好きだ
『おい、おい、聞こえてるか?朝だぞ、おい!』
ランドールさまに…ランドールさまに…もう一度…、会いたい…。
あの時の私が必死で願い続けた私の想い。
ランドールさまのあの手帳の最後のページに書かれていた、
『好きだ』
の一言の文字が頭の中ぐるぐると回っている。
ランドールさまも同じような気持ちで私の事を探してくださってた。
私の事を見ていてくださっていた。
その事実がすごく嬉しい。
そして、今。
ランドールさまと今こうして出会える事ができたのです!
ランドールさま!
ランドールさまの声が耳元で聞こえる。
「おはようございます、ランドールさま!」
そう、あの時の私の願いが叶ったんだ。
もう一度ランドールさまに出会う事が出来た。
『どうした?今日はずいぶんテンションが高いな』
スマホ画面いっぱいに映るランドールさま。
あの頃願っていた形とは少し違っているけど、もう一度ランドールさまに出会えた事実には変わりない。
「分かります?」
『ああ。いい夢でも見れたのか?』
「はい!とても素敵な夢でした」
時間を超え、私の胸にランドールさまの想いがはっきりと届いた。
さっきまでこの手の中にランドールさまの手帳がランドールさまの想いを届けてくれた。
もうその事実が嬉しくて嬉しくて、これ以上の幸せは無い。
「ランドールさま」
スマホを持った手を高く上げ、反対の手を胸に充てた。
「私、ずっとずっとランドールさまの事を想い続けます!次の時代も必ずランドールさまを探し出します、だから、だから」
ランドールさまも私に気付いてい欲しい。
『分かってる』
スマホ画面の向こう側不機嫌そうに眉を潜めるランドールさまと目が合う。
『来世とかその前にそのいい加減言葉遣い何とかならねーか?』
「あ…」
『まぁいい。何度でも言ってやるって言ったのはオレの方だしな。オレはいつだってどんなお前にだって気付いてやるから安心しろ。で、どんな夢を見たんだ?』
「えっと…」
そう言えば、目覚めの記憶がはっきりと心に残ってしまい、今肝心な事を忘れてしまっている気がする。
「あ!」
『どうした?』
手帳の節々に書かれていた謎の言葉。
明らかに誰かを指して『アイツ』と言っていた。
他にはなかった?もっと手掛かりになるようなこと…。
「ランドールさまはもしかしたら…いえ、きっと…、ご自身が狙われている事を知っていた…」
『…』
「私に注意を促すような事が書いてあったんです」
『…どこに?』
「ランドールさまの手帳に!」
言葉に出してからハッとなった。
つい勢いに任せて言ってしまったけど、これって…。
『オレの手帳見たのか?』
そうですよね、そうなりますよね…。
赤らめた顔を手で覆い、バツが悪そうに目を反らした。
自分の日記を他人に見られたら恥ずかしすぎて、それを読んだ人間と話すのなんて無理。
逆に相当親しい人間に見られる方が恥ずかしい。
SNSのように顔も声も知らない人間に愚痴を呟くのとは訳が違う。
「あ、えっと、あっと、ぜ、全部見た訳じゃないですよぉ」
『やっぱり見たんじゃねーか』
「ご、ごめんなさい」
『……いや、いい』
過ぎた事だと…、ランドールさまは自分に言い聞かせるようにこくんと首を動かした。




