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さよなら

『おはよう』


スマホ画面からの声は普通にすぐ側に存在しているかのようにランドールさまの声が聞こえるのに。

ここにいるのはランドールさまでは無くやはりソシャゲキャラの紅蘭では無いかと思ってしまう。

前世の事を思い出してから今日まで私は毎晩のように前世の夢を見て現在進行形のように進んでいくけど、彼はある一定の記憶から止まったまま。

いや、前世の記憶が残っているなら!

自分が命を落としたあの日の事覚えているんじゃないのか?


「ランドールさま、ランドールさまは誰に命を狙われているのか分かっているんですよね?」


『それは…』


この話題になるといつもバツの悪そうな顔をするランドールさま。


「貴方は本当にランドールさまなのですか?適当に私をからかっているだけなのでは無いですか?」


『からかう?何でオレがそんな事しなきゃなんねーんだ、オレはお前に会うためにお前ともう一度話すためにここにいるんだ』


「じゃあ、覚えてる限りの事を話してください」


困ったように頭を掻くと、銀色の髪がパサパサと揺れた。


『それが…。あんまり覚えてないんだ』


「え?」


『オレが覚えているのはお前と過ごした時間だけだ。他の事が一切思い出せない』


「どう言う事ですか?デュオやサンティエさまの事も覚えてらっしゃらないと言うのですか?」


『…ああ』


「私に何度も思い出したか?と聞かれたお言葉には貴方と過ごした日々の事だけだったのですか?」


確かにランドールさまと過ごした日々は私にとって…前世の私にとって一番大切な思い出である事に間違いは無い。

だけど、私は前世の事を思い出す度に胸をえぐられるような苦しい気持ちになる。

毎晩毎晩私は前世では無く、今この今をリアルに生きている。

現実を生きているのと同じように悩んだり、心に痛みを感じている。

それなのに、ランドールさまは私との事しか覚えていない。


「私一人でこんなに苦しんでいたって事ですね…」


『ちが、それは違う!』


「何が違うと言うのですか?結局ランドールさまは昔から何も変わっていない。いつも高みの見物で、下にいる人物の事なんて分からない、分かろうともしない。中途半端に人の気持ちを弄んで、こっちの気持ちが本気になったところで、自分には自分の世界があるからと突き放し、何も言わずに私の元から去ってゆく」


そう、いつも見ている事しかできなかった。

伸ばした手が届く訳無いのに。

何度も何度もランドールさまに手を伸ばしていたのに。


『オレは本気でお前の事を…』


じゃあどうしてあの日私の前から去って行ったのですか?

フィアンセって何ですか?


「もういいです、もういい」


私はスマホの電源を消した。







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