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切ない気持ち

「おい、オレの声聞こえてるか?」


スマホから永遠に私を呼び掛けている低音ボイス。

文字通りこやつ紅蘭が私のスマホを乗っ取ってしまったためスマホのホーム画面も他のどの画面を開いても紅蘭しか写っていない。

これは思ったより厄介だぞ。

SNSを見ようにも紅蘭が写っている。

紅蘭が被ってないとこだけ表示されている文字の羅列は最早暗号文にしか見えない。

自分の部屋のベッドの上でゴロゴロしながらずっとスマホを見ている。

こんなのソシャゲの域を越えてる…。


「はいはい、聞こえてますよ」


と、スマホに向かって言ったところで、向こう側には全く聞こえてないようで。


「何でオレの声が届かないんだ?オレからはお前の姿は見えてるのに。声が届かない」


と、こんな会話?の繰り返し。

これを今日1日中やっている。

会話ではなく向こうが一方的に喋っているだけだが。

暇があればスマホをいじっている事しかしていない私にとってこれはかなりのストレスだ。

純の言うようにアンインストールしてしまえばこんなストレスを感じる事は無いのだろう。

だけど…。


「これじゃ、やっとお前に会えた意味ねーじゃん、ずっとずっと探してやっと会えたのに」


紅蘭の言葉が気になってしまい躊躇してしまう。


「お前もこんな気持ちだったんだな、お前言ってたもんな。どんなに近くにいても距離を感じるって」


ドンナニチカクニイテモ…?

シルバーグレイの瞳がはっきりと私を写した。


あ…。

どんなに近くにいても近付けない存在。

言葉を交わしたいのに、触れたいのに、見つめあいたいのに。

何一つ叶う事は無かった。

脳裏に見た事ない景色が浮かぶ。

英国風のお屋敷の中、螺旋階段に威厳ある風格で下を見下ろす人が見える。

シャンデリアで顔が見えない、けど、私、この人を知っている。

こんな場所見た事も行った事も無いのに。

私この人を見てそんな気持ちになった事がある…。

悲しい、切ない、形容しがたい感情が涙と一緒に溢れだしてくる。

分からない、これは自分の感情なのか?

こんな気持ち初めてで。

胸が苦しい。


「どうした?泣いてるのか?」


「……、分からない」


「思い出したのか?」


…、紅蘭はずっとそう言ってる。だけど、私には分からない。

この涙の意味もこの気持ちの意味も分からない。

分からないけど、知りたいと思う。


だから、まぁ、とりあえずこのままインストールしとこう。
















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