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Magical Garden ~箱庭の少年達と新任?教師~  作者: 夕城ありあ
第1章 出会い編 《It's up to me to begin new my life or not to.》
12/41

12 緊迫(?)の火曜日

 昔々

 気の遠くなるような遥か昔

 この世界には神族と魔族も存在し

 大きな戦いを繰り広げていた

 ―――それが歴史に残る、世界大戦






「……神族と魔族はどちらも強大な力を持っている。なかなか戦いは終らなかったんだ。それは数千年も続いたとも言われている」

 魔法史の教科書を手に、描かれた想像図をスライドで示しながら授業を行っているのは、魔法史学担当教師であるケイカ・クラブである。すらりと伸びた長身に女向けしそうな甘いマスクのケイカは、ここが女学校であれば大人気となっただろう要望をしている。が、それを生徒達含め同性に恨まれたり嫌われたりしていないのは、彼が気さくな性格をし、気遣いをスマートにできるからに他ならない。ある意味、大人の男として憧れている生徒がいるのはケイカ本人の知らない事実である。

 ケイカはスライドに表示される絵を何枚か入れ替えて生徒に見せ続ける。

 想像図であって誰かが見て描いたわけではない絵。

 しかしそれでも、その戦いがいかに強大なものであったかは感じ取れるだけの絵だ。時に見るのも悲惨な状況を描かれた物もあり、生徒の中には顔を顰めたり目を逸らす者もいた。

 生徒達は真剣に授業を受けている。

 戦い、という単語に興味をもっている者もいるのかもしれない。今では戦争なんてものは関係ないものなのだから。時に男という生き物は、そういった類に惹かれることもある。

「永遠に続くと思われた戦いに終止符をうったのは誰だったと思う?」

 ユヅキ答えてみろ、とケイカが指名する。

 当てられて、生徒の一人であるユヅキ・サーディンは考えるまでもなくすぐにその問いに答えた。

「人間だったと本で読んだことがあります」

「その通りだな、よく知ってるじゃないか」

 少しでも歴史の本を読んだことがある者ならば知っていてもおかしくない内容だが、本に全く興味ない者にとってみれば信じられないような内容である。

「えー、でも人間って一番弱い存在なんでしょー? だったら精霊とかじゃないんスか?」

 その典型的ともいえる本を読まないナルミ・カッドが、不思議そうに質問した。

 彼は学業の成績は良いとはいえない。元々体を動かす方が好きということもあり、魔法の適正がなければ運動系の学校に進んでいたことだろう。……余談だが、赤点もとるナルミの成績を支えているのは、彼の親友であるレン・ポラックに他ならない。彼失くして、ナルミの進級はありえないのは、自他共に認める事実である。

 ケイカはその質問に苦笑する。

「確かにその通りだな。人間は弱い。でも、確かに終止符をうったのは人間なんだ。詳しい事は本には残されていないから分からない。精霊の長の加護を受けた人間が終止符を打ったのだとも言われている。そしてそれを立証するように……」

「この世界を治める王が人の中で誕生し、神族と魔族は別の世界へと移り住んだというわけだな」

 教師であるケイカの言葉を遮って、カナメ・ボニートが淡々と最後の結論を述べた。

 ナルミと違い、カナメは二学年における成績最優秀者である。探究心のあるカナメにとって本は読むものではなく摂取する栄養であり、無くてはならないものである。

 人は、弱い。

 存在する種族は神族、魔族、精霊族、そして人間の四種族であるが、人だけが他の種族に匹敵する生まれ持った《力》を持たなかった。

 世界大戦において戦いを繰り広げる魔族と神族に対して、ただ怯えていることしかできなかった。ほんの少しその《力》を浴びようものなら、一瞬にして塵になってしまう程の歴然とした差がそこには存在する。

 精霊族は大きな力をもっていながらも争うことを良しとしなかった為に、ひっそりと見守り続けていたと云われている。

 大戦は気の遠くなるような昔の出来事なので、過去の偉人は誰も文献にしっかりと書きとめて残していない。その為に色々な説が発表されており、正しい知識を得ることは困難とされている。それを追及し続ける事が、ある意味魔法史専攻の醍醐味ともいえよう。

「その後に人は魔法を使えるようになったということになりますよね?」

 ルイ・フラウンダーがすかさず質問する。

 ルイもまた成績優秀組の一人である。仲良し三人組の中では一番頭が良く、きれる。

「ああ、そうなるな。黒魔法は魔族の力を、白魔法は神族の力を、精霊魔法は精霊族の力を借りているからな。終止符をうった王が何らかの誓約を結んだという説が強い」

「その王になった人間ってのはすっげー奴なんだな。魔法作り出したのもそいつってことになるじゃん」

 わくわくと目を輝かせてエイジ・モーレイが言うと、それに便乗するようにナルミ達も騒ぎ始めた。

 一部の生徒を残し、騒ぎ始める生徒達を見てケイカはもう一度苦笑を零す。

 小さくても男は男ということか。こういった話は女よりも男の方が好き好んで聞く内容であり、ケイカもまた、幼き頃にこの話を聞いた時は凄く関心をもった経験がある――そういったことも一つの理由で魔法史を専門に選んだのだが――。

