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Magical Garden ~箱庭の少年達と新任?教師~  作者: 夕城ありあ
第1章 出会い編 《It's up to me to begin new my life or not to.》
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6 刃向う奴には容赦せず

 これは明らかに私に対する嫌がらせだわ…

 そう思い、苛立ちを覚えながら私は心の中で悪態をつく

 そして今、ここにいないレイに恨みの電波をこれでもかというくらいに送り続けた






 事の発端は授業前の朝会。

 教師だけで集まってその日の予定やお知らせなどを聞いたり、ちょっとしたことを話し合ったりする時間が毎日のように設けられている。場所は勿論職員室。生徒達に聞かれるわけにはいかないから。

 面倒だと思いながら教師の一人である以上、それに出席しないわけにはいかないので私もそれに毎朝参加していた。

 時々遅刻してくる教師が数名いるのだけど、レイが笑顔で問答無用の威しをつけているので私が何か言うまでもない……だろう。というよりもその脅しを受けても尚遅刻してくる彼らがある意味素晴らしいのかもしれないけれど。

 今日の遅刻者はなく、そこに私を含めて八人の教師が無事に勢ぞろいした。

 ――……はずだったのだが。

「ああ゛……っ」

 くらり、と突然椅子から転げ落ちたのが一名。

 当然ながら私を含めて全員の視線がその一名へと集まった。

 真っ先にその一名に駆けつけたのはレイで。

「大丈夫、スカラップ先生?」

 倒れ落ちたその一名――マヒロ・スカラップを支えながらその大きな体を起こす手伝いをしたかと思えば、はっと何かに気付いたような素振りを見せてから慌ててネイトに声を掛けて、ネイト達によってマヒロは何処へと運ばれて行った。まるで流れ作業のような鮮やかさである。

「………何、いきなり…?」

 私は呆れながらレイへと尋ねる。

 するとレイは同情するように、その秀麗な顔を少しだけ潜めながら答えた。

「……スカラップ先生、どうやら腹痛が悪化したみたいなの」

「は…?」

 いつの間に腹痛になったわけ?

 そんな問いを含めた眼差しを私はレイへと向ける。

 レイは私の眼差しを受けても尚、態度を変えることはない。

「……昨日からお腹が痛いって言ってたから…」

「…昨日、マヒロ私の部屋に食べ物せびりに来たわよ…?」

「………」

「………」

 奇妙な間が流れる。

 レイはそれでも悲しげに伏せた顔を上げようとはしなかった。

 ―――怪しい。

 心から私はそう思った。

 何かこう、マヒロが倒れる時は腹痛で倒れたというよりも何かの電波でも受けたかのような苦しみ方だったような気がしていた。まだ意識があったマヒロに駆け寄ったレイ。その後にはマヒロの意識はぷつりと消えていた。

