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現実逃避!エスケープマン  作者: 霧雨 けいね
3/8

三回避 活 動 開 始 !

やっと

「いやー、あのことは本当に悪かったって」

「たく、帰りにタピオカジュース奢れよ」

「奢る、奢る。気が済むまで奢るよ」

あれから、5日俺と矢澤はすっかり仲良くなっていた。

「じゃあ俺、陸上部行くから」

「ああ、もう運動できんのか。気をつけてな」

図書室

 6人いる筈の文芸部の活動は、結局いつも二人で活動しているのだった。といっても、同好会だし、俺もただ何となくいるだけだからそこまで執着はないのだけれど。

「なあ、こいつの書く本って全部おんなじ展開だし、青春ごっこばっかだよな」

「堕落した大学生が、ワケアリ美少女に出会ってベターエンドを迎えるという点では、同じ。ただ、著者の王道であるならいいんじゃないの?」

「ふぅん、そういうもんかねえ。じゃあ、なんか有希(ゆき)のオススメ教えてよ」

「いいけど、僕の趣味と(すごす)の好みは会わないと思うよ」

「そうかなあ~。あ、そうだ。スタウォーズ公開されたし、土曜日観に行こうぜ」

「うん。行く」


帰り道

「俺は思うわけよ。こう、青春とは何か、とね」

「さっき青春系の小説を非難してなかった?」

「違う、違う。恋愛じゃないんだよ。もっとこうハジけるような、冒険さ。全身全霊の、全力疾走!」

「部活?運動系の」

「あー、そうだなあ。自分で作るつていうのはどうだろう。戦闘部 とか」

「また職員室で2時間くらい過ごすことになるよ」

「はー、つまんね。ん?」

「どうしたの」

「あれ見ろよ、4組の白沢だ。あいつ、ローソンでバイトしてんのか」

「ひょっとすると、現実ではなかなかない苦学生が故、中学生ながらアルバイトをしているキャラクターなのでは」

店内に入り、レジへ向かう。特に商品も取らず、客もいないので話しかける。

「あのー、もしかして、4組の白沢君?」

怪訝な顔をされる。

「そうだけど、買うものがないなら話しかけないでください。ま?まさか、いや、頼む後生だから先生には言わないでくれ」

「い、いやそんなつもりじゃないよ」

「ほ、本当に?」

「言わない、言わない。混沌の黒魔術師に誓ってでも、言わないよ!」

「ほんとか!助かるぜー、この埋め合わせは、きっとする」

「それより、なんでバイトしてるの?小遣い稼ぎ」

「んー、ある夢のためかな」

「夢?」

「へへ、50万で3階の特別教室、あそこを改修するんだ」

「な、何のために?」

「へへん、聞いて驚け。あの物置部屋を改修したら、教頭直々に部室にしていいと言われてなあ」

「部活立ち上げるの?」

「そう、名付けて冒険部。まあ同好会だから、顧問は教頭名義にしておくだけだけどな」

「ふうん、で何時頃貯まりそうなの」

「ふふん、今月の土曜さあ」

「へー、凄い行動力だな」

「人集まるといいね」

「うん、まあこんだけ面白そうな部活、すぐ誰か入ってくるでしょ」

それから暫くして、

「俺も白沢の冒険部入ってみようかなあ」

「そうなの」

「なんか、青春出来そうな気がするんだよね。非日常的っていうの」

「そ、それじゃあ辞めちゃうの、文芸部」

「んー、そうかも」

「...で、でもまだ“冷血”読み終わってないんじゃ」

「まあ、借りて読むよ」

「じ、じゃあ俺の書いた詩は、いつ読んでくれるの?」

「言ってくれれば、いつでも読めるぞ」

「そ、それじゃあ...」

「あーでも、やっぱやめないわ、文芸部」

「ふぇ」

「あんなん幽霊部員だらけだし、兼部どーってことないでしょ」

「あ、そっかあ」

有希が姫カットの前髪を揺らして眼を輝かせる。

「珍しいな、そんなに喜んでるとこ見るの」

「え、えあ、いや、そうかな~」

「そうだ、有希も一緒に入ろうぜ、冒険部!」

「ええっ」

「兼部ってことでさあ。だって俺友達とじゃないと青春にならないと思うんだよね」

「う、うん。入部する」

「yahooo、そうと決まれば早速明日白沢のとこに行こうぜ」

翌日

 移動教室から帰るとき、矢澤に出会った。

「ああ、そうだ流石(るせき)、冒険部入ってみない?」

「冒険部?何だそりゃ」

「4組の白沢が創った愛好会よ。面白そうだろ」

「あー、そうだな」

そう言ってほんの数秒考えると、

「そうだな、入るか冒険部」

「えーっ!いや、誘っといてなんだけど随分あっさりだなあ」

「いやなんか、陸上も正直つまらなくなってきたからさ、もう辞めよっかなって」

「そんな簡単に決めちゃっていいのか?お前3000m全国2位だろ」

「いーのいーの、気にすんなって。俺は楽しいことがしたいんだ」

そして、翌週月曜日

 3階特別等、非常扉前、元物置。そこにはプラスチックプレートに赤黄青緑の鮮やかなペンキで描かれた、“冒険部”の3文字が掲げられていた。

「おーし、これで全員か」

白沢が呼びかける。

「本日4月24日をもって、冒険部の活動を開始する!」

 一同拍手喝采

「まず俺、部長の白沢 実」

「副部長の矢澤 流石だ」

「書記の数多 有希」

「お花に水やり係及び観葉植物育成担当 八理 過でーす!」

こうして、俺だけ間に合わせの職で、冒険部の活動が始まった...


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