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愛しい気持ち

そうだ、私…、少なくとも夢の世界にいる私は彼に恋してた。

こんな事信じられる?

毎晩夢に出てきた相手に恋してただなんて。

何度も何度も自分で言ってたじゃない、夢は自分の潜在意識の中の世界だって。

ただ理想の人を描いて作ってるだけだって。

電車が揺れる度に窓に映る自分の姿が少しづつ変わってゆく。

浅黒い肌が白くて繊細な肌に、栗色の髪が赤髪に、真っ黒な瞳が碧色の瞳に変わってゆく。

これは夢の世界の私。


『ようやく思い出したか?』


「…分からない」


正直、分からない。

ただ、あの人への愛しいと言う感情は自分の気持ちだ。

ただ見ている事しかできなかった。

私達の間にそびえ立つモノは身分が違い過ぎ、目を合わせる事なんてましてや言葉を交わす事なんて叶わない事だった。

だけど、その想いが自分自身のモノなのかはまだ分からない。


「紅蘭、あなたはどうしてそこにいるの?」


このゲームをインストールしたのは私の意思。

ゲームをインストールしなければ紅蘭に出逢う事もなかった。

そもそも千代子がインストールした際には紅蘭と言うキャラクターはいなかったのだから。


『不思議なもんだよな、こうしてお前の側にいるのにお前と言葉を交わす事もできない、辛いな…お前はずっとこんな気持ちだったのか』


紅蘭の言葉を聞きながら夢の私の心情が涌き出てくる。

そう、私はずっとあなた様とお話がしたかった。

私は…。


「ねぇ、聞いてる?ねぇ?次降りる駅でしょ?」


肩を叩かれ、はっと我に返る。

気が付くと純がそこにいた。


「何ぼーっとしてんの?」


「あ、うん、ちょっと…」


「またゲーム?そんなゲームやめちゃいなって言ってるじゃん?ただのソシャゲでしょ?ソシャゲに時間かけるなんて人生の無駄無駄」


そう言って私のスマホ画面をじっと見ていた。


「いつまでこんなゲームに振り回されてんの?こんなのアンインストールしちゃえばいいだけじゃん?」


「え?」


「だって、このせいでスマホが使えないんでしょ?スマホの機能果たしてないじゃん」


「ああ、それは確かにそうなんだけど…スマホに縛られないってなかなかいいもんだよ」


そう、紅蘭がスマホに現れる前は必要無いのに暇さえあればスマホをいじってしまい、意味の無い時間を過ごしていた。

最近は眼精疲労に悩まされる事も無くなったし。


「オレはそう言う事を言ってるんじゃないの!こんなのに振り回されるなよ!」


「純?」


感情を露にしない純がこんな風に声を荒げる事に驚いた。

数人の乗客がちららほらこちらを見たものの、関わりたくないと言う感じで見てみぬ振りをしていた。


「ああ、もういいや、もう言う」


純はそこで小さく息を吐き、右手を車窓に置き、腰を落として目線を合わせた。

え…。

甘い香りが鼻をくすぐり、思わず息を呑んでしまった。


「オレさ、ずーーーーっと前からお前の事好きだった。オレと付き合ってくれない?」

























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