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思考回路

「純がランドールさま?」


絶対にそんな訳ないって分かってるのに何度も聞き返してしまう。

取り乱す私の姿を見ても、一向に落ち着いたまま身動き一つせずにじっと私を見ている純。

その落ち着きを見ていると私がこうしてヒステリックになる事が分かっていたのでは?と思ってしまう。


「じゃあ今までランドールさまと言ってたこの人は?」


スマホの電源を入れようとして指が震えた。

電源を入れれば何ともないように、いつも通り、ディスプレイいっぱいにランドールさま(くらん)が現れて、あの優しい瞳で私に語りかけてくるのだろう。

そんなランドールさまを見たら一気に気持ちが戻ってしまうのが分かるから。

そして、もう一つの不安要素、今までランドールさまだと思って接していた人が他の誰かだったら?

他の誰かって何?

私が今まで話してた人は一体誰なの?

ランドールさまと信じて想っていたのに。

いや…彼は間違いなくランドールさまよ!

ランドールさまと同じ声、ランドールさまと同じ指先、ランドールさまと同じ眼差し。

全てをとってもランドールさまだったじゃない。

だから。


「やっぱり、あなたがランドールさまの訳がない!」


はっきりと純にたたきつけると、純はそうなる事さえ予想していたかのように、穏やかに答えた。


「リリア、お前はいつも、オレが自分の事を見てくれさえいないって言ってたな。そんな事ない。どちらかと言えばオレの方が先にお前を見付けた」


「…」


純がいつもの純と違う。

こんなに落ち着いて身構えて選んで言葉を言うところがランドールさまっぽく見えてきてしまった。


「…お前が初めてうちの門をくぐった時からオレはお前を見てた」


「…え?」


「ずっと見てたから、お前が厨房に入ってる事も知ってただろう?」


「嘘…」


初めてランドールさまを近くに感じたあの日。

それまで生きていた中で一番大切なあの日。

確かにランドールさまは深夜私が厨房に入る事を知っていたとおっしゃっていた。

でも、それはランドールさましか知らない事、それを純が知っていると言う事は…。

え、ちが…違う。純がランドールさまだなんて思っていないのに。

頭の中をぐるぐると自分の気持ちじゃない思想が渦巻いてる。


音を立てて、ベンチから立った純が急に私を抱き締め頭を撫でてきた。

あまりにも強く抱き締められるから呼吸が苦しい。

けど、純の大きな手はすごく優しくて。


「もっと早くこうしたかった、お前にこうして触れていたかった」


思考回路が停止する。

もう何が何だか分からないけど。

でも。

脳裏にランドールさまの悲しそうな笑顔が浮かび上がる。


「放して」


私は純を突き放した。













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