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デート

『いい天気だな、空が高い』


公園の噴水広場前に設置されてに眩しそうに眼を細めるランドール様の隣ベンチに腰掛けた。

二人がかりのベンチにスマホの隣に座っている私達は周りからどう写っているのだろうか?

ま、今の世の中他人がどうしていようが気にする人はあまりいないが。


『それはそれで寂しくないか?』


ランドール様は予想外のお言葉を言った。

ランドール様はあの頃どんな時も、ただお食事をされる時も、眠る時でさえ視線から逃れる事ができないお立場だった故、人に関心のない今の世の中の方がランドール様にとっては幸せなのでは無いかと思ったが、ランドール様は小首を傾けて続けた。


『確かに何をしても誰の目が気にならないのは願っていた事だが。他人に関心が無さすぎるのも悲しくないか?』


「うーん…」


ランドール様の言葉はよく分からなかった。

さして自分の事興味無いのにぐいぐい聞いてくる近所のおばさんとか、勝手な印象で自分の価値観を押し付けてくる級友とか。

そう言う人達の事考えたら、誰にも構われない方がずっと楽な気がして。

それでも、全く人は人に興味を持っていない訳ではない。

もし、ここで助けを求める誰かがいたらきっと手を差しのべてくれるだろうし。

目に入っていなくても、瞳に映ってはいるから。


『人との繋がりが希薄になっていくと巡り会うべきだった人間にも気付かず通り過ぎてしまうかもしれない』


またしてもランドール様が予想外の言葉を言うものだから、スマホに写っている彼の顔を穴が開く程見てしまった。


『な、何だよ!オレ変な事言ったか?』


「ううん、ただ驚いただけ。ランドール様がそんなロマンチックな事を言うなんて思いもしなかったので」


『何つーかさ、オレお前にまた逢えた事、今でも夢なんじゃないかと思う時がある。一瞬でも目を離したらお前がいなくなって、あー、やっぱり今までの事は夢だったんだ、幻だったんだって。なるのが怖くてずっと見ていたい』


「…」


『とか言って普通に寝ちゃう時もあるがな、不思議だよな、オレの体、肉体がある訳じゃないのに眠くなるし、腹が減る時もある。生まれ変わる前に感じてたほどじゃないが。それでも、以前と同じ暮らしをこの中で過ごしてる。それなのに、お前に触れる事ができない』


「…ランドール様…、でも、こうしてまた出逢えてこうしてランドール様が隣にいてくださる、それだけで私は幸せです」


ちょっと無理して言った。

本当は私もランドール様に触れたい、触れられたい。

ランドール様の側に行きたい。

あの頃からその気持ちは少しも変わっていない。

私はずっとランドール様の近くに行きたかった。


『お前のリゾットまた食いてーな』


「リゾット…あ!」


『どうした?』


「私、お料理と言うお料理を今まで作った事ない!」


『え?じゃああのリゾット作れないのか?』


どうしよう?

ランドール様と繋いでくれたリゾット、私作れないかもしれない。


「ランドール様との大切なリゾット!作れるよう頑張ります!」


何としてでも作らなきゃ。

私は立ち上がりランドール様に向けてガッツポーズをしてみせた。

ほんの少しだけ周りの視線を感じた。






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