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暗殺

視線が怖いと思ったのは初めてだ。

ただの視線なのに体が切り裂かれるようだった。

どの視線にも込められている悪意が私を追い詰める。


「あの子がランドール様を?」

「まぁ、恐ろしい」

「ランドール様に一方的に想いを寄せた末、毒殺ですって、思い込みって怖いわね、あんなコランドール様が相手にする訳ないじゃない」


違う、私じゃない!

私はランドール様を…私が……そんな事絶対にあり得ない。

言葉が出てこない。口が開かない。息を吸う事さえ苦しい。呼吸ってどうするんだっけ?

行き交う人々の冷罵な言葉が更に私を追い詰める。

何がどうなってこうなったの?

どうしてランドール様がお亡くなりになったの?

泣きたい時に限って涙が出てこない。

涙が出てこないと言う事はまだこれが事実だと心が認めていないのだろう。

それより今はやるべき事がある。

ランドール様を殺めた犯人は間違いなく私じゃないのだから、犯人を、犯人を…。


「お前がそんな事する訳ないよな」


いつもの凛々しくも暖かい低音の声域で迎えてくれるランドール様の傍に歩みを進めた時、ガラッと空気が変わった。

一瞬にして空気が張り詰め息をするのも苦しい。

この状態で息を吸ってしまったら、緊迫している肺が破裂してしまうのではないか?

手の平が生温かい…。


「きゃっ」


ドロドロとしたモノが目の前のランドール様と私の手の平を赤く染める。



「イヤーーーーーーー!」


自分の叫び声で目が覚めた。

震えが止まらない。

汗でびちゃびちゃになった手の平を握り締めていると、先程の夢がよみがえってくる。


私がランドール様を…私がランドール様を…。

純にそんな事を言われてから心から否定しているのに、体のどこかに残っている記憶が私を揺さぶる。


イヤ、そんな事絶対にある訳が無い。


『どうした?』


スマホの画面が光り、眉間にシワを寄せたランドール様が目を覚まし、声の出ない私を見て、深く息を吐いた。


『思い出したんだな…』


小刻みに震える体に力を入れ首を縦に動かした。


『くそ!今すぐお前を抱きしめたいのにこんなところからお前を見ている事しかできねー、くそ!』


スクリーン画面がパチパチと短い光りを放つ。


『あれは絶対にお前じゃねー、オレの命を狙ってる誰かの仕業だ、それを全部お前のせいにしてお前の命まで奪った』


「…ランドール様は心当たりが?」


『ああ…でも証拠が少なすぎる、すまない、お前をこんな目に合わせて、お前を守る事ができなくてすまない』


「……ランドール様はこうなる事が分かって私を…」


遠ざけたのですか?…。


ああ、私はどうしてこんなにも愚かなのだろう?

自分の気持ちしか考えていなかった。

ランドール様はこんなにも私の事を考えてくださっていたのに。

ランドール様を殺めたのは一体誰?

昔の記憶に自分の意思を持つ事ができたら…。

そんな事できない。

なら、もう犯人を見付ける事はできない…?

いや、そんな事はない。

もしかしたら、今のこの世界で蘇る記憶を辿っていけば、犯人を見付ける事は可能かもしれない!


「ランドール様、私は昔も今も心から貴方の事を慕っております、その気持ちに嘘偽りございません」


ランドール様は驚いたように目を丸めたが、すぐに優しく画面に向かい伸ばす手の上に私の手を重ねた。

















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