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162、ウンディーネ



 空中に巨大な魔法陣が浮かび上がる。

 魔法陣がゆっくりと下に移動すると、透明だった者が可視化できるようになったかの如く姿を現した。

 そこに現れたのは美少女の娘のような姿をした存在だった。ただ下半身が魚の尾びれのようになっているため、この子がウンディーネなのだとわかる。


「すごい! かわいい!」


 リーリアがはしゃいで喜んでいる。

 他の皆は驚きすぎて何も言えないでいた。


「どうやら皆にも見えたみたいだな。どうだウンディーネ、皆に挨拶はできるか?」


 レヴィアがそう言うとウンディーネと呼ばれた者がコクリと頷いた。


「みんなっ! 私はウンディーネ! よろしくね! あっ、もしよかったらディーネって呼んでね! ウンちゃんはダメだよっ!」


 妙に軽い挨拶に皆はずっこけそうになる。

 精霊に対するイメージが根本から崩れ去りそうだった。


「ディーネちゃん! かわいい!」

「うふふありがと! リーリアちゃんもかわいいよ!」


 気が合ったのかリーリアとディーネが手を取り合ってニコニコしている。

 喋り方から察するにウンディーネは子供のような存在なのだろうか?

 もしそうだとしたらリーリアの遊び友達としてもいいのかもしれない。リーリアには同世代の友達がいないのでそういう存在は貴重なのだ。

 俺もウンディーネと会話がしてみたくなり声をかけることにした。


「なあ、ちょっといいか?」

「うん! なに? ────ってあなたはあああぁぁぁ!! あわあわあわあわあわあわ…………」


 何故か俺を見て右往左往して慌てふためくウンディーネ。

 心なしか怯えているようにも思えた。


「え……?」


 さすがの俺もその反応にはちょっと傷ついた。

 その様子を見たレヴィアが薄笑いをして言った。


「おぬしは純真な子にはちょっと刺激が強すぎるのではないか? 精霊はそういうことに敏感なのかもしれないぞ」

「刺激が強いってどういうことだよ!」

「ふん! 毎日入れ替わりで女と寝ていることだ!」

「それは……そうなんだが」


 悔しいが事実なので反論できん。

 しかしレヴィアのやつは嫉妬しているのか?

