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113、リーリアvsジェラ



 翌日、この日はジュニアの部本戦である。

 

 本戦は16人からなるトーナメント式で全15試合。

 ルールは基本予選と同じだが、接戦が予想されるため、1試合につき10分の制限があった。10分で決着がつかなかった場合は審判による判定とする。

 ほとんどの場合は決着がつくのだが、過去に殴り合いの泥仕合があり、数十分間殴り合っても決着がつかなかったことから10分の制限時間が設けられたとか。


 中央にデカデカと張り出されているトーナメント表を見ると、番号が振られており、リーリアは1番のようだ。ちなみにアナスタシアは16番であるため決勝まで残らないと当たることはなさそうである。

 ナルリースは13番、ジェラは4番と綺麗に分かれていた。

 

 俺とレヴィアとシャロは観客席で観戦をすることにした。

 レヴィアは相変わらず本調子ではないが、ミドルの部は二日後に行われるためになんとか回復は間に合いそうだった。

 今はパンを大量に買い込んできたのでそれをかっ喰らっていた。


「ねえねえ~誰が優勝するかなぁ? 僕はリーちゃんだと思うけどアナちゃんも強いもんね~。ここでどっちかに賭けるのもいいけど、どっちも倍率高いから二人に賭けても儲けがあまりないから迷っちゃう」


 シャロがお金を握りしめながらそういう。

 頭の中には儲けることしかないようだ。


「俺の見立てでは若干リーリアが不利だ」

「そうかもしれんな」

「え!? なんで?」


 俺とレヴィアの感想にシャロが驚いた。


「まずセレアソードは出せない。あれは強すぎて制御も難しいからアナスタシアを殺してしまう可能性がある。そしてリーリアは法術をほとんど知らない。アナスタシアは魔獣との戦いで魔法は知っているからそこが不利となるな」

「そうなると~純粋に剣と魔法での戦いになるの?」

「ああ、剣はアナスタシアに一日の長がある。あとは魔法になるが……」

「魔法もはじかれそうであるな」

「そうだな……勇者の強さはその守備の高さにある」


 勇者の持っている盾は俺も見たことがあるものだ。

 勇者アランが持っていた物と同じであり、伝説の武具でもある。

 盾だけでなく、鎧も剣も同じのようなので勇者に代々引き継がれる代物なのだろう。

 そしてその効果は絶大であり、俺も過去に勇者を倒しきれなかったのはその装備のおかげだったのではないかと思っていた。


「なので総合的にはリーリアの不利となるだろうな」

「そうなんだぁ~」

「だが……勝つ方法は他にあるからな」

「……あっ! もしかして場外?」

「その通りだ」


 リーリアならその答えにもすぐにたどり着くだろう。

 あとは本人の頑張り次第だが……まあ、この大会は勝つことよりも経験を積むことに意味がある。

 俺は目的があるため勝つことが大事だが、他の皆は実戦経験を積みつつ楽しく戦えればそれでいいと思っていた。


「お、そろそろ始まるぞ」

「あ~! 結局賭けられなかったぁ! ……まあいっか~。ベーさんに全部賭ければいいしね」


 そんなことを言っていたら一回戦が始まった。

 だがすぐ終わった。

 リーリアの勝ちである。


「これは仲間同士の戦い以外は退屈そうだな」

「うむ、そうであるな」

「実力が違いすぎるねぇ」


 俺たちがあくびをしながら見学している中、他の観客たちは熱狂の渦に包まれていた。


「うおぉぉぉぉぉ! 俺たちのリーリアーーーーー!!!」

「お前がナンバーワンだー!!!」

「結婚してくれーーー!!」

「「いや、それはダメやろ」」


 観客から見てもリーリアの実力の高さが分かるため、興奮が収まりきらずに会場の熱気が上がっていく。

 リーリアは予選での戦いが話題となり、賭博関係者が号外としてコロシアムの掲示板にリーリアの情報を張り出していた。

 興味があったのでそれを見て見ると、『12歳の少女! 屈強な男をなぎ倒し予選通過!!』とデカデカと記事が貼られていた。

 その為に場内ではすでにリーリアの熱狂的なファンができ始めていた。


 それは賭博にも反映されていて、先ほど見た賭けの倍率はアナスタシア1.8倍、リーリア2.0倍と中々にして接戦だった。やはり前回優勝している勇者には一歩及ばなかったが、実績のない新人がこれほど迫ってくるのは異例の事だ。

