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優しい残酷

ドアの扉の叩く音がする。

ぼんやりとした朝焼けが主の亡くした宮殿を照らしている。

今私は誰のためにこの宮殿に支えているのだろうか?

ランドールさまの暗殺により、宮殿内外慌ただしく人が出入りしている。

いつもなら宮殿内の掃除をしている時間なのだが、私は自分の部屋から一歩も出られずにいた。

昨日からずっと目の痙攣が止まらない。

あれだけ涙を流し、目の水分が潰えてしまったのだろうか?カサカサになっしまい顔に張り付いてるだけになってしまった眼球は景色をよく映さない。

ランドールさまを暗殺したのは私だと思われている事もあり事の真相が分かるまで私はこの部屋から出る事を禁じられていた。

もうこのまま何も見えなくなってしまっても構わない。

ランドールさまのいなくなったこの世界

私は何のために生きているのだろう?

このまま消えてしまいたい。

ランドールさまと過ごしたのは僅かな時間が私にとってどれほど幸せだった事か。

ランドールさま…。

本当にランドールさまはいなくなってしまったの?

扉の叩く音が強くなったり弱くなったりしている。


「おい、いるんだろう?リリア?おい、リリア?大丈夫か?」


扉の向こう側の人物がシビレを切らしたように声を上げた。

大丈夫って何だろう?

何で私はここにいるんだろう?


「開けるぞ」


言葉と同時に扉が開き、ボサボサの髪を触りながらデュオが入ってきた。

ボサボサの髪、無精髭、よれた服装。

いつも身なりには気を付けているデュオにはあり得無い風貌だった。


「大丈夫か?リリア?」


人の心配なんてする余裕ない筈なのに、こんなになってしまったデュオに私は静かに首を振る事しかできなかった。


「大丈夫な訳無いよな…ごめん」


私の前に膝をつき、私の手に触れるその手はとても温かかった。


「今は…何も言えない…。オレもどうしていいか分かってないし。だけど、これだけは言わせてくれ」


握りしめる手に力を込められた。


「オレはお前の傍にずっといる。何があってもお前の傍にいる、ずっと、ずっと。だから…」


もう泣くな。


あれ?もう涙は出ないと思っていたのにまた涙が溢れだしてきた。

デュオが私を元気づけようとしてくれているのは分かる。

だけど、それは、ランドールさまがこの世にもういないと言う現実を突き付けてきていた。

優しい言葉だからなおさら…。

私の心は哀しさで埋めつくされる。

優しさと言うのは本当は残酷なものだなと、私はデュオの手をほどいた。
















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