 結論。

 レイがマヒロに何かをしたのではないだろうか。

 私は疑いの眼差しをレイへと向けた。

 が、そんなもので怯む存在でないのがレイだった。

「大丈夫かしら、スカラップ先生…」

 さも心配しているとばかりの言葉と態度をとり続けるレイに、私は顔を引きつらせそうになる。

 ちょうどその時、何処へとマヒロを運んだネイトが戻って来た。彼の表情は思わしくない。

「どうやら今日一日は安静にしていた方がいいみたいですよ」

「そうね…。白魔法学担当のラグワーム先生がそう言うのならそうした方がいいわよね…」

 白魔法学担当のネイトは、保険医も兼ねている。

 医療系判断についての彼の意見は第一とされてもおかしくはない。

 …おかしくはないのに、何故かその言葉に裏を感じずにはいられない私。

 レイとネイトを交互に疑いの眼差しを向ける私は、この時もっと自分に降りかかるであろう出来事を予測しておかなくてはいけなかった。

 私は……甘かったのだ。

「今日のスカラップ先生の授業、どうしたらいいかしら…?」

 本当に困っているという素振りを見せながらレイが呟く。

 その呟きで、私は嫌な予感を感じた。――が、既に時は遅く。

「それなら適任者がいるじゃないですか」

 と、言ったのはケイカ。

 一斉に、その場にいた全員の視線が私に集まった。

 顔が引きつる。

「……ちょっと、何なわけ…?」

 何を言われようとしているのか、何を求められているのか。分かっていたけれど認めたくなくて私はケイカ達に向かって言う。少しだけ、凄みをつけて。

 その凄みに最年少のカリンやキヨの表情に強張りが見られ、年長のソウジに至っては苦笑が零れた。

 そして


「ユキ、お願いできるかしら? 貴方以外に適任はいないと思うの」


 レイはにっこりと笑ってとんでもない言葉を口にした。

 タイミングを計ったように鳴り響く予鈴のチャイム。

「さあ、今日も一日宜しくお願いします」

 学園長であるレイの言葉に、教師一同は立ち上がり職員室を去り始める。この話は終わったとばかりの行動だが、皆の行動が揃いすぎていておかしい。

「ちょ…、ちょっと…っ!!」

 ――かくして、私にその選択権はなく。

 結局それを引き受けざるを得ない状況になってしまった。




 マヒロの代わりということは、私の教える専門の古代魔法学以外にも精霊魔法学を教えるということになる。また、マヒロは私とは違って一クラスの担任を引き受けていたのだが、その代行は免れることができた。というよりもそこまでする義務は私にはないのでレイに無理やり断りを入れたというのが正しい。

 手元の教科書から視線を外し、目の前の生徒達を見る。

 その生徒達の一人一人から不満の感情が窺えて、私はこっそりと肩を竦めた。

 生徒達からしてみれば、マヒロの代わりに私がこの教壇に立っていることが不満で仕方がないのだろう。マヒロは明るく話しやすい性格もあって生徒達に人気のある教師なのだ。だから授業も楽しみにしている生徒が多くてもおかしくない。

 そのマヒロの代わりに私。

 ……うん。何だか少年達の気持ちが手に取るように分かるわね。あっはっはー。

 人事みたいに心の中で笑ってみせて――だって実際に人事でしかない――

「それでは授業を始めます」

 決まり文句を口にして、私は教科書のページを捲った。

 渋々ながらも少年達も教科書を捲る。

 私が説明をし、少年達は静かにそれを聞き取って授業を受ける。ただそれだけのことのはずなのに、それは起こった。

 お昼間近の四限目に行った二学年の精霊魔法学の授業に、起こるべくしてそれは起こった。


「なんであんたみたいなのが精霊魔法学を教えんだよ」


 けっ、と吐き捨てるように少年の一人――ユイト・ローチ少年が言った。

 どちらかといえば高い身長に癖毛の長髪は日々の手入れを怠っていないのか艶やかさが目立っているが、残念な容姿がかっこよさを半減以下にしている。何というか、チャラ男感が半端ない。

 確かに少年の言葉も分からないわけではない。

 不満が募りに募ったのだろう、少年にしてみれば。

 しかしそれならとばっちりを食った私こそが不満を述べたいと思いながらも、それを口にすることはしなかった。一々こういったやりとりにのってあげるほど私はお子様じゃないのだ。