 ちなみに予選で中々の戦いをしたナルリースが6.8倍、ジェラが8.0倍だった。

 やはりこの国での勇者の信頼は厚い。

 ルーキーが現れて面白くなってきたが、それでも勇者が勝つだろという人がほとんどだ。リーリアの人気は賭博関係者が用意したシナリオによるものだ。



 さて……試合経過はというと、ジェラやナルリース、アナスタシアも順調に勝ち残り、次はリーリアとジェラの戦いとなった。

 知り合い同士という情報を手にしたのか、実況の女も言葉に熱が入る。


「皆さん、次は準々決勝ですが、なんと! 破竹の勢いで勝ち続けているお二人は知り合いということらしいです! ジェラさん本人のリークによると4年間同じ釜の飯を食い、切磋琢磨し合った仲だにゃ! とのこと! これは面白い戦いとなりそうです!! さらに面白いことに、この二人は今回のエルフ国代表のもとで修業をしたとか。とても気になりますね!!」


 どうやらインタビューされたときに喋ったようである。

 まあ、別に隠しているわけではないのでいいんだけどな。

 だがシャロは違ったようで、「ジェラのバカぁ~! ベーさんの倍率上がっちゃうじゃん!」と怒っていた。

 こいつは本当にブレないやつだ。


 実況の説明により、試合開始前にもかかわらず観客の熱が高まる。

 応援する声も多くなり、リーリアを応援する声が圧倒的に多かった。

 これはジェラはやりにくいだろうなと思ったが、闘技台の上のジェラを見ると、観客の声などお構いなしと言った風にリーリアだけを見つめていて、魔力は最初から全開である。

 リーリアも楽しそうに笑っていて、試合開始はまだかとうずうずしているようだった。


「ではっ! リーリア選手VSジェラ選手──試合開始です!!」


 実況の声と闘技台に上がっている審判による合図で試合が開始された。

 それと同時にお互いの獲物──バゼラートハルバードがぶつかり合い火花が散る。

 バゼラートハルバードでは間合いが違うが、お互いに有利な間合いを取らせないように動き回る。

 何度も何度も打ち合い、リーリアが押し負けたと思えば華麗に交わし、隙をついてリーリアが飛び込めば流れる水のようにそれをいなす。

 まるで演武かのように互いの動きはシンクロしており、一糸乱れぬその動きは見るものを魅了した。


「うおおぉぉぉぉ!!!!!」

「二人ともすげえええええええ!!!!!」


 観客の熱はさらに上がり、コロシアムの盛り上がりは最高潮に達する。

 それを肌で感じているであろう二人は、楽しそうに笑いあい、さらにスピードが上がっていく。

 観客のほとんどの人はもう何をやっているのかもわからないだろう。それ程洗練されていて隙のない動きだった。


「そろそろか」


 だが俺の目にはしっかりと見えていた。

 ジェラが若干遅れだしているのを。

 リーリアのスピードはさらに上がっているのに対して、ジェラはついていくのに必死で、剣を捌く動作が間に合わなくなってきていた。

 ジェラは防戦一方になる。

 こうなるとさすがに観客も気付いたのか、息を飲み二人を見守った。

 

「てやああぁぁぁ!!!」


 リーリアの勇ましい掛け声が響き渡る。

 その強烈な一撃はジェラの斧を弾き飛ばす。


「こにゃくそぉぉ!!」


 斧を失ったがジェラは諦めない。

 素手による攻撃へと切り替えた。

 飛び掛かるジェラ。

 だがそんなことはリーリアも予測済みであった。

 小さな体をさらに屈め、ジェラを回避する。

 

「にゃ!?」


 ジェラの手は空を切り、完全に無防備となった。

 このチャンスを見逃すリーリアではない。


「そこっ!!!」


 ジェラの着地に合わせて飛び蹴りをぶちかました。


「にゃああぁぁぁ!!!」


 なんとかガードするもその反動はすさまじく大きく後方に飛ばされる。

 そして──場外に着地をした。


「おおぉぉぉぉっと! ジェラ選手場外です!! リーリア選手の勝利です!!!」

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


 固唾をのんで見守っていた観客がまた沸き出した。


 


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