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168、7階層の罠



 午後、リーリアと手をつなぎながらエルガントの街の露店通りを歩いていた。

 リーリアとは定期的にこういった親子デートを欠かさずに行っているのだが、会話は近況報告をすることが多くなる。すると自然とシャロの話題へと移っていった。 

 

「ところでシャロはどうだった? 可愛かった?」

「ああ、可愛かったぞ」


 俺がそう言うとリーリアは優しく笑った。


「そっか……シャロはね、ずっと悩んでいたんだ。でも本当に魔素が増えないってことが分かって、目の前が真っ暗になっちゃったんだって」

「そんな感じだったな」

「うん、でね? 以前からシャロがお父さんの事大好きだったのは分かってたじゃん? ナルリースも結構それを気にしていたんだけど──」

「──ちょっと待て、シャロは俺の事をそういう意味で好きだったのか?」

「……お父さん」


 リーリアは深くため息をつく。


「いや……シャロは俺の事を兄のような存在で好いてくれているのだと思っていたんだが…………」

「あんなにスキスキオーラが出てるのにそれだけなわけがないよ?」

「な、なんだそのオーラは……」


 リーリアはたまに変なことを言うが、それは大体シャロから教わったものなのだ。

 そう考えるとリーリアにとってシャロの影響力がどれほど大きいのかを改めて再確認させられる。


「とにかく! あまりの落ち込み様にナルリースも黙っていられなかったんだよね。私のところに二人そろって来たんだから」

「なるほどな……ナルリースならそうしそうだな」


 昨日のシャロの絶望具合から察するにナルリースも気が気で仕方なかったのだ。

 それに加えて俺にはナルリースも含めて嫁が3人もいた。

 嫁がナルリースだけだったのなら躊躇もするだろうが、3人もいるという事実が決定打につながったのだろう。


「ねえ、お父さん」


 タッタッタと少し前を小走りしながら振り返って言うリーリア。


「ん、どうした?」

「みんなでずっと一緒にいようね」

「ああ、もちろんだ。そのためにもカオスを倒さないといけないな」

「うん!」


 そう言って少しはにかんだリーリアはとても可愛かった。

 




 翌日、またダンジョン攻略へと戻る俺達だったが、シャロに大きな変化があった。

 なんと、魔素が大きくなったようで魔力が増えると大はしゃぎだ。

 それを聞いたジェラは目を光らせる。


「やっぱりセレアの言ってたことは本当だったにゃ!」

「うんうん、やっぱりセレアは正しかったよ~」

「なるほどにゃ……ダ、ダンナ! あとであたしにも分けてほしいのにゃ!」

「ダメだよぉ。ベーさんは僕の旦那さんなんだからね~」

「むむむ、前まであたしと同じ立場だったのに生意気になったにゃ!」

「へへへ~」


 俺を中心にしてグルグルと回りながら喧嘩をし始める二人。

 そんな二人の俺は頭をポンと小突いた。


「攻略を再開するぞ」

「はーい、わかったにゃ」

「えへへ、了解だよ~」


 シャロはスキップをしながら先に進んでいる。

 既に4階層まで来ているがシャロのやる気が凄く、率先してモンスターを倒しては上昇する魔力に感動しているようだった。

 そんな時、先頭を歩いていたシャロはハッとした表情となり振り返ってこういった。


「ベーさんの体液を魔素が大きくなる薬として売れば一儲けできるんじゃ……」


 皆の呆れた視線がシャロに注がれる。

 視線に気づいたシャロも、「あはは~ちょっと言ってみただけだよ~」とごまかし笑いをした。

 俺はそんなシャロに近づくと頭を掴んだ。


「なるほど、つまりシャロには今後一切無しという方向でいいということだな?」

「ひえーんごめんなさい~嘘です嘘だからお願いします~」


 泣きながら縋り付いてくるシャロ。

 俺はそんなシャロの様子に満足する。


「……本当に仲がよくなりましたね」


 俺たちのそんな様子を見ていたナルリースが頬を膨らませながらそう言った。

 