 ローチ少年の言葉でざわめきが広がる。

 二年生の内の一クラスであるこのクラスは、結構騒がしいメンバーが揃っている。たとえば私に始めにマイナス点を食らうことになった少年などがいい例で。

 一度ざわめきが広まるとそれが静まるのは容易なことではない。

 一部の生徒――アルフォンシーノ少年などがその生徒に含まれる――が心配するような、不安そうな表情を浮かべながら私とローチ少年のやりとりを見ていた。

 他、数名冷静に見守っている生徒もいるようである。

 私はその言葉をさらりと受け流し、

「それは私以外に教えられる教師がいないからです」

 淡々と答えた。

 軽く受け流されるとは思ってもいなかったのだろう。

 眉間に皺を寄せ、ローチ少年がむっとした表情になる。

「ホントかよ。そんなの信じらんねーって。他に学園長とかいんじゃねーの?」

 ローチ少年のその言葉に、再びざわめきが大きくなる。

 ……まあ、確かに学園長であるレイをさしおいて私がいることは謎でしかないわよね…。

 そう思いつつも私は事実を述べているだけなので、少年の言葉に再びさらりと答えた。

「学園長のシュリンプ先生は闇魔法学専門であり、精霊魔法学は専門でないので教えることはできません」

「ならただの一教師であるあんたが教えることも間違ってんじゃねーのかよ」

 ひややかに、口端を吊り上げてローチ少年が笑った。

「そうですね。でも私がここにいるのは学園長であるシュリンプ先生の指名ですから」

「嘘くせーな。証拠はどこにあるってんだよ」

「そんなものあるわけないでしょう? あったとしても君にそれを見せる義務はないと思いますが」

「ほら、やっぱり嘘なんじゃねーか。学園長が教えれないっつーのに、あんたから授業受ける気なんて俺にはさらさらないからな」

「それじゃあ受けなくてもいいですから外に出て行って下さい。受ける受けないは君達の自由ですから」

「な……っ」

 怒りに歪むローチ少年の顔。

 周囲の生徒達は事の成り行きを見守るだけで、誰も何も口を挟もうとしない。もしかしたら面白がって見守っているのかもしれない。

 ローチ少年についてよく知っているわけではないけれど、何だかちょっと俺様的なところがあるみたいだから嫌悪されている節があるのだろう。

「出てくのはてめーの方だ! 何で俺が出ていかなきゃいけないんだよ!!」

「授業を行うのが私の仕事ですから」

「いつまでもすかしてんじゃねェッ!!」

 どうやらローチ少年にとって私の態度はお気に召さなかったらしい。

 ……本当にどうしろというのか。

 少年の言う通り、出ていけるものなら私はとっくの昔に出て行っているし、そもそもこの教室に来ることすらしなかっただろう。

 私はローチ少年を一瞥し、大きく溜息を吐き出した。

「…………仕方ないわね」

 小さく呟いて、手に持っていた教科書を教壇の上に置く。

 そして私は小声で詠唱を短く唱えると、ローチ少年を指差してパチンッ、と一度指を鳴らした。

「は…?」

 ローチ少年が間抜けな声を上げる。

 教室中の生徒の視線が、私の視線の先――ローチ少年へと集まった。

 そして――

「わぷ…っ!!?」

 水が、現れた。

 その場所はローチ少年の顔の周りで。

 水によって顔を包まれたローチ少年は突然のことに空気を吸い込む暇もなかったようで、ぶくぶくと苦しそうにもがいている。

 生徒達が息を飲み込んだ。

 あまりの出来事に何も言うこともできず、顔を青褪める者もいた。

 私は冷静にローチ少年を見遣り、そして暫くしてからもう一度指を鳴らした。

「…っぷは……っ」

 ローチ少年の顔を包んでいた水が一瞬にして消え去る。

 そのまま喉を押させるようにしてローチ少年は咽始めた。

 静まり返る教室。

 私は教科書を持ち直すと、生徒達に向かって言った。

