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悪夢

気が付くと外は既に真っ暗になっていた。

自分の部屋の窓の外からは星が見え始めていた。

ちょっと目を閉じようと思ってただけなのに。

あれ?手が震えてる…。

小刻みに震えた指先が私の記憶を思い起こさせてる。

枕元に放置していたスマホ画面から心配そうな顔で私を見ている銀色の目と目が合う。


「サンティエ様…?」


途端に恐怖が襲う。

そうだ、あの時、私、サンティエ様に監禁されていたんだ。

どうして、サンティエ様が?

壁際まで下がり頭を整理していた。

あんなに無邪気で愛らしかったサンティエ様にあんな一面があったなんて。


『どうした?何があった?』


ランドール様の目の中にサンティエ様の姿が映る。

ナイフを片手に持ったまま軽蔑の目を私に向けたサンティエ様…。

サンティエ様は私に何をするつもりだった?


『何か見たのか?何かあったんだろう?』


ディスプレイから鈍い音が続いている。


『くそ、どうしたらここから出れる?おい、大丈夫か?』


ランドール様が画面を拳で何度も叩いていたのだ。

その姿を見て恐怖が消えてゆく。


「ごめんなさい、ランドール様…何でもありません」


『何かあったんだろう?』


「悪い夢を見ておりました」


『……、過去の記憶か?』


「……、きっとただの悪い夢です」


夢だと思いたかった。夢だと信じたかった。


『…、ちゃんと顔を見せてくれないか?』


そっとスマホを手に取ると慈愛の瞳がこちらを見ていた。


『口惜しいな。こんなガラス窓さえ無ければ今すぐにでもお前の事を抱き締められるのに』


「ランドールさま…」


『考えたらお前にばかり辛い目に合わせてるな。すまない』


「ランドール様のせいではないです」


『ただお前と一緒にいたいだけなのにな、どうしていつの時代もそれが許されないか…』


目が熱くなってくる。

幸せで胸が張り裂けそうで、それでいて切なくて。

ああ、こんなにもランドール様の事を愛しく思っているのに。

スマホを抱き締めるとランドール様の声が胸から聞こえてきた。


『おい、これじゃお前の顔が見えないぞ』


「これでいいんです」


このままでいたい。

決して触れられなくても、決して一緒に歩く事ができなくても。

こうしてランドール様を近くに感じる事ができるから。

ランドール様の事が好き過ぎてすごく幸せだった。


「大好きです、ランドール様」


『…オレも愛してる…』


そこで、ランドール様は一息つき。


『これから何があってもオレの気持ちは変わらない。だから、何かあったらすぐに話して欲しい、今後…いや、何でもない。もう一度顔を見せてくれ』


優しくて暖かいランドール様の笑顔にサンティエ様の片鱗が映った。

















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