七日目 PM 小さな絆と小さな家族
それからは彼女と二人で、つかず離れずにイアの町中を歩いた。
オフシーズンのせいで開いている店もまばらで人通りも少ない。
それから少し歩くと町の端っこ? と思われる場所に到着し…海をぼうっと眺めること以外、することが無くなった。
「これで一通りまわったみたいだね」
「うん」
「僕は次のバスで帰らなきゃいけないけど、君はどうするの?」
「せっかく来たから…もう一本後のバスで帰ろうかなって」
確かに時間があるなら僕もそうしたい。
一度は諦めたサントリーニだけど、こうやって来たからには、もっとここにいて、もっと色んなものを見てみたい…と思っていた。
だから正直、まだ帰国するのがかなり先であろう彼女が羨ましかった。
「そっちはフェリーの時間あるもんね」
「うん、そうなんだ。それが無ければもう少しいるんだけど…」
残念そうに僕を見る看護士さんに複雑な笑みを浮かべてみせる。
「とりあえず元の場所まで戻ろうか」
「そうね…みんなも待ってるし」
僕と彼女は青い海から踵を返すと、来た道を引き返す。
行きの工程ほど寄り道をしなかったお陰で、わりとすぐに集合場所に戻った僕たちは、待っている面々と再会する。
「さて、みんなはどうするの?」
奥さんが一同に問いかけると、彼女を除いて全て次のバスで帰るとのこと。
みんな、ひととおり町を見て回ったみていで、これ以上時間をつぶすことが出来ない…といったところだろうか。
看護士さんをのぞいて皆、心は一つだった。
「じゃ、じゃあ、あたしも帰る」
ひとり残されるのが嫌なのか、慌てて看護師さんがそう言った。
その仕草が可愛らしくて…当人を除いた一斉が思わず笑みを浮かべた。
人懐っこいというか愛らしいというか…(汗)。
なんか家族みたいだ…その笑顔の中で僕はそんなことを考えていた。
もう少しこのメンバーで行動したり、同じ宿に泊まったりすれば、もっと楽しい出来事や思い出が重なっていくんだろうな…
数年前にインド、ネパールを旅したときも同じように数名の日本人と仲良くなり…同じ宿のバルコニーでお酒を飲みながらお互いの人生観を話し、外側から日本という国について語り合った。しがらみも上下関係もないその仲間たちと過ごす時間はとても心地良く、男女関係無く数日間、僕は一人旅の寂しさを忘れることができた。
そのメンバーとネパールで豪華(笑)なステーキ屋で最後の晩餐を終え、それぞれの道に分かれた後は、何とも言えない空虚というか寂しさが込み上げてきたのを、今でもはっきりと覚えている。
ほんの数時間しかいなかったこの人達とも、そんなふうな関係になりつつあるのを感じていた僕は、ここでそのパーティを解散してしまうことを、とても残念に感じていた。
看護士さんも、きっとそんなふうに感じていたから、みんあでバスに乗って一緒の時間を過ごしたかったのだろう…
あと一日くらいいられれば、みんなで夕食に行ったり、もっと色んなことを話せた(外国人カップルの慣れ染めとか)のに…
という思いとは裏腹に、パーティをフィラまで戻すバスがたどり着いたので、僕はバスに乗り込むと、世界一美しい絶景に別れを告げた。