「いや、元からこんな感じじゃなかったか?」

「いえ、前は面白がってたSって感じだったのですが、今日はSの中に愛を感じました!」

「そうか? 俺としては同じなんだけどな……まあそんなことよりナルリース」


 俺はナルリースを手招する。

 素直なナルリースは近寄ってきた。

 そんなナルリースの耳元で俺は囁く、「一番可愛いと思ってるのはお前だけだよ」と。

 すると耳を真っ赤にして、「そんな……ありがとうございます」と恥ずかしそうに俯いてしまった。


「おい、さっきからおぬしたちは何をしておるのだ!!? さっさといくぞ!」


 苛立っていたレヴィアに怒られた。

 俺たちは素直に「はい」と反省すると先を急ぐのだった。





 5階層、6階層とモンスターは復活していたのだが、俺がハイパーノヴァで一掃した。

 7階層までに皆の魔力を残しておきたかったのもあるが時間も短縮したかったのだ。

 ちなみに一昨日吹き飛ばした6階層にマグマが復活していたので、ダンジョンから出れば元通りになる仕組みのようだ。

 そもそも吹き飛ばしたところで気にもしないのだから意味はないのだが。


「さて、では7階層に行くぞ」


 俺の一声に皆が頷く。

 ゆっくりと歩を進め階層魔法陣の上に立つ。

 するとなんだか分からないが違和感があった。


 なんだ? 何かが違う?


 違和感の正体に気がつかないまま3秒が経ち、俺は7階層へと転移する。

 そこは真っ暗で何も見えない場所だった。

 火炎球ファイアーボールを発動して、辺りに光を照らす。

 どうやらここは暗い洞窟のような場所の細い通路のようなところだった。

 こんなことは初めてだった。

 いつもは部屋か広間みたいな場所に移動させられるからである。


 しかし、いつまでたっても皆が転送してこない。

 俺は嫌な予感がした。

 慌てて指輪に魔力を送り、皆の位置を確認する。

 すると嫌な予感は的中したようで、皆は別々の場所に転送されていたことがわかった。

 一番遠い者でもかなりの距離がある。


 くそっ! しまった!


 どうやら6階層の転移魔法陣に罠が仕掛けられていたようだ。

 階層魔法陣に違和感を感じたのはこれだった。

 どういう仕組みかは分からないがランダム転移させられるようだ。


 さらに俺を焦らせるのは指輪を持たないものがいるということだ。

 しかも指輪を持っていないものはセレアとシャロとジェラとアナスタシア。

 アナスタシアに関しては心配していないし、セレアはモンスターの意識をそぐ能力を持っているため大丈夫だろう。となればシャロとジェラが不安である。一人で戦うには少々荷が重いので早々に探し出さなければならなかった。


 既に指輪の4つの気配は動き出していたのだが動きに戸惑いがあった。

 皆もどうすればいいのか分からないようで混乱しているのだ。

 俺は何か指標が必要だと思った。それであることを思いついた。


 範囲は最大限に縮小。

 だが、7階層全体に響き渡るように全力で。

 みんな! 気付いてくれよ!


「──ハイパーノヴァ!」


 強烈な音と衝撃波がダンジョン内に響き渡る。

 地鳴りのように揺れ、通路を熱風が駆け巡る。

 するとすぐに指輪の持ち主に反応が現れた。

 こちらへと素早い移動で向かってきていた。


 ──数分後、一番最初に表れたのはリーリアだった。


「お父さん!」

「リーリア!」


 飛び込んできたリーリアを抱きしめて迎える。

 体を離したあと、怪我はないか聞いてみたが何事もないようで安心した。


「ここに来る途中、石の人形みたいなモンスターにも会ったんだけど、中々頑丈なモンスターだった」

「ゴーレムか!」


 ゴーレムは動きは鈍足だが耐久力があって、生半可な攻撃などものともしない。一撃の火力がないと苦戦するモンスターだった。

 ジェラならばなんとかなるかもしれないが、シャロはとても苦戦するだろう。


「リーリア頼みがある!」

「うん、お父さんが探しに行くんでしょ?」

「ああ! だから集まり次第お前たちも順次探しに行って欲しい」

「わかった!」


 俺とリーリアは考え方が似ていた。いや、俺が育てたのだからそうなるのは当然だ。

 どちらが探しに行くのが最善かと言われれば、移動が速く殲滅能力の高い俺だろう。

 俺のハイパーノヴァで近いやつらはどんどん向かってきているため、誰かはいなくてはならないから、その役目をリーリアが果たしてくれようとしているのだ。

 互いに頷きあうと俺は全速力で駆けだした。



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