 いつも以上に授業内容に関心をもってくれる生徒を見、何やら嬉しいものを感じながらケイカはこっそりと腕時計で時間を確認した。

 授業終了まであと十数分。

 この調子でいけば今日の予定していた範囲は終りそうである、という確認の為もあったが、時間を確認したのにはもう一つの理由があった。一つ、気になることがあったのだ。

「クラブ先生ー」

 はい、と肘から上だけを適当に上げて挙手したのはキョウ・チャー。

 キョウは成績が悪いわけではないが、良いわけではない。適当に手をぬいて程々真ん中の成績を位置しているのだろうというのは、教師陣を含め生徒達も暗黙の了解で理解している事実である。彼は手抜きの達人である。……やる気がないともいう。

 また何か授業内容での質問だろうかと思ったケイカだったが、

「今日なんや偉そうなおっさん達見たんやけど、何か今日あるんか?」

 キョウの質問は全く違うものだった。

 一気に脱線する話。

 キョウだけではなかったのだろう。その偉そうなおっさん達を見た生徒は思ったよりも多かったようで、先程とは違った賑わいに教室は包まれてしまった。

(………ああ、今日の授業はここまでか……)

 今授業をしている二学年Aクラスの特徴として、話が脱線するとすぐにもどってこないということが上げられた。それはお祭的存在人物が何人もいる為に他ならないのだが、そんな生徒達の会話を問答無用でおしきって授業に戻せるのはユキかレイぐらいでしかない。

 折角予定していた範囲まで終りそうだったのに、というもの寂しさを少しだけ感じて。

 しかしそれ以上に、ケイカは内心ではキョウの質問に動揺していた。

 ――そう、ケイカが今気になっていたのはその事に他ならなかったからだ。

「…ああ、何でも魔法協会の人が学園の様子を見る為に今日は来ているんだよ」

(……もっとも、そんなのは表向きの理由でしかないだろうがな)

 と。

 内心とは違った答えを言うケイカ。生徒達にその真実を言うわけにもいかないから仕方がない。

「様子ってことは授業でも見に来てるんですか?」

 レンが尋ねたことに、ケイカは頷いて肯定した。

「ああ、代表して一つのクラスだけだけどな。幸いこのクラスの授業じゃなかったみたいだが…」

 冗談交じりに言ってのけると安堵の声が上がると共に、今度は何処のクラスがという話題へと当然ながら変わる。

 生徒達に一斉に尋ねられ、ケイカはその問いにも答えた。

「代表のクラスは三学年Aクラスだよ」

「リイチ達のクラスだな、そりゃ」

 ご愁傷様、と肩を竦めるリョウ・イール。

 飄々とした性格のリョウは、一癖も二癖もあるリイチ・ハリバットと非常に仲が良い。

 他、シュリンやコウといった三学年の生徒と仲の良い一部の生徒達も「ご苦労様」とばかりに苦笑した。

「………リイチのクラスってことは……マーリン先生の授業か…」

 ルイは一人、考え込むようにして小さく呟いた。

 意味ありげに呟かれたその言葉を耳にしたのはケイカだけで、その呟きの意図するものを知ることができる者は残念ながら他におらず、ケイカはこの場にいない自身の恩師に思いを馳せた。




 常以上に静まり返った授業だった。

 教室の後ろに何人もの中年おやじの姿があったからなのはいうまでもなく、そのせいで生徒達の間で緊張が走っているのも言うまでもない。おそらく他の教科の授業であれば無駄口をたたくような騒がしい生徒も口を閉ざし続けている。……ちなみに私の授業では無駄口を叩く暇もない為、大半がぶつぶつと呟くだけに終わっている。

 はっきりいって迷惑だ、と思った。

 そもそもこの世には魔法というものがあるのだ。わざわざこの場に来て授業を目視しなくても、観察の申請をしてその類の魔法を使えば遠くからその様子を見る事ができるのである。わざわざこうして姿を見せるということは非効率でもあり、生徒か、はたまた教師に対しての嫌がらせにしか思えない。