 そうだとしたら可愛い奴である。

 俺がレヴィアと言い争いをしていたら、あわあわしながらウンディーネが割り込んできた。


「ち、違うの! 誤解させてごめんなさい! そのちょっと緊張しちゃってただけなの!」

「緊張? 俺に?」

「は、はいぃぃ~…………」


 どうも委縮してしまっているようで小さな声でもごもごと何かを言っているようだが聞き取れなかった。

 仕方がないので会話を諦める代わりにウンディーネの頭を軽く撫でてやった。


「あっ……」


 嫌がるかと思ったがそこは素直に撫でられていた。

 と思ったら急にウンディーネの姿がふっと消えてしまった。


「おい……そういうところだと言っておるだろう」


 レヴィアがそう言いながら口を膨らませていた。

 どうやらウインディーネへの魔力供給を遮断し、元の世界に戻したようである。


「おい、急に戻すことはないだろう?」

「おぬしが誰彼構わずデレデレするからだ」

「別にデレデレなんてしてないだろ? それに相手は子供みたいなものだ」

「でも女なのだ! リーリアや妻たちにするのはいいが、そろそろ他の女にするのは自粛するのだ!」


 レヴィアがそういうと妻たちが頷く。

 アナスタシアやシャロは微妙な顔をしていた。


「まあ、不快な思いをさせているのなら頑張って自粛するとしよう……だがこれは手癖みたいなものだからな。他意はないんだ」


 俺が一応反省の態度をとるとレヴィアは納得したのかもう一度ウンディーネを召喚した。

 するとなぜか微妙な顔をしたウンディーネが目の前に現れた。


「なんかごめんなさい私のせいで……」


 現れた瞬間にそう謝りだした。


「いや、気にするな……それよりちょっと話は変わるんだが聞きたいことがある」

「えっなになに!? 私になんでも聞いてね! でもスリーサイズは教えないよっ!」

「いや、それはどうでもいいんだが」

「どうでもいいんかーい! ちょっとは気になってよ!?」


 俺は話題を変えたかったのでそう切り出した。ウンディーネもこの微妙な空気をかえるために無理にテンションを上げている。

 まあ、そのおかげもあって緊張は解けたようだ。


「で……ディーネは戦闘では何ができるんだ?」

「へ?」


 ここはダンジョンである。

 となればもちろん気になるのは戦闘能力だ。

 役に立たなければ召喚するだけ魔力の無駄となってしまう。


 レヴィアもディーネを見つめる視線が鋭いため同じことを思っているはずだ。口には出さないがプレッシャーは伝わっているだろう。

 ディーネは汗をだらだらと流しながら目が泳いでいた。


「えっと……その……水魔法ならできるけど……」

「なるほど。確かに水の精霊だからできるよな」

「え、あ……うん! そうなの! 水の魔法が得意なんだぁ~へへへ」

「ちょっと全力で使ってみてくれるか?」

「えっ……あ、うん! いいよ!」


 ディーネはフワフワと浮かび上がり遠くの大地を指さした……すると。

 

 バシャアアァァァァン!


 巨大な水柱が天を衝く勢いで立った。


「「「おぉぉぉ~!」」」


 一同の拍手が鳴り響く。

 これはなかなかの威力である。


「それが全力か?」

「うん! どう? すごいでしょ?」

「何度でも放てるのか?」

「もちろん! 私たち精霊は自身の力で魔法を発動できるの。あなた達が拳を振るのと同じ感覚で魔法を使えるよ! すごい!!?」

「そうだな……レヴィア、お前はウンディーネを召喚しながら戦うことはできるのか?」


 俺の問いにレヴィアは頷いた。


「基本的に魔力を供給し続けているだけだから問題ない。だが思ったよりも魔力の消費は激しいかもしれん」

「なるほどな」

「どうどう? す・ご・いでしょ!? 役に立つでしょ!!?」


 ウキウキしているディーネを見ていると心苦しいが、これではとても役に立つとは言えない。

 これくらいの攻撃であればレヴィアなら容易にできる。唯一利点があるとすれば精霊ならば永遠に魔法を使えるということだが、召喚している間レヴィアの魔力は減り続ける。正直使いどころとしてはかなり微妙であった。

先ほどからすごいと言われるのを待っているディーネに俺は残酷な言葉を吐かなければならなかった。


「いや、申し訳ないがそれだけでは役に立たん」

「がーん」


 口に出してまで言うほどにショックを受けているようだ。

 ディーネは固まってしまって動かなくなった。


「お父さんもっと優しくしてあげて! 違う能力があるかもって思ってるんでしょ?」


 リーリアに怒られた。しかも見透かされている。さすが我が娘。


「すまんすまん。リーリアの言う通り攻撃だけでは微妙だと思ったんだ。でも精霊というくらいだから能力はそれだけではないんだろ?」

「──ッ!」


 ハッと我に返るディーネ。


「ええ! ええもちろん!! 私たち精霊は武器や防具に一時的なエンチャントをすることができるの!!」

「おお! それだ! そういうのを待ってたぞ!」

「えへへへ! どう? すごい?」

「ああ、すごいぞ!」


 エンチャントといっても様々な種類がある。

 一つが属性付与でこれはジェラの技『火炎大伐採』などがそれにあたる。これはジェラの持ち前のセンスで火魔法を斧技と合成させて放っている必殺技だ。つまり水属性を斧に付与してもらえれば『水流大伐採』なんて技ができるかもしれないのだ。


 もう一つが能力付与でアクセサリーにかかっているエンチャントなどがあげられる。水魔法強化だったり水魔法耐性だったりとかその他にもなにかしらの能力がつけられるかもしれないのだ。


 エンチャントは魔力操作による能力上昇とは別物であり、純粋な強化となるためとても貴重だ。

 俺の中でディーネの価値がぐーんと上がった。


「よし、今日から俺たちの仲間だ! よろしくなディーネ」

「わーいよろしく!!」


 そういうわけで精霊ディーネが仲間になったのだった。


「いや……召喚するのは我なんだが!!?」


 どこか悔しそうなレヴィアであった。





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