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149、例の部屋



 俺は2階層へと辿り着いた。

 次の1人──リーリアも階層魔法陣から現れる。

 

「このダンジョンって下の階に行くのにも魔法陣を使うんだね」

「ああ、しかもちゃんと色別されてるから解りやすいだろ?」

「うん……赤が階層魔法陣で青が転移魔法陣で緑が帰還魔法陣だね」

「その通りだ」


 このダンジョンの魔法陣は今のところこの3種類だ。

 だが何かしらのトラップがあるといけないので俺から順に入ることにしている。

 もし何かあっても俺ならば一人でもなんとかなるからな。

 話をしていたら最後のサリサが魔法陣から現れた。


「サリサ! ちょっと来てくれ」

「はーい…………なに?」

「お前マップ覚えているか?」

「最初の方は……でも後半は覚えてないわ」

「そうかお前もか」

「あの時はそれどころじゃなかったから……」

「……じゃあとりあえず最初の方は覚えている順路で進もう。もし間違ってたら教えてくれ」

「わかったわ」

「よし! ここからはSランク相当のモンスターが2体同時に出てくる。気を引き締めろよ!」

「「「「「「「「おー!」」」」」」」」


 記憶を頼りに部屋を進んでいく。

 一応念のためにセレアにマップ作製を頼んである。

 しっかりとしたマップを作れればそれは情報となり高く売れる。売らないにしてもあって困ることはない。

 セレアは、「お父様のために頑張ります!」と目をキラキラとさせていたが、線を引くのが苦手なようでグニャグニャになっていた。

 ……まあ、一応わかるからあとで清書すればいいか……。

 嬉しそうにしているセレアから紙とペンを奪うことはできなかった。


 3つ部屋を進むと早速モンスターが現れた。

 ブラックドラゴンとホワイトドラゴンの2体だ。

 どちらも俺たちの世界に無い能力を使う強敵である。


「アナスタシアはブラック! レヴィアはホワイトだ!」

「了解!」「わかった!」


 俺は即座に判断すると指示を出す。

 パーティーを2つのチームに分けており、それぞれのチームの前衛に指示を出す。あとは割り当てられた敵と戦っていく流れとした。

 俺は相変わらず遊撃隊で危険な方のチームに加勢に行く。

 だが今回も大丈夫だろう。

 チームアナスタシアにはリーリアとサリサが。

 チームレヴィアにはナルリースとジェラとシャロだ。


 アナスタシアのチームは攻守ともにバランスがある。鉄壁の守備を持つアナスタシアに破壊力も高く手数の多いサリサ、そして一撃必殺のセレアソードがあるリーリア。この3人を相手にしたら俺でさえも危うくなるだろう。

 一方レヴィアのチームはほぼ攻撃特化だ。ていうかレヴィアが強すぎるのでここに3人娘が割り当てられている。3人娘はレヴィアの補助をしつつ、自身の経験をつむことに専念してもらうつもりだ。


 

 開幕突如ブラックドラゴンの闇黒ブレスを放つが既に動いていたアナスタシアが聖なる盾ホーリーシールドでそれを防いだ。

 アナスタシアの後ろから飛び出すように出てきたのは鞭だ。

 しなる鞭がブラックドラゴンの上あごを叩くと闇黒のブレスがまるで飲み込まれたかのように消滅する。

 その一瞬のスキがブラックドラゴンの最後となった。

 既に頭上に飛び上がっていたリーリアが一閃。ブラックドラゴンの首が飛んだ。


 

 一方ホワイトドラゴンは地面に這いつくばっていた。

 俺の合図と共に走ったレヴィアが翼を切り落とし、小さい体とは思えないほどの圧倒的な力でホワイトドラゴンの首を掴み地面に叩きつけていたのだ。

 3人娘はあっけにとられていたが、「早く攻撃せぬかバカもの!」とレヴィアに怒鳴られ意識を戻すと総攻撃を開始した。

 ……ちょっと見ていてホワイトドラゴンが哀れに思えた。


 サリサが小走りしながら俺の元へとやってくる。

 レヴィアがホワイトドラゴンを抑えつけている姿を横目で見ながら口を開いた。


「確実に昔の私たちより強いわね……でも……」

 

 一瞬言い淀んだ後に続けて言った。


「人魔獣というのが怖ろしくなったわ。あれほどの者がこれからうじゃうじゃと現れるかも知れないのね」

「そうだな……だがレヴィアは俺の妻となった」

「……そうね」

「人魔獣とはいっても一概に敵とは言えない。人の仲間となりえる可能性もあるんだ。それに今は人魔獣にとってもカオスは共通の敵だしな」

「……カオスを倒した後の世界がどうなるかは私たち次第なのかもしれないわね」

「そうだ」


 サリサが俺の腕へと手を伸ばす。

 腕組している腕の中へと強引に手を入れると抱きついてきた。


「おい?」

「乙女が怖がってるんだからこれくらいしたっていいでしょ」

「だれが乙女だ!」

「うるさいわね! 私が乙女だっていえば乙女なの!!」

「はいはい、わかったよ」

「でた! そのいい加減な返事! そういうところは変わってないわね」

「お前こそ正解でもない物事を強引に言いくるめるのは変わってないな」

「正解でもないって何よ!」

「乙女に決まってるだろ!」


 俺たちが言い合っている間にホワイトドラゴンも倒し終わっていた。

 終わってみれば圧勝である。

 これならば簡単に3階層まで行けるだろう。

 

