人を想う気持ち
半分真剣と言われどんな顔をしていいか分からず、曖昧に首を傾けた、
二回しか会っていない人にこんな事を言われるなんて思いもしなかったし、何度会っていたとしてもそんな言葉普通に生きてて現実に聞く事なんて無いと思っていた。
乙女ゲームでなら通常の事って現実には100%起こらないよね。
だから、ついついソシャゲに依存してしまったりするのよね。
「あ、ごめん」
沈黙に耐えられなかったのだろう。
両手を顔の前でバタバタと振り早口で捲し立てた。
「会えて良かったって言う気持ちは本当で。ずっともう一度会いたいと思ってた、もう一度会って話がしたいってずっと思ってました」
彼の口から飛び出てくる、ドキドキの言葉の数々に私の頭は追い付かない。
だけど、彼は私の言葉など待っていないようだった。
「…それより浮かない顔してましたけど、何かありました?」
気さくな笑顔。
あ…。
彼のこの笑顔で心が温かくなるのを感じた。
不思議な人だ。
さっきまで私の心にドキドキの爆弾を落としてきたのに、何事も無いように、今度は癒しのオーラで私を包んでくれる。
「……ちょっと色々あって」
「良かったら話聞きますよ」
そうだ、前にも思ってたんだ、私。
この人の笑顔に惹かれていたんだ。
眩しくて温かくてどこか懐かしいこの人の笑顔に。
「はい!ぜひ聞いて欲しいです!」
二つ返事で私は大きく頷いた。
「と言うことなんです!」
遠くで楽しそうに遊んでいる子供達の声がする。
商店街を抜けた小さな公園のベンチに腰掛けて私は、フィクションを交えながら、ランドールさまへの思い、そして、今の自分の気持ちを話した。
「…なるほど…。簡潔にまとめれば自分の気持ちが分からなくなっている、そう言う事ですか?」
「はい!」
うん、間違ってない。
肝心なところは伝えられなかったけど、言いたい事は伝わってて良かった。
かなりはしょって伝えてしまったし、私、人に話す事がとても苦手なのでうまく伝えられたか不安だったけど、何とか伝わって良かった。
まさか、前世に想いを寄せていた相手が次元違いで自分に会いにきてくれたとかそんな事言えるはずないし。そんな非現実的な事信じてもらえるはずもないし。
「ふむふむ。まぁ、人間ってそう言うモノなんじゃないですか?特に人を好きになると言う気持ちは未知数ですから…。僕なんて今だに彼女もいないですし…って自虐用語でしたね」
ポリポリと頭をかきながら、うーんと首を傾けた。
「でも、一番大切なのはいつでも自分の気持ちですよぉ」
転がってきたボールを子供に返し、こちらを向いた。
「だから…、オレはいつでも自分の気持ちに正直に生きてきた」
「え?」
一人称が変わったから驚いた訳じゃなく、目つきも変わった気がする。
この雰囲気どこかで感じた事がある。
無邪気な中に見せる危うい空気。
誰だっけ?私、この人を知っている!
「これ、また何か合ったら連絡してくれると嬉しい」
すぐにさっきまでの穏やかな表情に戻り、私に1枚の名刺を渡してきた。




