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143、SSS級ダンジョン



 扉の向こうには一つの転移装置があった。

 これに乗れば初期位置へと飛ばされるのである。

 俺は躊躇することなく転移装置に乗る。

 すると視界はぶれて明るい一つのフロアへと飛ばされた。

 そこは大理石のように綺麗に磨かれた床に赤い絨毯が敷かれていて、部屋の隅には美しい調度品、天井には豪華なシャンデリアがそこらかしこにぶら下がっている。


「相変わらず美しいダンジョンだ」


 これらの物は当然ながら盗ることができない。

 市場に出回ったらきっと数千万ゴールドにはなるだろう。


「さて、一人行動は久しぶりだな……ていうかダンジョンで一人は初めてかもしれないな」


 そもそもここは一人で来るようなダンジョンではない。

 以前来たことがあってモンスターの種類や数などを把握しているからこそ、一人で探索できるのだ。 

 早速南の魔王を探すことにした。

 

 このダンジョンは1フロアごとに扉が付いている。

 形はすべて四角くなっており、4か所すべてに扉が付いていることもあれば、一か所にしか付いていないこともある。

 なので感覚に頼るよりはしっかりと頭の中で地図を描き迷わないようにする必要があった。

 フロアを移動するたびにランダムでモンスターが出現している。それはモンスターが出て来ないのが続くときもあれば、連続で出現することもある。

 ちなみにモンスターは扉を開けようとした瞬間に現れる。モンスターが出現した場合はすべての扉がロックされるので逃げることもできない。

 これこそSSS級と呼ばれるダンジョンの攻略の難しさであった。

 

「さて、記憶では帰還魔法陣は3つほどあったかな」


 方角など分からないが現在地を南とした場合、それぞれ東、西、北の地点に帰還魔法陣があったはずだ。

 南の魔王がどこにいるのか分からないが、すぐ帰れるように帰還魔法陣の近くで修行をしているはずである。

 まあ……虱潰しに探すしかないだろう。

 俺はそう考えるとまずは東に向かうことにした。


 東扉をギギギと開く。

 中に入るとそこは同じように美しい部屋だった。

 そのまま中央を真っすぐ堂々と歩き向かい側にあった扉に手を触れた。


 ギャアアァァァァオ!!!


 後ろからとてつもない咆哮がした。

 振り返ると赤いドラゴンがこちらに向かって火炎球を吐き出した。


「ファイアードラゴンか」


 俺は火炎球を避け走り出す。

 ファイアードラゴンは近づけまいと羽ばたくと、火炎の渦が自身を中心に広がっていった。

 その火炎の渦は瞬く間に部屋いっぱいに広がり灼熱の地獄と化した。


「ふふ、全然熱くないぞ」


 だが俺にそんなものは効かない。

 自身の周りに分厚い氷の板を張り巡らせてガードする。

 灼熱地獄でも決して溶けないのは常に俺が魔力を送り続けているからだ。

 ファイアードラゴンは怒ったように突進してくる。

 氷の板を破壊しようと前足を振りかざす。


 ガキン!


 だがそんな攻撃では俺の氷は砕けない。

 それどころか前足に氷のつららが刺さる。

 攻撃される直前に氷の板にトゲトゲを生やしたのだった。


 ギャアアアオオオォォォォ!!!


 痛いのか悲鳴のような咆哮を上げ後ずさりした。

 

「これまでのようだな」


 遊びは終わりとばかりにアイスランスを大量に発動させた。

 ファイアードラゴンはなすすべなく氷の槍によって串刺しとなった。


「まあこんなものか」


 このモンスターはドラゴンだったがランクで言うならばAの上って感じだろう。

 所詮知能の低い最低ランクのドラゴンだ。


「この程度ならばナルリース達でも対処できるだろう」


 問題となるのは火炎の渦による全体攻撃だが……まあ火傷は負うかもしれないが死にはしない。魔力バリアで多少は防げるから、その間に倒してしまえばいい。

 俺は全員で戦う時のことをシミュレーションしているとファイアードラゴンは消えてなくなった。


「ダンジョンに回帰したか」


 一定時間経つとモンスターは消えてなくなる。

 だがしばらくするとまた違うフロアで現れるのだ。

 これを俺たちは回帰すると言っている。

 回帰した瞬間にモンスターの魔力の一部が俺達へと振り分けられるのだ。


「やはり大した量ではないが塵も積もればだな」


 地上でAランクの魔獣を倒した時と比べたら手に入れられる魔力量は格段に下がるが、モンスターは無限にいるのがいいところである。

 質より量というのがダンジョンであった。



 俺はさらに先に進む。

 次の部屋にもモンスターが現れた。

 動く鎧のリビングアーマーだ。

 

「金色か」


 俺はふうっとため息をつく。

 リビングアーマーは色によって強さが変わる。

 中でも金色は3番目に強い。一番が漆黒、二番が白金だ。

 とはいえ金色でも十分に強い。

 俺が色を確認したのと同時にリビングアーマーは襲い掛かってきていた。

 一振り、二振り、三振り。

 スキのない連撃を繰り出す相手を俺はじっと観察をする。

 剣の腕と速さでいえばアナスタシアに近い。

 力はややリビングアーマーが上だろうか?

 俺は4撃目を手で受け止めると、そのままリビングアーマーの腹に拳を埋め込んだ。

 それでもまだ動こうとするリビングアーマーに内部から魔力の球を打ち込み破壊する。すると完全に動かなくなった。


「だがただの鎧だ。あいつらには遠く及ばない」


 2体目にして1階では役不足なのではないかと思い始めてきた。

 特にリーリア、レヴィア、アナスタシアでは初心者ダンジョンのように暇になりかねない。


「まあ2階からが本番だしな」


 SSS級ダンジョンといえど1階は弱いのだ。

 だからこそいろいろなパーティーがここにきてアクセサリーを狙っている。

 

「まあ、堅実にいこう」


 前人未踏のSSS級ダンジョン制覇は男のロマンでもある。

 俺は胸の高鳴りを押さえつつも安全に行こうと胸に誓うのだった。


 


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