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152、リーリアvs巨人兵2



 リーリアは危険を感じたのか一旦こちらへと戻ってきた。


「お父さん……あれは!?」

「どうやら変身できるタイプのモンスターのようだな」


 これは第二形態といったところか。

 獣人族が獣人化するように、このモンスターも変化するタイプのようだ。

 だがその変化は獣人化といった程度のものではなさそうだ。

 明らかに前の状態とは一線を画している。

 

「我の出番のようだな! さすがにリーリアでは荷が重いであろう」


 レヴィアはリーリアを押しのけるように前に立つ。

 だがリーリアにも意地があった。


「まって! まだ戦ってる最中だもん!」

「でも剣が折れてしまっては戦えんだろう?」

「剣ならあるもん! ほらこれ!」


 いつの間にか手にしていたそれは宝箱に入っていた質素な剣だった。


「どんな効果があるかわからぬというのにそんなもので戦えるのか?」

「わかんないけど……でも戦えるよ!」

「わからないのでは任せられん」

「剣は丈夫っぽいもん」


 リーリアは右手で剣を持ち、左手でコンコンと剣身の部分を軽くたたいた。

 すると一瞬だが無色透明だった宝石がキラリと光った気がした。その変化にはリーリアとレヴィアは気がつかなかったようだ。


「リーリア、ちょっと剣に魔力を込めて見てくれないか?」

「え? 剣に?」

「ああ、今宝石の部分が光ったような気がしたんだ」

「本当っ!? わかったやってみるね!」


 リーリアは剣をかかげ魔力を流し込んだ。

 すると無色透明だった宝石は青色に輝きだした。


「わっ! すごい! 青色に光ったよ!」

「あら! もしかしてそれは九星剣ではないですか?」

「え? セレアこの剣知ってるの?」


 一生懸命マッピングと戦っていたセレアがいつの間にか俺の横からひょっこりと顔を出していた。

 今まで戦いにも宝箱にも興味を示さなかったセレアが珍しい。


「知ってるも何もこれはお兄様がお父様から授かった大切な剣なのです。この剣は扱う者の力に反応して強くなる性質があります。色は全部で九つあって、弱い順で無色、紫、藍、青、緑、黄、橙、赤、虹という順番になります。リーリアは青ということなので十分に力を引き出せているようですね……でもどうしてこんな場所に?」


 セレアは首を傾げてうーんと唸っている。

 どちらにせよ物凄い剣ということがわかった。

 しかしリーリアで青ということは九星剣のポテンシャルはかなりヤバいものがあるだろう。


「青……ってことは4つ目ってことだよね? うーん私ってまだまだなんだね」

「うふふ、安心してください。そもそもこの世界にはあなた以上の力を発揮できるものはいませんよ。私のお兄様ですら赤だったのですから」

「それでも赤って……セレアのお兄さんっていったい何者なの?」

「それは内緒です」

「むーいつもそれだよね!」

「ふふふ」


 セレアは肝心なことは教えてくれない。

 俺たちに知る資格がないのか、ただ本当に教えてはならないのかは分からないが、問い詰めてものらりくらりと躱されてしまう。こうやって秘密にしている以上俺たちに知るすべはなかった。


「ほら、そんなことより巨人兵が退屈そうにこちらを見ていますよ」

「そういえば忘れてた」


 巨人兵は黄金に輝かせたまま、扉の前でじっと微動だにせずに構えたまま動かない。射程範囲内でないと攻撃できない仕組みなのだろうか。


「じゃあこれで私が戦ってもいいよね?」

「うぐぐ……我は一度は譲った身……仕方ない。行ってくるのだ!」

「やった! お父さんもいい?」

「ああ、やっつけてこい!」

「うん!」


 本当に残念そうに譲るレヴィア。

 俺はリーリアの肩をポンっと叩いた。


 リーリアはそれに応じるように巨人兵に向かって飛び出していく。

 既に魔力は全開で、身体強化や魔力ガードにすべての魔力を注いでいた。


 短期決戦。

 出し惜しみしては負けると思っているのだ。

 接近するリーリアにさっきまでとは比べ物にならない速度の斬撃を繰り出す巨人兵。

 集中していても避けるのが難しい斬撃を紙一重で躱していくリーリア。

 だが巨人兵も負けてはいられないと回転速度を上げていく。


「くっ!」


 リーリアの苦悶の表情が一瞬浮かぶ。

 なんとか九星剣で受け止めるものの、それによって足が止まってしまった。

 巨人兵はここぞとばかりに斬撃のスピードを上げていく。

 リーリアは必死に剣を捌くものの、前進する機会を失ってしまった。

 今防ぎきれているのも九星剣の性能があってこそだろう。

 

 つねに魔力全開状態を維持できるわけでもない。

 リーリアには焦りの表情が浮かんでいた。

 一刻一刻と残り魔力は少なくなっていく。

 だがさらに威力もスピードも増した巨人兵の前になすすべがないのも事実だった。

 後方には俺達がいる。

 いつでも戻れば交代ができる。

 だがリーリアはそれをしたくなかったのだ。

 

