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告白

ランドールさまはいつもキラキラしている。

これも言葉のアヤでは無く、本当にもいつとキラキラしているだ。一つ一つの所作を行うだけで、その動作の周りにキラキラって小さな星のようなものが飛び交っている。

ランドールさまはいつだって自分に自信を持っているから、そう言う思いはとて も大切なモノだから、それがまたランドールさまの輝きになる。

秀でるモノが何一つ無い私自身には一生生み出せないキラキラ。

そんな私がランドールさまに気付いて貰えるなんてそんな事ある訳ない。

ランドールさまと同じ空気を吸うのもおこがましいぐらい小さくて小さくて吹けば飛んでしまいそうな小さな私の存在。

そんな私がランドールさまに恋する事自体、分相応もいいとこ。

だけど、仕方ないじゃない。気付いたら好きに…、ううん、好きになるって初めから分かってた。

初めてランドールさまを見た時に、私はこの人の事を好きになるって。


「おい、おい。おい聞いてるのか?リリア」


もうどれ程の時間(とき)が流れたのだろうか?

月明かりの中、こちらを見つめるシルバーグレイの瞳も凛とした佇まいも銀色のちょっと癖のあるヘアスタイルも、響く低音の声も…、ただそこにいてくれるだけで優しくなる空間も、全部全部好き。全部大好き。

久々に深夜の厨房に現れたランドールさまを前にして、言葉を失った私は呆然と彼を見る事しかできなかった。

どうしてしばらく姿を見せていただけなかったのか?元気でしたか?とか聞きたい事はたくさんあった。

だけど…。

何も言えない。

言葉を発した途端この空間が崩れ落ちてしまいそうで。

もう少しもう少しでいいからこのまま時間を止めて欲しい。


「リリア、おい、リリア」


でも。

ランドールさまの吐息と共に溢れる言の葉は今この時間(とき)が簡単には壊れないと教えてくれた。


「ラ、ラ、ランドールさま!」


「腹減った、何かあるか?」


ランドールさまのお側に近付いた私の上を変わらない言葉が降ってくる。

ああ、本物ののランドールさまだ。

初めてこの厨房にお姿をお見せになった時と同じぐらい私の心臓はドキドキしている。


「今すぐ作りますね!何がいいですか?」


「リゾット」


「はい、畏まりました」


いつランドールさまがお越しになられて、いつリゾットをご所望になられてもいいようにいつも用意はしていた。

お野菜を細かく刻んで、よく熟成されたチーズを容器から取り出すとつーんと強い香りがした。


「ずいぶん機嫌がいいようだな」


「え?」


「鼻歌…こっちまで聴こえてるぞ」


「え…」


私ったら知らない間に鼻歌を歌っていたなんて。

そこからは静かに調理を済ませ、ランドールさまが召し上がるさまをじっと見ていた。

本当にキレイなお顔…。非の打ち所が無いとはこう言うことね!


「ごちそうさま、美味しかった、ありがとう」


口元をナプキンで拭きながら立ち上がるランドールさま。

ああ、もう少しでまた遠くに行ってしまう。

何とか何とか気を引かせたい。

何かいい言葉は無いだろうが…。

私が一生懸命言葉を考えているとランドールさまの方が口を開いた。


「今までありがとう」


「…?」


「お前に会えて良かった」


「…え?」


何?胸がザワザワする。

一向に変わらないランドールさまの表情からは何も読み取れない。


「え?ランドールさま?」


「もうここには来ない…」


「え?」


何て言われました?

モウココニハコナイ…。

え?


「え?どうしてですか?」


月が隠れ厨房の中がより一層暗くなる。


「お前のリゾット本当にうまかった…」


「…」


どうして?どうして?そんな事言うんですか?

私、まだ何も言ってない。

このまま行かせてしまっていいの?

焦る心が言葉になる。


「私、私、ランドールさまの事をお慕い申しておりました」


雨音が激しく窓を叩きつけた。















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