真実
あの時、窓の外からリリアを見ていたのは間違いなくデュオだった。
刺すような冷たい瞳をする彼は、それまでの私の知っている彼とはまるで別人だった。
デュオがどうして、あんな恐ろしい目でリリアの事を見ていたのだろう?
ランドールさまの手帳に書かれていたアイツとはもしかしたら…。
いや、そんな恐ろしい事ある訳…。
今までデュオにどれだけ支えてもらっていたか、デュオにどれだけ救ってもらっていた事か…。
でも…。一度疑い初めたらキリがなくなる。
デュオだったら、ランドールさまのお食事に毒を入れる事もできなくは…。
「何難しい顔して何かあった?」
私の顔を覗き込む純の目が昨晩の夢のディーノの目とシンクロする。
夕方家の前に立っていた私を見て純は少しだけ戸惑った表情を浮かべ、言いようのない笑顔を見せた。
「純は…純はデュオなの?」
私の言葉に左眉がピクっと上がったものの表情は崩れなかった。
「唐突だなー」
「純はデュオなの?」
「……別に今更何でも良くない?」
「え?」
「今更そんな事どうでも良くない?」
公園に止まっていたクレープのキッチンカーを見て純は歩を止めた。
「食べていこう」
私の答えを待たずにさっさと行ってしまい、両手にクレープを持って近くのベンチに腰掛けた。
「ほら、お前も食うだろう?」
「あ…、ありがとう…」
イチゴとキュウイとバナナがトッピングされたクレープ。
純が一番好きなクレープ。
「何でだろうな」
クレープを食べ終え包紙をくしゃと丸めると、私の方に向き直った。
「え?」
「何で何でいつもいつもお前はオレのモノにならないんだろうな」
「…私は…」
「ランドール、ランドールってオレの方がずっと前からお前の事が好きだった、なのに何でお前は気付かない?オレがどれだけお前の事を好きなのか、お前は一度だって考えた事あるか?」
陽が沈みかけてきた公園からいつの間にかキッチンカーもいなくなり、冷たい風が吹いていた。
「何であいつなんだよ?もういい加減諦めろよ!あいつがいなきゃお前はオレの事を見てくれる。そう思ってた」
私の肩を掴み、私を見るその目は私の知ってる純じゃ無かった。
その目の奥にあの日のデュオを感じた。
「そうだよ、だからオレがあいつを、ランドールを殺した」
「だって、だって、貴方は私を庇ってくれたじゃない?」
みんなが私がランドールさまを殺害した犯人だと疑っている中、デュオは最後まで私を信じてくれていた。
「お前が深夜の厨房でランドールに夜食を作ってるのをオレがどんな気持ちでいつも見ていたか分るか?お前がランドールのことで一喜一憂している姿を見て狂いそうだった、お前の事もう見たく無かった。お前ごと消してしまいたかった」
「そんな…」
理不尽な事ある?
純の長くてしなやかな指が私の首に触れた。
ひんやりとした感触に熱が入る。
「もう…もう終わりにしよ」
「じゅ、純…」
苦しい…息ができなくなってゆく…。
ああ…スマホ…、これでランドールさまに会えるのかな…。
「ちょ、ちょっと何してるんですか?」
聞き覚えのある声がこの時を制止した。




