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165、新魔法



「リーリアとレヴィアは少し時間を稼いでくれないか?」

「わかった!」

「む、そこまで言われては仕方ないの!」


 この魔法は少し時間がかかるのが難点だ。


「ちょっとベアル! あれを使う気!?」


 俺の肩を掴み焦ったような表情を浮かべるサリサ。


「ああ、こいつなら実験台として丁度いいだろ?」

「そうだけど……下手したら全滅するわよ!?」

「俺が失敗すると思うか?」


 そう言うとサリサは黙ってしまった。その代わり、俺の肩を掴んだ手にギュッと力が入った。


「……信じてるわ」

「ああ、任せておけ」


 俺に注目が集まっているのは背中で感じていた。

 だが不穏な視線を向けてくるものは一人としていなかった。

 それだけ俺は信頼されているのだろう。

 

(よし、いっちょやるか!)


 自身に活を入れ集中する。


「いくぞ! スーパーノヴァ──からのスーパーノヴァ!」


 両手にスーパーノヴァを縮小したものを発動させる。俺はその二つを練り込むように融合させた。

 すると青白く輝く球体が完成した。


「ベ、ベアルさんそれはいったい!?」

「そんなもの見たことないにゃ!」

「ベーさんやば~!」


 俺の手の上で輝くそれを三人娘は興奮した様子で覗き込んできた。


「これはスーパーノヴァとスーパーノヴァを融合した……名付けてハイパーノヴァというやつだ」

「「「ハイパーノヴァ!!?」」」


 三人娘の声がハモる。


「ああ、スーパーノヴァではSランクを遥かに凌ぐ者には足止めにもならない……だからこのハイパーノヴァを創り出したのだ」

「物凄い力を感じます! これならば倒せそうですね」


 ナルリースが肩越しにくっつきながら歓喜している。

  

「おい、出来たのなら時間稼ぎはもういいのか?」


 先ほどから一生懸命攻撃を繰り出し足止めをしてくれていたレヴィアがちらちらをこちらを見ながらそう言った。

 

「ああ、待たせたな! リーリア、レヴィア下がってくれ!」


 俺の一声で二人は示し合わせたかのように息ピッタリな動作で同時に下がった。


「ではいくぞ──ハイパーノヴァ!!」


 巨大岩石ナマズの体に当たる直前、ハイパーノヴァはさらに輝きを増したその瞬間、激しい閃光と共にダンジョン全体を揺るがすような強烈な衝撃が体を襲う。

 6階層を舐めるように激しい衝撃波が広がり、強大な魔力が充満する。

 俺は魔力操作により自身とその周りの影響を最大限までに抑えることに集中する。

 服を引きちぎるような暴風と熱風が襲い、さらに魔力ガードを強化する。

 周りの岩盤は粉々に吹き飛び、マグマは塵と化し、すべてが灰となる。

 むろん巨大岩石ナマズも例外ではない。

 皮膚である岩石は剥がれ、肉が焼かれ炭となる。超再生も虚しく体のすべてが砂のようにボロボロになって消滅した。

 衝撃波と暴風が収まると、そこには何もない真っ白い空間だけがあった。


「…………お、恐ろしい威力ですね」


 無音となった6階層に遠慮がちなナルリースの声が響いた。

 

「あっけなかったな。正直生き延びると思っていたんだが……がっかりだ」

「あれを受けて生きていられる者の方が少ないと思いますけど」

「いや、あれほどの魔力を持っていたのなら、かろうじて生き延びることもできたはずだ。魔力ガードが追いつかなかったのだな。まだまだ試してみたいこともあったのだが……」

「試して見たいって……あれが新魔法ではなかったんですか?」

「もっとすごい魔法があるのよ」


 俺とナルリースの会話にサリサが入ってきた。


「もっとすごい魔法ですか?」

「ええ、あれは私も死んだかと思ったわ」


 ナルリースが俺の顔を見て、「どういうことですか?」とジト目になりながら問い詰めるような表情をしてきた。


「ハイパーノヴァは肩慣らしのようなものだったんだ。もっとすごいものを見せてやろうと思ったが……また次回だな」

「あれ以上威力があるっていうんですか!? ……そんな次回が無いことを祈ります」

「ふっ、そうだな。そんな強敵がぽんぽん出て来られても困るか」

「はい、今のでさえ私にはお手上げなのですから」

「お前なら今のを倒せるくらい強くなれるから自信を持て」


 俺はナルリースの肩を抱いて髪にキスをする。


「は、はい……ありがとうございます」


 耳まで真っ赤になったナルリースは下を向いて固まってしまった。


「ちょっと……目の前でいちゃいちゃしないでくれる?」

「そうだぞベアル! おぬしの悪い癖だぞ!」


 他の嫁からひんしゅくを買ってしまった。


「……まあ、帰還魔法陣を探して今日は帰るか」

「「無視するなー!」」


 


 6階層は凹凸も何もないただの四角いだだっ広い部屋だった。

 どうやら岩盤やマグマなどといったものはダンジョンの一部ではないようだ。

 その為、俺のハイパーノヴァで綺麗さっぱり消し飛んでしまったのだ。

 歩きやすくなった代わりに帰還魔法陣を探すのが大変だった。

 皆に配った指輪の効果を利用して、手分けして探したおかげでなんとか見つけられたのだ。


「では今日は帰って休むことにしよう。魔力を使い果たしているから明日は休日とする。ゆっくり休んで魔力を回復し、英気を養うといい」


 俺のこの一言で皆が歓喜する。

 皆で明日は何しようかと今から話し込んでいる。


「話は後だ。とりあえず帰還するぞ!」


 こうして激闘の一日は幕を閉じる……はずだった。

 事件が起こったのは宿に戻り就寝する時に起こった。



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