力へと変換する。

 

(大量にある魔力も有効活用できるなんて本当に便利な力だ)


 両手がくっつくほど4つのウルトラノヴァを凝縮させる。

 

「完成した」


 両手をゆっくりと放すと、そこには小さな黒い点があった。


「お父さんそれは!?」

「これは……そうだな」


 新たな魔法の完成である。

 ならば名前を付けなければいけないだろう。


「これは『ブラックノヴァ』とでも名付けようか」

「ブラックノヴァ!! すごい!!!」


 完成したのを待っていたかのように襲い掛かってくる火炎犬。

 俺はアナスタシアに向かって声をかけた。


「アナスタシア! フェニックスの力を解放して結界を張ってくれ!!」

「け、結界だと!? それは一体……」

「いそげ! フェニックスと融合したお前ならできるはずだ」


 早速アナスタシアはフェニックスの力を解放する。

 神秘な炎に包まれたアナスタシアは盾を構えると静かに目を閉じた。


「……なるほど、確かにそんな力がありそうだ」

「頼む!」

「──よしいくぞ! ゴッドガード!!」


 アナスタシアの盾が黄金に輝き、フワフワとした薄いベール状ものが現れた。

 そのベールはアナスタシアを中心にして皆を囲っていく。


「できた! できたぞ!」

「あ、ああ!」


 俺は違う意味で驚いていた。

 それは神力ガードがベール状の形状をしていたことだ。

 これはかつてケツァルが土壇場で使っていたものとよく似ていた。


「ベアル? どうかしたのか!?」

「いや! なんでもない!」


 今はブラックノヴァに全神経を集中させよう。


「ではいくぞ────ブラックノヴァ!!」


 巨大火炎犬に向かってブラックノヴァを発動させた。



 ゴオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォッォォ!



 激しい振動と共に大地が唸り声を上げる。

 ブラックノヴァは見た目の小ささとは裏腹に物凄いエネルギーを放出させすべてを引き付けていた。

 マグマや地面が物凄い勢いで吸い込まれていく。


「いやあああぁぁぁぁぁぁぁっぁ!!!」


 誰かが悲鳴を上げた。

 アナスタシアのゴッドガードは既に剥がれかけている。


「ベアル! もうもたんっ!! なんとかしてくれっ!!!」


 そこには泣きそうなアナスタシアがいた。


「よく頑張った!」


 俺はすぐにゴッドガードの中に入り込むと、代わりの神力ガードを張り巡らせた。


「助かった……」


 力尽きたアナスタシアがぱたりと倒れる。

 

「火炎犬を見て見るんだ」


 火炎犬は動かなかった。いや、動けなかったのだ。

 目の前で発動したブラックノヴァから逃れることが出来ずに時間が止まったように微動だにしていない。

 そしてブラックノヴァの中心に向かって体がねじれ、ボロボロと皮膚がはがれ、体の中身があらわとなり、肉、内臓、骨とすべてのものが飲み込まれていった。


「うわ~ぐろいぃぃ」 

「なんて恐ろしい魔法なんでしょう」

「あんな最後は迎えたくないにゃ」


 三人娘が俺の後ろに隠れながらそんなことを呟いていた。

 やがてブラックノヴァはダンジョン内のすべてを飲み込み消滅した。


「ふう、こんなものか」


 結構な神力を消費したがかなり強力な魔法のようだ。

 これにあらがえるものなどそうはいないだろう。


「お父さん! すごいすごい! こんな魔法使えるのなんてお父さんしかいないよ!」


 リーリアは相変わらず瞳をキラキラさせて喜んでいる。

 だが隣にいたセレアは神妙な表情をしていた。


「どうしたセレア?」


 俺がそう言うとセレアは何とも言えないような微妙な表情をしてこう言った。


「お父様……大変申し訳ないのですが、絶対に地上では使わないでくださいね? もし使ったら地上がすべてなくなってしまいます」

「……それはまさか?」

「はい、私の星が跡形もなくなくなってしまうということです」


 皆は開いた口が塞がらなかった。

 あれほど喜んでいたリーリアでさえ、「え? マジ?」って顔をしている。

 正直俺も、地上で使ったらヤバいだろうなとは思っていたが星自体が消えてなくなるとは思いもしなかった。

 ということは……


「カオスとの戦いでは使えません」


 セレアはきっぱりとそう言った。

 どうやら最強の魔法を創りだしたと思ったら、即封印しなくてはいけないようだ。

 


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