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やはり次元…

『おい、次お前降りるんだろう?』


胸元に振動と共に大好きな人の声が響いた。

夢うつつの中で目を開けると、画面越しの優しく笑うランドールさまと目が合った。

私、寝ちゃってたんだ。


『大丈夫か?』


「うん…、また昔の事を一つ思い出した」


『そっか…大丈夫か?』


もう一度同じ言葉を聞いてくれた。


「大丈夫。ランドールさまとの事全部思い出したいから、どんな辛い事でもどんな悲しい事を見ても大丈夫」


それはランドールさまを想っていた私が歩んできた道だから。

大丈夫。

今更学校に戻ったところでもう遅いのだが、千代子の事はもちろん、私のために千代子を追ってくれた純の事が気掛かりだったので駅までは戻る事にした。

純は学校向かったのかな?

私のせいで学校サボらせちゃったらやっぱ悪いな。

なんて思っていたけど、駅に着いて一番最初に目に入った純の姿を見て、私の心配は吹っ飛んだ。


「遅いよぉ、どこ行ってたんだよ?」


平日のド昼間駅前のベンチに学生服で座っている事自体目立つのに長身の体を屈めて、両手に4つのクレープを食べている姿は非常に注目を浴びていた。

ああ、純に心配なんて無意味だった。


「食べ過ぎ」


「一つ食べるー?」


「いらない、千代子は?」


「今日は学校休むって」


「そっか…。まぁ、そうだよね、ありがとう、千代子の事」


「てか、別に追わなくても良かったんじゃない?」


「…」


まぁ、確かにそうだったんだけど…。

反射的に追ってしまった。


「オレ等はどうするぅ?これから学校行く?」


「もうお昼だよ、今更言っても仕方ないよね」


「あ、もうお昼かぁ、それなら一緒にお昼ご飯食べに行こぉ」


どんだけ食べるんだよ。

内心思ったが口には出さなかった。


「そんなにお腹空いてないから、今日はもう家に帰る」


「ならオレも帰る」


一瞬で残っていたクレープを口に頬張り、スリーブをくしゃくしゃに丸め立ち上がった。


「千代子も千代子だけど、お前もまだスマホ依存性なの?」


「…依存性とは違う…」


確かにトイレにもお風呂にもスマホを持って行ってはいるが。

それはランドールさまとほんの少しでも離れなくないから。


「同じだよ。それ手放せないんだろ?」


じっと私の首にぶら下がっているスマホを訝しげに見つめ続けた。


「いい加減それに囚われるなよ。さっさとアンインストールして今を生きろよ」


「え?」


「どうせなら新しいスマホにしちゃえば?」


「私はこのままでいい…」


「冷静に考えてみろよ、次元が違うって意味分かる?」


電車が大きく揺れ、バランスを崩しかけた私の手をぐいと引き寄せられるから結果的に純の胸に凭れる形になってしまった。

わ…不覚にもちょっとドキドキしてしまった。

そっと純から離れた。


「そいつはそこに写ってるだけで何にもできない、お前がもし危ない目にあっても、お前に触れる事すら…下手すれば助けを呼ぶ事もできない。いいか?大事なのは今のお前の気持ちだ」


「…?」


「過去は過去だ」


「じゃあ純は?純も過去に囚われているから私に告白したんじゃない?」


「それは」


違うと強い口調で言うと口を噤んだ。

私は手すりにしっかり掴まり、それ以上は二人とも何も話さなかった。







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