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155、風魔法強化の効果



「そういえば風魔法強化の腕輪を試してみないか?」


 腕輪はナルリースが身につけていた。

 美しいエメラルドグリーンの宝石であったため、金髪のナルリースによく似合っていた。


「分かりました。次の戦闘では初手から風魔法を使ってみますね」

「ああ、よろしく頼む」


 早速部屋を移動すると、次の部屋もモンスターがでそうな雰囲気がした。


「いくぞ?」


 扉に触れると思った通りモンスターが現れた。 

 今度も虫モンスターでハエとトンボが二体ずつだった。

 

「全力でいきます!」


 ナルリースは上級風魔法のサイクロンを放った。

 巨大な竜巻がモンスターを飲み込み、ハエとトンボはあがくこともできずに瞬時にバラバラとなってしまった。


「おぉ、やるな!」

「す、すごい!」


 魔法を放ったナルリース本人が一番驚いていた。


「そ、想定していた威力と違います」

「確かにナルリースの実力では足止め程度ならできそうだが倒すことはできなかったはずだな」

「はい、これも腕輪の力なのですね」


 魔法は支払う魔力量によって威力が変わる。

 今回ナルリースは全力でサイクロンを放った。

 本来なら全力とはいえ、Sランクに近いモンスターを4体同時に倒すなんて無理だったのだが腕輪の効果である風魔法強化+500で倒せるまでに至ったのだった。

 現状、3人娘はこのダンジョンでは弱い分類になってしまう。

 強くなるにはモンスターを倒しまくるしかないのだが、今までは3人で一体を倒してきたのだが限界魔力量を増やすには効率が悪い。それが一人で倒せるようになったというのは非常に素晴らしいことだった。


「でももう魔力がなくなってしまいました……」


 肩で息をしているナルリース。

 最低限の魔力は残しているが戦闘できる状態ではない。


「いや、十分な成果だろう。今はゆっくり休んでおくんだ……さて、次はシャロの番だな」

「お、待ってました~」


 ナルリースから腕輪を渡してもらい身につける。

 次の部屋まで行き扉に触れるとやはり虫のモンスターが4体現れた。開幕シャロがサイクロンを放ち4匹まとめて倒して見せた。


「はあ……はあ……はあ……た、たおせたぁ~」


 シャロももう魔力が無いと倒れ込む。

 だがこれもまた十分な成果であった。


「あとはジェラだけなんだが……」

「あたしは風魔法が使えないにゃ……」


 一応念のため腕輪を装備してみたが風魔法は使えなかった。

 適性がない者には効果がないようだ。


「……ジェラは地道に頑張ろうか」

「くぅ~接近戦こそあたしの生きる道にゃ!」


 


 

 4階層は虫のモンスターがメインで出現した。

 蜘蛛や蛾にバッタやトンボなど、あらゆる種類が部屋を移動するたびに現れた。

 どうやら4階層は質より量ということらしい。

 モンスターが現れない部屋という方が珍しく、マッピングのために隅から順に虱潰しで部屋の移動を行っているので仲間たちは既にへとへとになっていた。

 元気なのは俺とレヴィアくらいだろうか。

 リーリアも最初は張り切っていたが、今は魔力がなくなりかけていた。

 アナスタシアのフェニックスの力も強大だが長期戦には向かない。すでに法力もなくなり座り込んでいる。

 

「今日中には4階層のマッピングを終わらせたいんだがな」

「ふふ……あとは我とおぬしでモンスターを討伐したらよかろう?」

「それもそうだな……しかしレヴィアの魔力は底なしだな」

「瞬発力ではリーリアに負けるかもしれないが持久戦は自信があるぞ」


 さすがは数多の魔獣、オルトロスとケツァルを喰らってきただけはある。

 それに人の数倍は食事をとるので、魔力量だけなら俺の次に多い。


「じゃああとは俺達で殲滅していくか」

「うむ! 一緒に戦うのだ!」


 そう言って本当に嬉しそうに笑うレヴィア。

 そんな反応を見せられては俺としてもやぶさかでない。

 

「ではいくぞ!」

「おー!」



 ─



 4階層の攻略はレヴィアのおかげもあって本日中に終えることができた。

 さすがのレヴィアも肩で息をしている。

 連戦に次ぐ連戦であれから数百匹を相手にしたのだからレヴィアは本当に頑張った。

 ……まあ、俺はその二倍は倒したんだけどな。

 そのことについてレヴィアも、「またベアルに負けたのだ! 雑魚狩りなら勝てるかもと思ってたのに!」と悔しそうにしていた。


「いや、お前は十分にすごい奴だぞ? こんなに長時間俺についてこれるなんて大したものだ」


 俺はそう言ってレヴィアの頭を撫でる。

 するとレヴィアは顔を赤らめ視線をそらしながら、「そ、そう思うならあとでご褒美がほしいのだ」とつぶやいた。

 それがあまりにも可愛かったので俺はレヴィアの耳元でこう言った。「今日はお前だけを抱くことにした。たっぷり可愛がってやる」と。

 するとレヴィアはさらに沸騰したように真っ赤になり、「ふしゅー」と何やらよく分からない言葉を発したかと思うと倒れてしまった。

 俺は慌てて抱きとめる。


「お父さん……またやっちゃったね」


 リーリアにジト目で睨まれた。

 どうやら今の発言を聞かれていたらしい。

 

「まあ、レヴィアは喜んでくれたからいいじゃないか」

「やりすぎってこと! ……でもまあ幸せそうな寝顔だね」


 気を失ったレヴィアの表情はにやけていた。


「でも他人にはやらないようにね!」

「ああ、さすがにそれは自重するさ」

「……絶対だよ?」

「俺は信用ないのな」

「日頃の行いだね」


 まだ疑っているリーリア頭をくしゃくしゃと撫でると、「髪がくしゃくしゃになるー」って文句を言っていたが顔は笑っていた。



 ─



 俺はベッドの上で明日からの方針を考えていた。

 何故かというと今日の戦いで皆の最大魔力量が少ないということが分かったからだ。

 いや、一般的な冒険者と比べれば多い方なのだが、ことSSS級ダンジョンに関していえば絶対的に足りない。

 いくらマッピングのために4階層の全フロアを回ったとはいえ、この程度のモンスターで魔力を空にしていてはこれから先の攻略など不可能だろう。

 しばらくは皆の最大魔力量をあげていくことに専念した方がよさそうだ。

 

 

 翌日から4階層でモンスターを倒す日々が続いた。

 ジェラだけは来る途中の階層で倒せそうなモンスターを獣人化して倒させた。なので4階層につくころにはクタクタになっていた。

 ひたすら4階層をぐるぐると回り、休んで魔力が回復したら倒すを繰り返し、時間が来たら帰還し宿で寝て朝になったらまた4階層へと戻ってくる。

 俺達は1か月間、ひたすら4階層のモンスターを倒し続けたのだった。



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