「私はお父さんの隣を歩くんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 想いの一撃が巨人兵の剣を大きく弾いた。

 まさかの事態に巨人兵は一瞬戸惑った様子を見せ隙が生まれた。

 残りすべての魔力を使って突撃し、一気に間合いを詰めるリーリア。

 巨人兵はなすすべもなく……いや、見守る様にその一撃を見つめていた。


「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 巨人兵の頭から足元まで一直線の斬撃が走る。

 手ごたえはあった。

 リーリアは立ち上がると血振りの動作をして剣を鞘に納める。

 

 巨人兵からは光があふれ出していた。

 真っ二つとなった鎧からは亀裂が走り、ボロボロと崩れ落ちていく。

 崩れ落ちた場所からさらに光があふれ、さらに鎧は崩れ、それを繰り返しどんどん光の魔力が部屋中にあふれ出していく。

 鎧がすべて崩れ落ち、部屋を強烈な光が照らしだした。

 その光はリーリアを包み込むようにして集束していき、体に溶け込むようにして消えていった。


「リーリア、大丈夫か?」


 俺は呆然と立ちすくむリーリアに近づき声をかけた。


「うん……なんだかとっても温かい光だったね」

「そうだな……」


 明らかに異様と思われた光だったが害があるわけではないようだ。

 リーリアの魔力は回復したどころか前よりパワーアップしているように思えた。


「リーリア、また一つ山を越えたな」

「うん! 剣の技量と魔力の自力が上がった気がする!」

「確実に上がってるぞ。偉いぞリーリア」

「えへへ……お父さんありがとう!」


 俺はリーリアの頭を優しく撫でる。

 リーリアも嬉しそうに目を細めた。


「まあ! リーリアばっかりズルいです! 私も撫でて下さい!」


 セレアはリーリアの横に立つと同じように頭を突き出してくる。


「でもセレアは俺に意地悪して秘密にしてくるからな」

「まあ、お父様! 私はそんなに意地悪ではありません! 今回の出来事なら説明できますよ!」

「そ、そうか。ではお願いしようかな」

「ええ、任せて下さい!」


 こほんと咳ばらいを一つ挟むとセレアは説明をしだした。


「今回の相手はガーディアンといってモンスターとは異なるものなのです。宝具を守る守護者の役割をしています。そして宝具は所有者を選びます。今回はリーリアが所有者として認められたというわけなのです!」

「そうなの?」

「そうなのです! 例えば……アナスタシアに渡してみてください」


 リーリアはアナスタシアに九星剣を手渡してみた。

 アナスタシアがそれを受取ろうと触った瞬間──


「痛っ! なんだこれは!?」


 バチンと音が鳴り、指が弾かれた。


「こういった感じで選ばれた者以外は触れることも許されないのです」

「うぐぐ……私で試さなくても……」


 手をさすっているアナスタシアが少し可哀そうだった。

 

「なるほど……でもお父さんは触ってたよね?」

「それは……お父様は特別な存在ですから!」

「でたっ! またそうやって秘密にするー!」

「うふふ」


 どうやらこの質問には答えてくれないらしい。

 俺に関することはことごとく秘密なようである。


「まあいい。この九星剣は特別な力を感じるしかなりの戦力になる。今後も青宝箱は積極的に取っていこう」

「うん!」


 そう言って部屋をでて先に進もうとした。

 その時、シャロの発した一言でみんなの興味が一点に集中する。


「ベーさんは何色なんだろ~?」


 ピタッ。

 皆の足が止まる。


「確かに……」

「触れるというのなら扱えるということだよね?」

「気になるぞ!」

「お父さん! やってみてよ!!」


 振り返ると皆の瞳が爛爛と輝いているではないか。

 これはやるまで先には進めないだろう。


「仕方ないな」


 差し出された九星剣を手に取る。

 すると手に非常に馴染み、同時に懐かしさを感じるのだった。


(これは……以前どこかで?)


 考えてはみるが何も思い出せない。

 周りには、「はやく!」と急かす奴がいる。


 ふう、じゃあやってみるか!


 九星剣に魔力を込める。

 すると無色透明だった宝石は橙色へと変化した。


「すごい! 橙色ってことは7番目だね!! 私より3つも上だよ!」

「おぉぉぉ! ベアルでそのレベルなのか! ってことはさらに2ランクも上の者が存在することになるのか……世の中は広いな」

「いやいやいや、この世界ではベアルより強い存在なんていないわ!」

「違う世界にはいるってことかにゃ?」

「セレアのお兄さんが赤とか言ってなかった? ていうかセレアってこの世界そのものよね?」

「ううむ、我はよく分からなくなってきたぞ」

「まーまー、とりあえずベーさん強すぎってことでいいんじゃないかなぁ?」


 皆がわーわーと騒ぎ立てる。

 正直俺としても橙色なことは不服なのだが、さらに強いものがいるってこと自体は悪くはない。

 俺もまだまだ精進しないといけないな。



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