ふたたび告白
窓を叩く雨の音で目が覚めた。
頭が重い。目尻が痛い。
私は私は今何を見ていた?
月明かりの中で見たあの人のお顔も会話もリゾットの香りでさえはっきりと覚えてる。
あれは夢なんかじゃない!
「お、今日は起きるの早いな」
もはやアラーム変わりになっていた紅蘭がスマホの向こう側から眠たそうな顔を覗かせている。
「……、紅蘭、あなたは一体誰?」
「……」
紅蘭は目を大きく開けて真っすぐに私を見た。
「思い出したのか?」
「…うん」
こくんと首を縦に動かした。
私は紅蘭…ランドールさまの事をずっと前から愛してた。
どうしてこんなに大切な事ずっと忘れていたんだろう?
思い出してしまったらもう止められない、こんなにも彼が愛しい。
「あなたはランドールさまなのですね?そうなのですね?」
こんなに近くにいるのに触れる事も言葉さえ届かない。
ああ。それはずっと昔から変わっていなかったね。
ずっと昔からランドールさまには私の気持ち届かなかった。
「お前の事ずっと探してた。ずっとずっと会いたくて、やっと逢えた」
夢から覚めたばかりなのにまだ夢の中にいる感覚。
「やっと見付けてやっと出会えたのに、声も届かねぇ。届いてるのか?お前の声が聞きてぇのに全く聞こえない…。お前もこんな想いをしてたんだな」
そう、毎日毎日見ているだけの日々。
とても遠い存在だった。
言葉を交わすどころか目を合わせる事もできなかった。
「くそ、何だよ、このガラス窓は?」
拳で画面の向こう側を何度も何度も叩く音がこっちまで聞こえてきた。
考えてみたら私たちの間を塞がっているのはこんなに薄いディスプレイじゃない!
こんなディスプレイ、昔の距離に比べたら全然大した事ない。
私は手の平を画面に当てた。
ここに彼はいる。
「ねぇ、ランドールさま聞こえますか?」
私の声。
随分時間が過ぎ見た目も全部変わってしまったけど、私の気持ちは変わっていない。
拳を開いた彼も私の手に自分の手を合わせられた。
温かい…、それがぬくもりなのかただ単に機器の熱なのかそんなのどうでも良かった。
「このようにまたお逢いできて私は至極幸せです…」
涙が出てきそう。体が勝手に膝まずいてるし。
溢れでた想いが止まらない。
「ずっとずっとお慕いし申しておりました」
あ、これって今朝の夢と同じ言葉じゃない!
あの後、あれ?あの後どうなったんだっけ?
「……全部思い出した訳じゃねぇみたいだな」




