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167、朝の修羅場



 朝がやってきた。

 隣には先ほど眠ったばかりのシャロがいた。

 さて……皆に言わなければならない。

 そう思っているのだが、なかなかベッドの上から動けずにいた。

 その為、朝の時間に少し遅れて行ってしまった。

 シャロ以外の面々が一緒に朝食を取るためテーブルを囲んで座っていた。


「あれ? シャロはまた寝坊ですか?」


 ナルリースが呆れたようにそう言った。

 リーリアとジェラは何やらニヤニヤしている。

 シャロとジェラは同室のため、昨日はリーリアがジェラと同室になった。その為理由は分かっているのだろう。

 分かっていないのは他の者たちだけだ。


「ジェラは同室なのだろう? 起こさなかったのか? まったく我はもうお腹ペコペコだぞ!」


 食い意地の張っているレヴィアは眼前の料理を前にして待ちきれないようだった。

 

「ちょっと理由があってにゃあ……」


 ニヤニヤしながら俺の方を見るジェラ。

 その視線に気づいた皆が俺に注目する。


「何かあったのかしら? もしかして病気とか!!?」


 サリサが不安そうに体を乗り出して聞いてくる。

 ああ!

 どんどん悪い方向に考えられてしまう!

 もう覚悟を決めなければ!!


「実は皆に報告しないといけないことがある」


 俺の発言で皆に緊張が走る。

 ある者は不安そうに。

 とある者は怪訝そうな顔を。

 さらにとある者はそんなことはいいから飯といった顔を。

 三者三様の考え、表情がそこにある。


 俺は勇気を振り絞って言葉を発した。


「シャロを嫁にすることにした」


 シーン。

 場が一気に凍り付いた。

 誰かが絶対零度アブソリュートゼロを発動したんじゃないかと思った。

 それくらい凍っていた。

 全員が真顔だった。

 これが恐怖ということか。

 俺は全身が震えていた。


 いつまでそうしていただろうか。

 時が止まったようで誰もが無言だった。

 俺はその無言に耐えきれなくなってさらに発言する。


「もちろん遊びという訳ではない。シャロとはずっと一緒にいたいと思っているし、皆と同じように愛している。俺としてもかけがえのない存在なんだ」


 真剣な表情でそう言った。

 嘘は言っていないし心からそう思っている。

 ただシャロの悩みまでは言わなかったし言うべきではないと思った。

 するとずっと真顔だったナルリースが顔をほころばせた。


「ふふふ、ごめんなさい。もう耐えられません」

「む、どういうことだ?」


 俺が訳が分からずきょとんとしていると、レヴィアがため息をついた。


「まったくナルリースは甘いの~、もっとベアルを懲らしめてもいいのだぞ?」

「ふふふ、ごめんなさい」


 どうやら皆は知っていたようである。

 一斉に皆の顔がゆるんでいた。


「ベアルさんすみません。でもシャロが私に言わないと思いましたか?」

「ああ……確かに……シャロだったら言うよな」


 それはそうだ。

 シャロとナルリースは親友である。

 ならば相談しないはずはない。

 当然の事なのにすっぽりと頭から抜け落ちていた。

 それほど俺も余裕がなかったのだ。


「ふん、まあ我にとってもシャロはかわいい存在だしそこは許そう」


 レヴィアもやれやれと肩をすくめながら言っているが優しい顔をしていた。

 

「私はこの中では新参者だし別に異論はないわ。ベアルが女の子大好きなのは昔から知っているもの。むしろ今まで手を出していなかったっていうほうが驚きだったわ」


 サリサはすました顔でそう言いながらお茶を飲んでいた。


「お父さん、よかったね」

「リーリア……いいんだよな?」

「うん、私たちはずっと前から家族だもん」

「ああ」


 皆でほっこりした気分になっていた。

 だがリーリアの次の一言で再び緊張が走った。


「でも誰が最初にお父さんの子供を授かるんだろうね? 妹か弟、どっちでもすごく楽しみ!」


 ナルリース、レヴィア、サリサの表情が固まる。

 そこで空気を読まないアナスタシアがトドメをさした。


「まだできないのか? 案外シャロが一番だったりしてな! ふはは」


 パリン。

 サリサのコップが割れる。

 

「ごめんレヴィア。今日出かけるのは中止にしてもらえるかしら? そしてベアル……今日ヒマよね?」


 体を乗り出し俺に迫ろうとするサリサ。

 それをレヴィアが止める。


「おいサリサ! 勝手に約束を反故にするな! あと抜け駆けもするな! ベアル、我と一緒に今日を過ごさないか?」


 サリサを押しのけるようにして俺に迫ってくるレヴィア。

 

「ちょっと待ってください二人とも! ダメです昼間からなんて! それに今日の夜は私の番なんですからね! その……昼間に疲れてしまっては困ります! ベアルさんには英気を養ってもらわないと」


 ナルリースの発言に俺も賛同する。


「そうだぞ……さすがの俺でも一日中など無理だ。飯を食ったら昼まで寝させてもらおう。そして午後からは予定があるんだ」

「予定ですか?」

「ああ、リーリアと出かける」

「なるほど」


 この発言に皆は文句を言わない。

 リーリアならば仕方がないといって諦めるのだ。


「ではそろそろ食うか?」


 そこからはいつもの日常と同じく、楽しく朝食を平らげるのだった。



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