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幼馴染み

画面越しの恋は幸せか幸せじゃないかと

聞かれたら、多分幸せだろうと答えるだろう。

多分と言う単語の中には私の複雑な心情が込められている。

普通のソシャゲのキャラへの恋ならログインしなければスマホとしての機能は成立している。

だけど、私の場合はランドール様が現れてからスマホの機能は死んでしまったので、今の私は現代世界から取り残されている気がする。

初めは不便で仕方なかったこの生活、本当自分はスマホが無いと何もできないんだなと。

歯医者の予約を取り消す時に電話番号検索したり、明日の天気を検索したり、そして、テレビを見てる時も家族とご飯を食べている時さえ意味も無くスマホをいじったりしていた。

確かに今もランドール様と話していたいからスマホを肌身離さず持ち、画面を見てはいるけど以前より寝つきが良くなった気がする。


「おはよ」


玄関を開けると純がそこにいた。

純はあれ以来普通に毎日迎えに来る。

何事も無かったように私の前に現れる。

純はそんな風にできるけど、私の頭はずっとモヤモヤしてる。

純の中途半端な態度にモヤモヤが消えない。

あれ以来ランドール様の事にも触れなくなっていて、それが逆に気持ち悪い。


「昨日の課題写させて」


「うん」


いつも通りの会話。

満員電車の中でさりげなく人混みから私を守ってくれる優しさもいつも通り。

ドアに片手をついて長身を屈ませて私の声を聞気逃さないように耳を傾けてくれている。


「オレに何か聞きたい事あるんじゃない?」


見上げた私の目に映る純は昔から自分の知っている純で間違いない。

彼の中に私の知らない純がいるとしたら。

聞いてみたいけど、真実を確かめるのは怖かった。


「え?別に何もないよ」


「ふぅん。ならいいけどぉ」


隣を通過する電車とぶつかった時、『でも…』と小さく続けた。


「オレはお前に言いたい事あるけど」


「ん?」


じっと私の目を覗き込み優しく笑った。

その顔を見て胸がドクンって動いた。

小さい頃からずって見ていた純の目。

こうやってはっきりとしゃべる時の純は大事な事を話す時だった。

小学生の頃、些細な事でクラスでいじめられた時も純が守ってくれた時もいつもののらりくらりとした純じゃなかった。

幼馴染みと言うだけで、周りから付き合ってるんじゃないかと勝手に噂され冷やかされ困っていた時も純がはっきりとみんなに否定してくれて私の居場所を守ってくれた。

だから、私は次に出てくる純からの言葉を静かに待った。


「オレ……、ずっとお前の事好きなんだけど」


……、何となく予感はあった。

もしかしたらと思った時もあった。

でも、それは私の思い過ごしだと思ってた。

純は私の初恋だから。

だから、純も私の事を想ってくれてたらいいのにって、自分勝手な思い込み。

だから、こんな風に実際に想いを告げられると何て言っていいか分からない。


「大丈夫、ずっと言いたかっただけだから、気にしないで、オレはこのままでいいから」


純は私の頭を何度か撫でてさっきとは違う儚い笑顔を見せた。






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