六日目 PM シロス島でシエスタ?
フェリーに乗り込んだ僕は、荷物を荷物庫(セキリュティ皆無)に置き身軽になるとデッキに出て、この旅最大の貴重な時間をくれたミコノスに別れを告げにいった。
初めてこの島に来た時と同じように真っ白で美しく、何度見ても溜息しか出てこない。
デッキの手すりに手を付いて、別れを惜しむようにその風景を眺めていると静かに船は動き出した。
サカキさんから遅れること一日…新しい地に向かう僕を載せたフェリーはどんどんとその美しい島から遠ざかり、やがてエメラルドの海水線の向こうへ消えていった。
僕はフェリーの喫茶フロア(ここが2等自由席)に行ってソファに腰を下ろすと、シロスにつくまでの1時間ほどを読書に費やした。
ミコノスから離れたことで、僕はようやくこの旅の終わりを意識し始める。
これまでもそうだったように旅にはいつも起承転結があり、転の部分ではいつもその旅のキーワードとなるような心に残る出来事が起こる。
ペルーを訪れたときは、高地と過酷な日程、水しか出ないシャワーで見事に風邪をひき、それが治らずに心身ともに疲れ果てて旅が嫌になりかけた時に訪れたボリビア…
眩しい太陽と陽気な人達がとても心地良く、それまでの疲れを一気に吹き飛ばし旅が楽しくなり、終わりに向かって心地のいいテンションを保つことができた。
今回はミコノスで同じことが起こり…過酷な旅から、ようやく本当の自分の旅をしているという実感が持てるようになった。
あとはこの充実した気持ちのままでで旅を終えよう、と心の中で思うと当時に、旅の終わりを意識しはじめたことで少し寂しい気分になった。
あと数日でまた仕事と日常が戻ってくる…退屈とストレスしかない日常が(笑)。
そんなことを考えながらウゾに口をつけていると、船が減速をしはじめる。
シロス島に到着したことを身体で感じ取ると、少ししてからアナウンスで到着の知らせを聞く。
僕は喫茶ルームからタラップを降り、荷物庫からリュックを引き上げると船のゲートが下りるのを待った。
間もなくゲートが開き、僕はシロス島への一歩を踏み出した。ミコノスと違って観光地では無いでせいか客引きも寄ってこず…故に僕はどこへ向かうか途方に暮れた。
港に出でとりあえず街の中心部に向かう。何はともあれ、ここからの6時間…リュックを担いで動き回るわけにはいかない。まずはこのリュックを預けられる場所…と思って町中を歩いていると、僕を乗せるきたフェリー会社のオフィスを発見。
そこでリュックを預かってもらう交渉をしたら、快くOKを貰ったので、僕はリュックを置き身軽になる。
さて…どうしよう。
オフィスを出た僕はふらっと街を歩いてみるが、マーケット、カフェ、お土産を売っている店…これと言って立ち止まろうと思う場所が無かった。
とその時、開店前の雑貨屋の前にいすが置いてあって、その上に二匹の猫がちょこんと座っていた。
茶色の縞模様と黒…狭い椅子の上に肩を寄せ合うようにして座っている猫に近づくと、僕は躊躇いもなく彼達に触れていた。
猫は人慣れしていて、すぐに僕の手に頬を摺り寄せてきて甘えるように微笑みかけてくれた。
絵葉書になりそうな二匹の猫を何枚か写真に撮り、しばらくその猫を触って時間を潰した僕は、彼達に別れを告げると街の中心部に進路をとる。
街の中心部にはカテドラル(教会)があるらしいから、とりあえずはそこに行ってみよう。
ちなみに腕時計を見ると、まだ到着してから一時間も経ってなかった…
商店街を抜け街の中心部にへの通路を抜けると、教会にたどり着く。
ヨーロッパなんかで良く見る街のパターンとして、街の中心部に大きなうスクエアを設けて、そこに教会を建てる。
過去に訪れたスペインやペルーなんかでも大抵このパターンで、スクエアは大抵公園になっており、そこで家族連れや日本人(旅行者)を騙そうという(笑)人達で賑わっている。
幸いにも人はまばらだったので、僕はスクエアの石段のひとつに腰かけると、ぼんやりと教会を眺めていた。