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一話

 僕は今、あるゲームにハマっている。だが世界的に流行っているわけではないし、友達だって誰もやっていない。


 ゲームの話に移ろう。今やゲームはVRの時代だ。ゲームセンターに置いてあるアーケードゲームですらVR技術が使われている。


 そのゲームは近所のゲームセンターに置いてあった。もともとアーケードゲームが好きで、そのゲーセンには通っていたのだけれど、そのゲームはあまり見たことがなかった。馴染みの店員によると先週が稼働したらしい。


 そのゲームの名は「サワークリーム」

VR技術を用いて作られた世界初の格闘ゲームである。


 格闘ゲームは滅びゆくジャンルである。初心者狩りやコマンドやコンボの難解さによって、新規は入って来れず、どんなに強いプレイヤーでもリアルの事情や環境が煮詰まることで飽きて辞めていく。僕はこのゲーセンで、いくらでもそんな光景を見てきた。


 そんな中世界初のVRの格ゲーとして、格ゲーの入り口として、ただの新しい格ゲーとして様々な期待と不安を持って生まれたサワークリーム(通称サワクリ)だったが、やはりというかプレイヤーは少なかった。


 格ゲーをやってる人は大抵すでにやってるゲームを捨ててまで新しいゲームをやる人は少ない。環境が煮詰まり、キャラランクやコンボなどが整理されてから始める人の方が多い。


 そしてVRの要素がなんと足を引っ張っていた。今のこの時代の格ゲーマー達には、殴る経験や殴られる経験が不足しており、キャラの目線で相手を攻撃するこのサワクリは敷居が高かった。


「困っちゃうよね。コマンドがなくて新規に優しいって言うからいっぱい設置したのに新規どころか常連までやんないんだもん」とはこの店の店長の言である。彼はアーケードゲームやゲーセンを愛する心は本物だったが、いかんせん商才が足りないようだ。


 さて店長が嘆いているので起動する。まずボタンやレバーはなく、キャラは自分のイメージと同じ動きをする。だから現実ではいくら運動神経がなくとも、イメージ次第で戦うことができる。


 体力ゲージとプレイングゲージというものがあり、体力ゲージが0になったら敗北する。プレイングゲージは攻撃をしたり、ガードしたり、逆に食らったりなどをすると溜まる。このゲージを消費して超必殺技などを使用できる。


 キャラ数はこの時代の格ゲーにしては珍しく8キャラ。バランスが良く使いやすいトリガー、コンボ火力が優れるアスラ、リーチの長い剣士バース、素早く唯一の女キャラのスイレン、マッチョな投げキャラのロルド、単発火力が高いゴリラキャラリック、カウンター技を持つカンフーマスターのラン、トリッキーな宇宙人のアダムスキーがいる。今後のアップデートでキャラ数は増えるらしい。


 少し触って肌に合ったキャラであるアダムスキーを使ってアーケードモードをやっていると乱入された。相手は同じ店でよく対戦していた「ピーマン」という常連。使っているのはスイレンだった。ピーマンは女キャラが好きなので予想通りだった。


 対戦が始まって、お互いまずは距離を詰める。リーチの面ではアダムスキーの方が有利なのだが、スピードが速いスイレンが先手を取った。私の懐に入り込んで、パンチを食らわせてきた。しかし私も負けてはいない。後方にジャンプして逃げつつ、特殊攻撃の「スペースキック」を当てるがピーマンはガードしていたのでそこまで効いていないようだ。だが「スペースキック」の本当の恐ろしさはこれからである。


 「スペースキック」は相手の方向にオーラを纏わせた靴を飛ばす攻撃である。その後靴は一定の行動をすると操作でき、派生攻撃をすることができるのだ。それを利用して戦うのがアダムスキーである。


 ガードを崩すために靴にワープして靴を回収しながら相手を投げる。これは予想していなかったようで投げ抜けはされずに通る。画面端に追い込んで「スペースキック」。設置した靴からのビームと弱攻撃で相手を固めていく。ピーマンもなかなか抜け出せないが、私もなかなか崩せない。ワープからの投げは先ほどやったので警戒しているだろう。


 少し経ったが、状況はあまり変わらない。なので超必殺技でトドメを刺そう。


 先ほどと同じように靴にワープ。しかし今度放つのは超必殺技の「PLANET STORM」。範囲は狭いが火力が高く、ガード不能の投げ技だ。通常の投げ抜けモーションでは抜けることができないため、ピーマンはそのまま投げられ、体力が0になる。私の勝ちである。


「すごいなあテラマヤ(私の名前)くんは。僕なんかじゃ練習にならないだろ?」

「そうでもないよ。対人戦の経験はまだまだ少ないからね」


 向こうの筐体からおっきな身体をのっそのっそと揺らしながらピーマンが近づいてきた。


「そういえば今度この店(コングラッシュ通称コングラ)でサワクリの大会やるみたいなんだ。テラマヤくんも参加しない?」

「それもいいかも」


 これからはその大会を目安に練習していこうと決めた。目標は当然大会の優勝だが、この店には二人の魔物がいる。その二人が今回の優勝者となるだろう。


「おっ!テラちゃんとピーちゃんじゃん!もう来てたんだ!」


 そんなことを考えていたら、その魔物の一人がやってきた。

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