会いたい
「えっと…、突然の事で戸惑ってますよね?もっと早く言えば良かったのですがタイミングが…ごめんなさい」
どうしたんだろう。私。
目の前いるラベンダーさんより、スマホの中のランドールさまの事ばかり考えてしまってる。
あんなに会いたかったランドールさまが実現して目の前にいるのに。少しもときめかない。
「貴女が良かったら、こうしてまた会って貰えると嬉しい」
どこか遠い言葉に聞こえた。
「あ、僕ばり喋ってごめんなさい、さっきの名刺の裏に僕の連絡先書いてあるから」
何て言えばいいんだろう?
ゲームの中でランドールさまが初めて私を見てくれた時感じたときめき、私が思い出した感情。
今の自分にそれが全く無い。
この人は本当にランドールさまなのだろうか?
ずっと私の側にいてくれたあの方なのだろうか?
「ラベンダーさんはゲームの中からずっと私の事を見ていたのですか?」
ぶっきらぼうだけどいつも優しかったランドールさま。ランドールさまが側にいる事がどれだけ心強かっただろうか。
「さすがにそこまでの機能は無いよ」
クスッと指を口元に運んだ。
「私にいつも話しかけてくれましたよね?」
「…え?いや、ゲームは通常のゲームと同じようにセオリー道理の動きしかしないからそんな特別な機能はないよ」
眉をしかめて小首を傾けているところを見ると、これは本心だろうと思った。
え?え?脳内がバグり始めた。
今まで私に話しかけていてくれたランドールさまは?あれは何?夢?私、夢でも見ていたの?
違う。ランドールは確かに存在してた。
ランドールさまは私のスマホの中にいてくれた。
「そうそう、あのゲームだけど、終わらせるよ」
「え?」
「サービス終了かな。本当は貴女を見つけたらすぐに終わらせるつもりだった」
サ終?
そんな簡単に?
「いつ?いつですか?」
「今日中には全てのデータ削除になるはず…」
「え!」
え!え!このままランドールさまに会う事できなくなってしまうの?
鞄からスマホを取り出そうと探しながら分かっていた。
私、スマホ部屋に置いたままなのに。
どうして、スマホ家に置いてきてしまったの?
こんな事になるならどうして?
「私、帰ります!」
「え?」
背後でラベンダーさんが何か言っていたけど、耳には入らなかった。
一刻も早くランドールさまに会いたい。




