真実とは…
人の幸せって何だろう?
そんなの誰も分かる訳がない。
それは人それぞれで、ただ生きてるそれだけで幸せを感じる人がいれば、生きてるだけで不幸を感じる人もいる。
そして、今の一瞬まで幸せを感じて生きていたのに、不用意な相手のたった一言に心を奈落の底まで落とされる事もある。
「今何て言ったの?」
今日は朝からじめじめとした湿った空気が広がっていた。
癖っ毛の私の髪が雨雲が近付いている事を教えてくれている。
そうか、そろそろそんな時期、一年で一番嫌いな季節が始まるのね…。
遠くから運動部の声が聞こえる校舎裏、壁に後頭部を預けていた純がめんどくさそうに口を開いた。
「だーかーらー、ランドール様は誰かに暗殺されて、お前はその犯人にされてたのー」
え?え?え?何言ってるの?
純の言葉1つも理解できない。
教室で純に呼び出された時から何となくイヤな予感を感じてた。
ランドール様が暗殺…?何?
あれ以来まともに話した事無かった純から急な呼び出しを受け、行くべきか悩んだ挙げ句渋々この場所に来た途端に、ランドール様の名前を出してきたものだから、私の予感は当たってしまったなと半ば後悔しながら最後まで話を聞く事にした。
「ランドール様はお前の記憶の事しきりに気にしてたりしないか?」
そう言われれば、ランドール様は事ある毎に私に、まだ全て思い出した訳じゃないんだなとか『記憶』とか『全部』と言うワードを出してくる。
私に思い出して欲しくない事って何があるんだろう?
考えていたらこめかみから鈍い痛みが伝わってきた。
サンティエ様の事もだいぶ辛かったのに、それとは訳が違う。
「その後お前はランドール様を暗殺した罪で処刑されたって訳」
「え…?」
私が処刑…?どう言う事?
いや、そんなのはどうでもいい!
肝心なのはランドール様が誰かに殺められたと言う事…。
それが事実なら…。
私は…。
「お前泣いてんの?」
純の言葉ではっとした。
私の目から止めどなく涙が溢れてくる。
「どうして、ランドール様が…?」
「一月後に挙式が決まっていたランドール様を嫉妬に狂ったお前が毒殺したって。世間的にはそう言われてる」
「…毒殺…?」
「夜食のリゾットに毒を入れて殺したって…」
リゾット!
「そんな訳無い!」
よりによってリゾットにだなんて。
先日の会話が思い出される。
『お前のリゾットが食いたい』
今だに私のリゾットを食べたいと言ってくださるランドール様に、毒入りのリゾットを作るなんて。
背筋に悪寒が走った。
そんな事ある訳がない!
そもそも、私がランドール様を殺す動機が…。
ランドール様の挙式?
確かにそんな噂あったし、その事で心が苦しかった事もあった。
だけど、それが動機になるなんて事ない。
「気持ちは分かるけど泣くなよ…。オレさ、お前に泣かれるのが一番辛い」
「…ごめん」
それしか言えなかった。
頭の中がごちゃごちゃで何1つまとまらなくて。
無言のまま純が差し出したハンカチを受け取った。