 

 2階層はやはり無双状態だった。

 戦闘では俺の出番はなく、マッピングが下手なセレアの助手をするしかやることがなかった。

 セレアは、「お父様と共同作業ができて嬉しいですわ!」と喜んでいたので俺の心も癒された。


 そして……とある転移魔法陣の部屋へとやってきた。


「……この部屋は」

「どうしたの? お父さん」

「ここが例の転移魔法陣だ」

「あ……」


 レイナによってサリサが深手を負わされ、ファミルが死んだ場所。

 その転移魔法陣だった。


「しかしこの先に何があるんだったか覚えていないな。サリサは覚えてるか?」

「そういえば私も覚えてないわ」


 何故覚えていないのか。

 鮮烈な記憶があった場所だから?

 仲間が死んでしまったのだから部屋の探索どころではなかったし、すぐに外にでてしまったので覚えていないのも仕方ないのかもしれない。

 だが本当にそうなのか?


 サリサも難しい顔をして悩んでいる。

 俺と同じく思い出そうとしているのだろう。


「ここには入らないのか?」


 悩んでいる俺たちを見て不思議そうな顔をしているアナスタシア。

 他の皆はここが例の場所だと気がついたようだったが、アナスタシアは鈍感であるため気がつかなかったようだ。

 俺はアナスタシアに首を振った。


「ここはやめておこう。なんか嫌な予感がする」

「そうなのか? そう言うのであれば無理に行こうとは思わないが……」


 危険を冒す必要はない。

 ここに階層魔法陣がないのであれば行く必要はないのだ。

 俺たちは転移魔法陣を無視して先に進むことにした。

 目指すは3階層。攻略することが大事だ。

 

 二つ目の部屋に入ろうとしたとき、後方から声が上がった。


「待って!! ナルリースがいないよ!!!」


 シャロの悲痛な声が響き渡る。

 皆一斉に振り返るが、確かに後方を歩いていたはずのナルリースが忽然と消えていた。


「なぜだ!! どこに行った!?」

「わかんないよ!!」


 何故だ! 何故消えた!?

 一体何があったというんだ!?

 俺が動揺を隠せずにいると、


「お父さん落ち着いて!! 指輪の探索の力だよ」

「──そうか!」


 動揺してすっかり忘れていた。

 俺は魔力を流し指輪の力を発動させる。

 すると一つだけ離れている場所にいるのを確認した。


「あの場所は!!」

「お父さんどこなのここは!」

「──魔法陣の転移先だ!」


 何故ナルリースは転移魔法陣に入ったんだ!?

 一人行動をするような子ではなかったはずだ!


「──そういえば!!」


 シャロは何かを思い出したかのように顔を上げる。


「なんか暗い顔をしてたよ!? じっと魔法陣の方を見てさ……」

「なんだと……」


 嫌な予感が頭をよぎる。

 まさかレイナのようなことが起こるというのか?

 また俺が原因で?

 いや、まて。

 まだそうと決まったわけではない。

 あのナルリースがそんなことをするはずがないのだ。

 そうだ! きっと気分が悪くてふらふらと意図せず入ってしまったのではないか!?

 それかドジっ子な一面もあるから間違えて乗ってしまったとかそういうのに違いない。


「戻るぞ!!!」


 俺たちは全力で転移魔法陣の部屋へと戻った。

 すると一瞬、妙な違和感を覚えた。

 なんだ……何かあるのか?

 部屋の様子がおかしい?


「お父さんどうしたの!?」


 そうだ、今はそんなことを気にしている場合ではないんだ!

 ここは俺が行ってナルリースを連れ戻すしかない。

 俺ならば何があっても対応できる。


「何があるかわからないから皆はここで待ってろ! 俺が行ってくる!!」

「お父さん!? 一人でいくの?」

「ああ、罠かもしれないからな」

「なら一緒にいこうよ!」

「いや、多人数の場合不利になる罠もあるんだ。俺一人の方が対処しやすい」

「でもっ──」


 リーリアの肩にサリサが手を置いた。


「心配なのは分かるけどベアルもあなたの事が心配なのよ。今はあなたのお父さんを信じましょ。」

「……うん」

「ふふ、いい子ね」


 俺はリーリアの頭を優しく撫でてから転移魔法陣の中に入った。

 


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