語られる真実
「あ、えっと…」
私と純のやり取りを一通り見ていたラベンダーさんは純の姿が見えなくなったのを確認してから申し訳無さそうに口を開いた。
ポリポリと鼻を掻いて目を泳がしているその姿を見て安心した。
いつものラベンダーさんだ。
だけど、ラベンダーさんはランドールさまで、ランドールさまはラベンダーさん?頭がごじゃごじゃになってきた。
そんな私に視線を合わせた。
「えっと…改めて、一条紅蘭です」
え!一条…紅蘭!!!!紅蘭さまと同じ名前!
初めてゲームを開いた時以来のフルネームだったから少し間が空いてしまったけど。
「紅…蘭さまの名前?どうしてあなたがその名前を…?」
先程渡された名刺に目を通すと、見た事ある会社名が書いてあった。
『プリビアスライフメイト』
あれ?何だっけ?この名前?
あれ?聞き覚えが…。
あ!そうだ、思い出した。
「これ紅蘭さまと出会えたソシャゲの会社名だ!」
「気付きましたか?あのソシャゲ実は僕が作ったモノなんです」
「え!」
あ、このソシャゲ始める時に千代子が言ってた。
このソシャゲをリリースするためだけにゲーム会社を立ち上げたって。
「貴女を探すために貴女に会うためにこのゲーム会社を立ち上げた」
「そんなの…」
「そう、一縷の望みに懸けるしかなかった、でも、それぐらいでもしないと貴女に会えないと思った」
そう言って、ラベンダーさんは話続けた。
「物心ついた時から僕には前世の記憶があった。ランドールの想いはただ一つ、リリアに会う事だった。だけど、僕のみてくれはランドールとは遥かに違っているだろう?異国人と言う違いとか、そもそもあんな威厳も無いし王族でもないし、そんな事より僕はあんなイケメンじゃない」
笑いを誘っているのか、私の目を見てクスっと笑ったので、つられて笑ってしまった。
「正直さ、こんな途方もない人の中から仮に貴女を見つけ出しても僕自身声を掛けられる自信なんて無かったんだ。あの日偶然貴女とすれ違うまでは…」
私は全然そんな事記憶の片隅にも無かったのだが、数年前、奇しくも私がソシャゲのチラシを貰ったその場所で当時中学生だった私はラベンダーさんとすれ違ったらしい。
私は全く気付かなかったのだが、ラベンダーさんは一瞬で私だと気付き、どうすれば私が自分の事を思い出すか必死で考え、今この時SNS?いつも持ち歩いているスマホを利用できるのではないだろうかと。
そうして私はまんまとあのソシャゲを始めた。
あのソシャゲわざわざインカメで写真を撮ったり、本名など正確に入れる設定はそのためだったらしい。
だからか、だから、ローディングが異様に長かったのか。納得。
「貴女に会えて本当に良かった」
目の前の笑顔、彼がランドールさま?
あんなに現実に会いたかったランドールさまがこんな近くにいるのに何だろう?心が動かなかった。