「…と、精霊魔法のうち水の力を使えばこんなことは簡単にできるけど、こういった悪い使い方はけしてしないように」

 さ、授業を再開しましょうか。

 至って何事もなかったように教科書を読み始める私。

 私に突き刺さる視線は畏怖するものがほとんどで、恨みがましい悪意のこもったローチ少年の視線は受けずに流した。

「先生、質問しても宜しいですか?」

 丁寧な物腰と口調で挙手したのは最前列に座っていた一人の少年。

 名前は確か、ルイ・フラウンダーといったか。

 クールな表情には感情は窺えず、少年が何を考えて挙手しているのかまでは私には分からない。直感的に、こいつも食えないタイプだと私は判断した。

「はい、そこの君」

 教科書を読むのを一時止め、私はフラウンダー少年へと視線を向ける。

「先程の魔法ですが、聞き覚えのない詠唱でしたがどういった類のものなのでしょうか?」

「……聞いてたの?」

「最前列でしたから」

「………」

 私は無言で彼以外の最前列の生徒を見遣った。

 何も口には出さなかったが、その私の視線の意味が通じたようでフラウンダー少年以外の最前列の生徒は、ぶんぶんと思い切り左右に頭を振って否定の意志を伝える。私のちょうど目の前に座っている髪にメッシュを入れた少年――確かスクィッドとかいう名前だった気がする――ですら聞こえなかったようで左右に首を振っている。

 真正面の生徒に聞こえずに、廊下側一番端っこの最前列の生徒に聞こえるとは、これは一体どういうことか。

 その生徒が地獄耳か、あるいは目敏い――この場合は聞き敏いというべきかもしれないけど――かどちらかということなのか。

 黙る私に更にフラウンダー少年は問い掛ける。

「それから魔法を使用されたのに杖は使われてませんよね。普通、一人前の魔法使いは杖を使用して魔法を行使するものじゃないのですか?」

 確かにごもっともである。

 一般的に魔法使いは杖を使って魔法を使う。教師であるマヒロやレイ達は必ず魔法を使用する時には杖を取り出している。また、杖は一人前の魔法使いの称号とされ、魔法学校に通う生徒達は卒業まで自分専用のそれを手にすることはできない。

 私は、大半の時は杖を使わずに魔法を使う。

 矛盾していると思われるかもしれないが、それにはしっかりとした理由があった。

「―――フラウンダー少年」

「何ですか?」

「その答えを知りたければ、もっと知識をつけなさい」

 きっぱりと、私は答えた。

 当然ながらフラウンダー少年にはその意味が分からなかったようで、怪訝そうに少しだけ目を細めた。

「はい、そこのマイナスをつけられているモーレイ少年」

「い…っ、俺か!?」

 自分で自分を指差しながらぎょっとするエイジ・モーレイ少年。

 私は彼に向かって問うた。

「魔法使いとして大切なものは何か、あげてみなさい」

 問答無用で問題提起する私に、うろたえて文句をぶつくさ言いながらも頭を捻って考え始めるモーレイ少年。そして他の生徒達もどうやら彼と同じように考え込んでいるらしい。一部の生徒――フラウンダー少年あたりは考えるまでもないとばかりに顔色一つ変えていないのはさすがというべきか。……まあ、それが完全な答えであるかは別としよう。きっと完全ではないと思うから。

「…っと、確か潜在能力と魔力と精神力じゃなかったっけ…?」

 潜在能力は生まれもって備えている魔法使いの素質。これがなければ魔法を使うことはできない。この学校の生徒である以上、潜在能力キャパシティは人それぞれとはいえ誰しもが備え持っているはずである。

 魔力と精神力は魔法を使う時に関係する《力》の源。これが低いとそれ相応の魔法しか使えない。潜在能力に関係してくるけれど、修業次第では上げることができるので別物と考えるべきだろう。また、前者は黒魔法系、後者は白魔法系に大きな関わりがある。

