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ゲームソフト

「リカってビミョーに時間ルーズだよね!」


いつも通り駅前の広場で待ち合わせの時間に5分遅れた私を通常運転で遠回しに非難する千代子。

今日はクラスメイトである一ノ瀬千代子とショッピングをする名目で待ち合わせをしていた。


「5分ぐらいって思ってるからでしょ?毎回毎回5分待たされるこっちの身にもなってよ、それが10回続いたら約一時間リカの為に無駄に使ってるんだよ!」


「だからー、ごめんってば…。てか、何でまたあんたがいるの?」


うんうん、と腕を組みながら私達やり取りの成り行きを見守っている私、巻田リカの同級生を見上げた。


「えー、いちゃダメなのー?幼馴染みなのにー」


男らしくない舌足らずなしゃべり方が癇に障るものの、それよりも千代子と待ち合わせにいつもついてくるこの行動が理解不能でできる限り関わらない方が無難だろう。

天崎純。

私の家のすぐ近くに住む何考えてるか分からない同級生。


「こんな奴放っておいて行こ、千代子」


「え?あ、うん、でも、せっかく来てくれたんだし」


「千代子がそう言う事いうからこいつがつけ上がるんだよ!」


「でも、純くんちゃんと時間通りに来てるし」


「……って、そもそも何でこいつが私達の待ち合わせ時間知ってるの?」


「てへ」


自分の頭をコツンと叩きペロっと舌を出す姿を見て、密通者の正体が分かった。

さっきから、ちらほらと人の視線を感じる。

千代子と一緒にいる時いつも感じる不純な視線。

10人の人に千代子の容姿に点をつけてみてと言ったら、10人中9人が満点をつけるだろう。

そのうちの一人は多分何に対しても曲がった答えしか出さない人間だと思う。

小学生の時から高校の今までずっと千代子と一緒だから、千代子の可愛さは誰よりも知ってる。

外見だけで無く性格も声も何もかも可愛い。

それをひけらかすことなく生きてる千代子はこれまで何人もの同級生に告られたりしたけど、今まで誰とも付き合った事は無い。

それはきっと…、私のただの勘違いであって欲しいんだけど。

歩いている間も私と話してる間も千代子はいつも背伸びをするような姿勢で純を見上げてる。

あんなに顎を上げていたら首がつるんじゃないかと思ってしまうほど。

千代子があんなキラキラした目をして見つめる相手が純だなんて認めたくはないが…。

そんな姿見てたら長身のマスクをした人に思い切りぶつかってしまった。


「あ…すみません」


ペコリと頭を下げ、どんどん距離が離れる千代子を

追い掛けた。


「ねぇ、ちょっと待ってよ?ねぇ、リカ?」


気付かぬうちに二人より遥か先を歩いてしまっていた。


「あ…ごめん」


「リカって集団行動向いてないよね」


「ごめん」


通りすがりのビラ配りをしていたお兄さんから受け取ったチラシを静かに見ていた千代子がそれを私に渡した。


「リカ、乙女ゲーム好きだよね?これ最新のソシャゲらしいよー」


あ、確か、それ…。

乙女ゲーム内でも有名なイラストレーターさんと脚本家さんがタッグを組んだって話題のやつ。

しかも、発売元がそのゲームをリリースするためだけにゲーム会社を立ち上げたとかで話題になってるやつ。


「うーん、今容量いっぱいなんだよねー、しかも三つのソシャゲに時間とられ過ぎてて」


手に取りそのイラストを見た瞬間手から脳に電流が走ったように動けなくなった。

銀髪のシルバーの瞳の貴公子。


「このシルバー瞳の貴公子がこのゲームのメインキャラっぽいね」


千代子の声がゆっくり耳に入る。

このイラスト…この人…どこかで見た事ある…。

って言うのも変だけど、あれ?何だろう?


「無理ならやめれば?」


私からゲームを取り上げた純はそのチラシを見ると、一瞬目を見開いた。

その時何か違和感を感じた。


「え?でも」


「こんなの気にすることないよ、早く行こう」


珍しく純のはきはきとしたしゃべり方にも驚いたけど、あの時イラストを見たあの瞬間、目を見開き唇を震わせたのは見間違えではきっと無い。











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