離宮の中で
『今日はやけに無口だな』
自分の部屋のベッドで天井を見ながら、今朝の純からの告白について考えていた。
ランドール様の声は耳には届いていたが頭の中には入ってこない。
何かここ数週間の間、三人もの人に告白されてるのか…。
(まぁ、そのうち二人は産まれる前の事だが)
そして、一人からの失恋。
色々な事がありすぎた上での初恋の人からの告白がきてしまい頭が追い付かない。
ドラマとかアニメで初恋の人からの告白シーンとか見ると、する方のタイミングが何か悪すぎて、もっと早く告白しとけばうまくいったのでは無いのかと思っていたが、実際にこのタイミングで告白とかされると、純が告白してきたのがランドール様の想いに気付く前の私だったら?
純と付き合ってた?
分からない、結局イフの世界は存在しない。
考えてたら疲れてきて瞼が重くなってきた…。
今何時だろう?
頭が重い…。あれ?私いつから眠ってた?
目を開けると目の前に…、あれ?サンティエ様がすぐ目の前にいた。
ここは…?
起き上がると頭に猛烈な痛みが走った。
お休みの日に寝過ぎた感じの痛みに似てはいるがそれとは異なる痛み。
ここ離宮だよね?私、何でまだここにいるんだろう?
床にはサンティエ様の髪の毛がまだ散らばっていた。
「おはよう……と言ってもまだ夜だけどね」
ベッドの横の椅子に座っていたサンティエ様はフルーツナイフでリンゴを剥きながら笑顔を見せていたが、暖炉の炎の揺らめきがそう見せるのかサンティエ様の表情に陰りが見える。
だからだろうか?サンティエ様の雰囲気がいつもと違って見えた。
「私…。どうしてここに?」
どのぐらいの時間ここにいたのだろう?
と言うか私は何で眠ってしまったの?
「部屋に戻らないと…」
立ち上がろうとする私の肩にサンティエ様の手が乗る。
「もう戻らなくていい。オレとずっとここにいろ」
あ…。そうだ、記憶を失う前サンティエ様は私にずっと自分の側にいろとおっしゃっていた。
そうだ、いつもの無邪気なサンティエ様からは考えられない程の無言の圧で私を縛ったんだ。
「何をおっしゃっているのですか?本日の仕事もまだ残っているはず…」
「そんなものどうでもいい。これからはお前はオレだけのもんだって言っただろう?お前が望むならオレは兄貴になれる。ほら見てみろ?この目もこの鼻もこの口も兄貴にそっくりだろう?」
「…」
確かに父親が同じなのだから、サンティエ様はランドール様によく似ている、だからと言ってサンティエ様がランドール様と言う事ではない。
「どうしても出て行くと言うのなら…」
そして、手に持っていたナイフを高く突き上げると、狂気に満ちたシルバーの目がナイフの反射でギラギラと光っていた。
ゆっくり手を降ろし私の頬にナイフをつけた。
「これ以上オレを失望させるな」