 若菜少年が上げたその三つは確かに魔法使いとして不可欠なもの。

 だけど、それだけではない。

「他には?」

「え、まだあんの…!?」

 げっ、と顔を嫌そうに歪める少年。どうやらこれ以上の答えを求めるのは無理らしい。

「結構。半分は当たりだから座ってよし。で、他にこれ以外のことが分かる少年はいる?」

 教室中をぐるりと見回す。

 少数の生徒が挙手をしてその意志を主張した。

「それじゃあそこの……ボニート少年」

 確かそんな名前だったような気がすると思い、名指しで指名する。

 どうやら名前に間違いはなかったようで、カナメ・ボニート少年は淡々とした口調で言った。

「魔法使いには体力も必要だったと記憶している」

「正解。君の言う通り、魔法使いには体力も必要よ」

 体力なんてと思う人がいるかもしれないが、魔法使いにだってそれなりの体力が必要である。特に大きな魔力を使う時には体にかかる負担が大きい。体力があればその負担を減らすことができる。大きすぎる力故に体がついていかずに消滅したなんていう馬鹿な魔法使いが昔何人かいたことを私は記憶していた。

「で、他には?」

 私の言葉に、ボニート少年を含めてモーレイ少年が上げたこと以上に分かると挙手をした生徒が「え?」という表情をした。

 どうやら誰も知らないらしい。というか、それも含まれるということを考えられないだけなのだろうけれど。

「そう、分からないならいいわ。それなら私が言うけれど、もう一つ魔法使いに大切なものがあるのよ」

「何ですか、それは…?」

 少年の誰かが尋ねる。誰かは分からなかったけど、それは恐らく教室にいた全員が思っている言葉であったに違いない。

 もったいぶることもせず、私ははっきりと言い切った。

「それは―――知識よ」

 と。

「……知識というのは別問題なんじゃないわけ…?」

 分からない、というように顔に泣き黒子がある少年――ナルミ・カッド少年が首を傾げる。

 確かに一般的に考えれば知識は魔力などに対して別物と考える人が多いだろう。知識、そして経験から魔力や精神力は上がっていくのだから。

 けれど、知識というのは魔法使いにとって重要な要素であるのは確か。

「いいえ、別問題じゃないわ。魔法使いにとってれっきとした重要な要素に他ならないもの」

 知識がなければいくら強大な魔力をもっていたとしても、力の本質を理解していない為にその本質の力を使うことはままならない。使おうとする魔法に対しての確かな、そして深い知識があってこそ、その魔法の本来の力を使いこなすことができるのである。

 魔法使いは博識である。

 などという言葉が大昔に囁かれていた時代があったが、全くもってその言葉は正しい。

 魔法使いは何年も長々と生き続けることからも他の人達よりも博識であるといえるからだ。でも、それだけではない。魔法を使う以上、確かな知識が基盤になくてはいけないのだ。だからこそ、博識という言葉が相応しいのだ。

「魔法を使いたければ、しっかりとした知識を身に付けなさい。知識は必ず基盤となって君達自身の力になるから」

「……知識をつければ杖なしで魔法が使えるようになると?」

 フラウンダー少年が興味深そうに言う。

「さあ、それはどうかしら。それも知識をつければ自ずと分かることよ」

 私は敢えてその言葉にしっかりとは答えなかった。

 それ以上、フラウンダー少年が何かを尋ねることはなかった。

 私は今度こそと思い、教科書を手に持ったものの、既に何分も経過していたようで授業終了のチャイムが学校中に鳴り響く。どうやら四限目はもう終わりらしい。

 ……全く内容が進めれなかったわね…。

 これでは私が代わりに来なくても、自習をしていても同じではないか。

 何となく無駄な時間を過ごしてしまったように思え、私は小さく息を零した。

 レイを恨まずにはいられない。そもそもレイがあんな一言を言わなければ私がこうして代わりの授業をすることもなかったのに。

 ……ああ、でも。

 ふと、思った。

 ……一番の被害者はマヒロよね、と。

 多分、確実にレイに何かされて寝込んでいるマヒロ。

 しかも、代わりに授業を進めるはずだった私が授業を進められなかった為、今後慌てて今回の分の範囲の授業を終らせなければならない。

 まさに何とも哀れな立場。

 少しだけマヒロに同情をしながら、私は教室を後にした。


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