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居場所

「もしオレがリリアの事好きって言ったらオレの事好きになってくれる?」


サンティエさまのお言葉が頭の中をいっぱいにしてクルクルクルクル永遠に回り続けている。

赤くなった耳を隠すよう右手を頬に当てた彼は静かに私の返事を待っていた。

真っ直ぐに自分に向けられた視線はランドールさまとそっくりで。

こんな場面にそんな事を考えてしまう私って最低だと分かっていてもどうしてもランドールさまの顔が浮かんでしまう。それは仕方のない事だと自分に言い聞かせる。

だって、いつもの子供染みた表情からは想像できないぐらい、真っ直ぐに向けられた視線はますますランドールさまにそっくりで、頭から消そうとすればする程鮮明にランドールさまを思い出してしまう。


「リリア、今何を考えてる?」


「あ…その…」


言葉に詰まる私を見て、ふぅーと小さく息を吐いてから宮殿に眼をやり話し始めた。


「本当の自分って何なんだろう?オレ、あそこにいるとそれが分からなるんだ、みんながオレの事どう思ってるか空気で感じとってしまうから。それでも周りに合わせて適当に過ごしていれば何事も無いようにそこに溶け込める。そう、何も考えなければいいんだ、何も…」


サンティエさまの言葉が悲しく胸に響く。

実際私もサンティエさまについて良からぬ噂話しで盛り上がってる人達の事何度か見た事がある。

人のゴシップが大好きな界隈の中でそう言う話しが一番盛り上がるから。

サンティエさまの母親はサンティエさまが産まれてすぐに流行り病で亡くなってしまい、それから周りに味方のいないあの場所でたった一人で暮らす事がサンティエさまにとってどれだけ残酷であったが想像するだけで胸が痛む。


「でも、お前といる時は本当の自分でいられる、オレの居場所を作ってくれてありがとう」


ああ…この人は何て素直に笑えるんだろう。

誰もが自分を演じてる世界、考えてみたら私も相手や場所に合わせて自分を作ってる。

だから…。


「私にはもったいないお言葉恐れ入ります。ですが、私はそのようなお言葉を掛けていただけるような人間ではございません」


私にはそんな分不相応な言葉はいただけない。

今だって、ランドールさまの面影をサンティエさまに写してしまっているのだから。


「そんな事無い。人嫌いなオレが初めて好きと思えた人なんだから、もっと自身を持て!」


「サンティエさま…」


「てか、オレ最低じゃん!何が好きって言ったら好きになってくれる?だ!人の気持ちはそんなモンじゃないのに。いつかお前から好きって言ってもらえるように男として成長する!」


どこまでも真っ直ぐでどこまでも純粋なサンティエさまは自分の気持ちを自己完結で終わらせたようで、背中を向けて着替え始めた。

お礼を言いたいのは私の方です。

こんな私にあんな素敵な言葉を言ってくれてありがとうございます。


「ところでさー」


パッと振り向き、サンティエさまが言った。


「リリア。好きな男いるだろう?」









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