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罪の撤回

ランドールさまのお部屋の中で、サンティエさまと二人きりになった私はぼんやりと空を見ていた。

サンティエさまがクレモン家の当主になって今までのしきたりと変わったこと。

朝礼変わりの朝の顔見せが無くなった。

月末に行われていたパーティーが無くなった。

サンティエさまが今までお住みになっていた、離宮が無くなった。


そして….。


私の処分が無くなった。

私の…死罪は無くなった。


急に決まった事案。どうしてそうなったのかよりも先に私の心は戸惑っていた。

私が死罪じゃなくなったのはきっとサンティエさまが関係しているに違いない。その事が分かるから、これからこの部屋で何の話がされるのか…。

そして。

それが…私にとって喜ぶべき事なのかが分からない。

ランドールさまのいなくなった今、私は生きてる意味など無いと思っていたから。

たとえ、それが汚名の死を迎える事であっても『死』を望んでいた。

確かにランドールさまが誰に暗殺されたのか知りたかったが、知ったところで私に何ができるのであろう?

ランドールさまの復讐?

そう思っていた事もあった、だが、そんな事をしたところで、ランドールさまは戻ってこない。


「まだ浮かない顔をしているな」


ランドールさまと同じ髪型、ランドールさまと同じ装い。

黙っていればランドールさまそっくりだった。

父親の遺伝子がこんなに強く出るなんて、さすが、一代で社交界に登り詰めた男性(ヒト)の遺伝子だと、妙なとこで感心してしまった。

違うところと言えば、身長と瞳の色ぐらい。


「…何故私を助けたのですか?」


「感謝こそされど、そんな事言われるなんて心外だな」


今までランドールさまの使っていたお部屋の中央に置かれているソファーに私は座っていた。

初めて入るランドールさまのお部屋。

ソファー、テーブル、それと本棚。

僅かなモノしか置かれていないから広いお部屋がより一層広く感じてしまう。

ここでランドールさまは何を思って過ごしていたのだろう?

私の事を少しでも思い出してくれましたか?

いつも大勢の人に囲まれながら生活しているランドールさまにとってたった一人になれる場所がこんなにも寂しいとこだったなんて。

ああ…、また泣いてしまう。


「まだ兄貴の事忘れられない?」


「前にも言ったはずです。ランドールさまは私の全てでしたと」


「…過去形だろ?お前だって兄貴がもうここにいないって事実認めてるんだろ?」


「…」


ツカツカと足音を立てて近づき、跪いて私の右手を取った。


「お前に選択権はない、いいかこれは命令だ。オレと結婚しろ」


「…え?」


僅かながら予想していた事だった。

死罪を撤回するために働いた大きな力なんて私の考える限り、サンティエさまが何かしたとしか思えない。

そして、それはきっと…。


「私の罪を払拭するために?」


ぼそぼそと震える声がサンティエさまの耳に届く前に、


「ああ、そうだ」


きっぱりと答えられた。


「お前に断る権利はない」





















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