 微妙に一触即発のような空気が教室に漂っているのに、私は敢えて気付かない振りをし続ける。

 同時に、私にちくちくと突き刺さる良くない感情の視線もまた、敢えて気付かない振りをし続けた。

 気にせずにいつもの調子で黒板に凄まじい勢いで淡々と授業内容を書き写していく私。

 そしてそれを懸命にノートに書き取る生徒達―― 一部の生徒は諦めているのか手が動いていないが――。

 そんないつもの授業の中、その発言がされた。

「マーリン君」

 始めに呼ばれたのは名前。

 このクラスには私を「あんた」呼ばわりするハリバット少年やヘリング少年がいるものの、さすがに彼らも分をわきまえているのか授業中は「先生」と呼ぶ。だから、「君」付けで私を呼ぶとしたらそれは後方を陣取っている人物しかいない。

 私は黒板ではなく生徒達の方を振り返って、教室の一番後ろを陣取って立っている人を見た。

 声に聞き覚えがあった。だからその人物だけを私は見据える。

「何でしょう、アクトパスさん」

 かっぷくのいい腹。いかにも中年おやじの典型的体型だというのは私の見解だが、そう思っているのはけして私だけではないだろう。背も高くなく顔も整っているとは言えない容貌の為に、余計にその腹に目がいってしまう。

 私の様子を見に来たお偉い方々の中の一人の男――アクトパス。

 彼は嫌味たっぷりの視線を私へと投げつけてきていたが、私は静かに彼の視線を流し続けた。

 そんな私とアクトパスを、生徒を含めて他の方々も交互に視線を向けている。私達のやりとりに口を挟むに挟めずに見守ることしかできないのかもしれない。室内には嫌な緊張感が流れていた。

「君の授業の仕方だと一方的で、生徒達にとってはあまりよろしくない授業方法だと思うのだがね?」

 自分の意見に間違いはないのだと自負するような笑みを浮かべてアクトパスが言う。

 変にイントネーションをつけて話す話し方は、その表情と相まって向けられる方の気分は良くなるものではない。

「それはどういった見解でしょうか?」

「そのままだよ。君の授業の仕方では生徒達の学力が伸びるとは思えない」

「………」

「一方的な授業、生徒達の存在を無視した授業などあってもないようなものではないのかね?」

 これでもかというくらいに私の授業方針に対して難癖をつけ始めるアクトパス。

 ざわっと教室内が騒がしくなった。

 私の授業の進め方を良く思っていない生徒などたくさんいるから、お偉い方々が指摘したことでこれ幸いとでも思ったのかもしれない。

 騒がずにいたのは、ハリバット少年含めて数人の生徒と、お偉い方々の中の一人だけでしかない。あとは問題発言を提議してきたアクトパスくらいなものだ。

 私はちらりと、お偉い方々の一人であり、唯一微動だにしていない人へと視線を向けた。

 その人は私を見て口端だけで小さく笑みを浮かべてみせる。

 私もまた、その人だけにしか分からないように本当に些細な笑みを浮かべた。

「…つまり、私の授業の進め方ではよくないとおっしゃるのですね?」

「その通りだよ。自分でも分かっているんじゃないのかね?」

「いいえ。私はそうは思いませんので」

 きっぱり言い切った。

 今の今まで優位に立っていると信じていただろうアクトパスは、面を食らったように少しだけうろたえる。

「だが君の授業を良く思っていないのは私だけではあるまい」

 アクトパスは他のお偉い方々にあごをしゃくって確認する。

 他の人達は私を見、居心地の悪そうに視線を逸らしながらも小さく頷いて同意した。まるでアクトパスに逆らうことができない柔順な使徒か何かに見える。――ただし、一人を除いて、ではあったが。

 その一人が頷かなかったことにアクトパスも気付いて声を掛けた。

「クラム君? 君もそうは思わないかね?」

 声を掛けられたのは、集まっているお偉い方々の中で一番見た目が若い男性である。他の面々が背を丸めるようにして居心地の悪そうにしている中で、彼だけが唯一背を丸めることなく真っ直ぐにして、凛として立ち続けている。

 その一人――クラムはアクトパスへと視線を向けなかった。私の方をじっと見ている。

 クラムが何かを口にするよりも先に、私が口を開いた。

「――彼はそうは思わないわよ、アクトパス」

 がらり、と私の口調が変わる。

 砕けたというよりも、乱雑な適当さを含んだその口調に、先程までのお偉い様を一応伺った丁寧さはどこにもない。そんな気遣いは私の中で消去された。

 再び教室に在する人達がざわめきだす。これには先程は騒ぎ出さなかったハリバット少年達も驚きを見せたようで、微かに目を見開いたのが見てとれた。

「何、それは私に対する仕返しか何かなのかしら? 学生時代、私の科目で良い成績がとれなかったから立場が偉くなった今、私をけなそうとでもしてるわけ? だとしたらちゃんちゃらおかしくて笑っちゃうわよね」

