表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/32

初日 PM β'〜二日目 AM α'

クレタ島行き客船に乗り込むと、僕のチケットで入れる二等(安いセカンドクラス)船室に向かった。

あまりいい部屋を期待していなかったが、実際にその通りで…小さな映画館と表現したらいいだろうか。大きなテレビを正面に見るようにして何十もの椅子が並んでいる。

明らかに、これから夜を明かすには適さない大きさと背もたれであったが、仕方がない…僕は真ん中あたりに席を取ると、ぼんやりとテレビのモニターを見ていた。

客数は少なくまばらなので、船が出発したら両隣の椅子は占領しよう。

静かな振動と共に、船はクレタへと向かって動き出した。

窓が無いので外も見ることもできず、僕はただ椅子に座るしかなかった。

退屈である…しばらくして船内を歩き出すと、船の真ん中あたりにある喫茶店バーかなで、

飲み物を買ってそこの店員さんに『サントリーにとミコノス、どっちが良い所?』と聞く。すると頭の薄くなったオジサンは魅力的な笑顔を浮かべて『どっちも良いよ』と答えてくれた。

うーん…そう答えられると困るんだけどなぁ…

船内を少し歩きまわり、ついにすることが無くなったので僕は船室に戻ると、両隣の席を有効(笑)に使い、眠る事にした。

モニターで流れている地元のテレビを眺めながら、僕は体中が痛くなりそうな窮屈な姿勢で、眠りについた。

朝、目が覚めると、予想通り体が痛かった…

痛む腰をさすりながら起き上ると、船は間もなくクレタ島のイラクリオンに到着した。

クレタ島について知っている事と言えばクノッソス宮殿…ギリシア文明発祥の地、ミノア文明、あとは第二次世界大戦のクレタ戦線くらい。

船を下りた僕は青い空と青い海に、船室から解放の開放感で、寝不足など忘れて軽やかに歩きだした。

とりあえずクノッソス宮殿を目指そう。リュックを背負い、海を右手に見ながら道路を歩く。

クノッソス宮殿息へのバスはイラクリオンのセンターにあるバス停から出ているみたいで、僕は早朝のために人がまばらな通りを歩いて、イラクリオンの中心部に向かった。

歩く事十分くらいで街の真ん中についた僕は、そこにあるバス停のロータリーでバスを待つ。

バス停のすぐそばの通りには食道、旅行代理店が並んでいて、僕はバス停のすぐとなりのオープンカフェでバスを待つ事にした。

ギリシアコーヒー(とても濃い…)を飲みながらバスを待っていると、目の前の通りで若者達4、5人の集団と同じく中年の集団が何やら言い争いが始まった。

何だろう…?しばらく聞いていると、どうやら軽い車の接触があって『お前の方が悪い!』と、揉めているようであった。

殴り合いにこそならなかったけど、血の気が多いなぁ…と思いながら、僕は10年ほど前にスペインで同じようにして言い争っている若者と中年の事を思い出していた。

バルセロナからバレンシアに向かう列車の中で、僕の前に座る若者と中年が言い争いを始めたのだ。

内容は互いの故郷、どちらが優れているか…みたいな事だった。スペインでは同じ国内でも『違う国』みたいな所もあるみたいで、そこでは話す言葉も違うらしい。

故郷に抱いている誇りもとても強くて(僕達日本人には想像できないくらい)、『俺の生まれ住む故郷が一番』みたいなノリがあるみたいだ。

言い争いは周りの客をも巻き込んでエスカレートしていき、僕だけがわけもわからずにぽつんと取り残されていたのだが…(汗)

ヒートアップしたオジサンが僕に『お前もそう思うだろ?』みたいに聞いてきた時に、僕はどう答えればいいのかわからず、笑顔しか返せなかったなぁ。

だって、喧嘩してるもう片方が僕の事を思いきり睨みつけていたから…(笑)。でも、そんな風に熱くなれる人達に、少し羨ましいな…と思っている自分もいた。

目の前の光景を見ながらそんな事を考えていると、僕をクノッソス宮殿まで連れて行ってくれるバスが到着し、僕は彼等を喧嘩の結末がどうなったのかを見る事もなく、バスの乗り込んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