 ふっと鼻で笑う私。

 勿論、相手を馬鹿にするようなイントネーションも忘れない。

「な…っ」

 アクトパスの顔が怒りからか、真っ赤に染まる。

「マーリン君、口を慎みたまえ…っ!」

「口を慎むのはそっちじゃないの。人として恥かしいとは思わないのかしら? そもそもこんな授業中にそんな発言をする時点で教育者として間違っているとは思わないわけ?」

「…ぐ……っ」

「馬鹿も休め安め言いなさいよね。そもそも私の授業なんて興味ない人には関係ないんだからどう行おうと勝手なはずでしょう? そもそも古代魔法学なんて一般人が理解できるような教科じゃないんだから。それに私の教え方に文句を言うのなら教え子が今どうあるかを考えてからにしてみなさいよね。私の教え子が今、おかしな職業にでもついてるかしら? 数少ないけれど、皆私以上の大層な立場についてるわよ。――ねえ、クラム?」

「…そうだな。ユキさんの言う通りだな」

 私に同意を求められ、クラムは満足そうな笑みを浮かべて同意の旨をつげた。

 レイ達だけでない、クラムもまた私の数少ない教え子の一人なのだ。

 そして彼は今、魔法協会の中心人物の一人となっている。

 レイと似て食えないような性格をしている為、教会の中でもうまくやっているのだろう。

「き…、君は私にそんな口を利いてただですむと思っているのかね…っ!?」

 裏返った声でアクトパスが権力をかたにする発言を口にする。

 私は、その発言をも鼻で笑ってみせた。

 くだらない。

 権力なんてくだらないとしか思えない。そんなものが一体何の意味をなすというのか、私を納得させられるだけのものがあるならぜひ教えてほしいものである。

「アクトパス」

 先程とは違い、不気味に静けさを含む私の呼びかけに、アクトパスはぎくりとした。

 顔が強張っているのは誰の目にも明らかであろう。

「な、なんだね…」と私の雰囲気に只ならぬものを感じながらアクトパスが一歩後退する。壁があるのでそれ以上は下がれないようだが。

 異様な雰囲気が教室中を包む。

 その異様な雰囲気を感じ取ったレイが、転移魔法を使って教室に現れた。

「ユキ…っ!?」

 異様な雰囲気には気付いたものの、教室内で何が起こっているかまでは分からなかったらしい。只ならぬ私の雰囲気に顔を青褪める。

「レイ、悪いわね」

 一言、謝った。

 その言葉で彼女は理解したらしい。

 レイが何かを言おうとして口を開きかける――よりも早く、私はアクトパスに向かって言ってやった。

「私を教師として首にしたければするといいわ。別に教師になんて執着なんてないもの。でもね…………」

 淡々とした口調でそこまで言い、私ははめていた眼鏡をはずし、それを手から離した。

 やけにゆっくりと落下していく眼鏡。

 カツン、と。小さな音が静まり返っていた教室に響いた、その直後――


「私を裁くことなんてあんた達にはできないわ」


 権力を糧に椅子の上で踏ん反り返っている奴らなんかにね。

 と。

 ぐしゃりと落とした眼鏡を踏みつけて、私は冷静に言い切った。

 どこか、冷たささえ含む声色で。

 その私の雰囲気に威圧されるアクトパスだったが、唇を悔しそうに噛み締めた後に最後の抵抗をみせた。

 授業終了のチャイムが学園内に鳴り響く。

 そのチャイムの音を掻き消すかのような、アクトパスの大きな声。


「人殺しのくせに……っ!!」


 しん、と。

 時が、止まったかのようだった。

 思わず息を飲み込んだのは誰であったのか。

 少なくとも私ではなかった。

 自分に浴びせられている言葉であるというのに、その言葉を聞いた瞬間も私の心は酷く静かなものだった。

 怒りが勝っていたのか、何年も生きていて何を言われても動じなくなっていたのかは定かではない。

 とても、私の頭は冷静にその言葉を受け止めていた。

 私は教科書類を教卓の上でとんとんっと整えるとそれを腕に抱える。

 その後でアクトパスの方を一瞥した。その眼差しは当然ながら冷たい。

「それが、どうかしたわけ?」

 そんな言葉は痛くも痒くもないとばかりに淡々と問い返す。

 そして、私は授業を終えてこの教室には用はないとばかりに立ち去ろうと身を翻す。

「ユキ…っ!」

 レイが名前を呼んだ。

 でも、私は足を止めることもしなければ振り返ることもしない。扉を開けると、すたすたと廊下に向かって歩き続ける。

「アクトパスさん…っ! 貴方、言っていいことと悪いことがあるのも分からないの…!!」

 レイの罵声が、耳に届いた。

 彼女にしては珍しく感情のままに叫ぶようなその言葉が、私が耳にした最後の言葉。

 その後のことは知らない。

 それ以上何も聞きたくなくて、私は全ての感覚を自分からシャットアウトさせてしまったから。

 本当はアクトパスに言われたことで動揺しているのだと、その時初めて自分で気付いたのだった。


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