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四日目 PM Shall We アヴァンチュール!?

ミコノス宿泊を決めた僕は、その足で宿主であるエレナさんの家に行くと、彼女の母さんらしき人にその事を伝える。

『問題なし』おばさんはそう笑顔で答えると、再び宿に戻り夕食を取った。


今夜も宿のキッチンで自炊である。昨夜と同じようにトマトを煮込んだ料理と、あと僕が買ってきたウゾが食卓に並ぶ。

生まれて初めて飲むギリシアのお酒…瓶からコップに注いで飲んでみる。

異国のお酒は期待を裏切ず未体験の味であった。それが美味しいかどうかは別のお話として…(汗)

「あたしは駄目…」

サカキさんが甘ったるいお酒にギブアップすると、僕一人チビチビとお酒を口にするが、度数が強いのせいかあまり減らない。

結局半分も開けないまま、ウゾはそれ以降の旅のお供として、リュックに入れ持ち歩く事にした(ドランカーですな)。


最後の晩餐(笑)を取った僕とサカキさんは、どちらともなく『外を散歩しに行こう』と言いだし、まだ少し肌寒い夜のミコノスタウンを歩く事にした。

彼女の名誉のために先に言うと、ここから先の描写は、かなり僕自身の主観で書いたものですので、モテない男の妄想だと思って聞き流してくださると幸いです(笑)。


お互いに明日はそれぞれ別の人生に向かって歩き出す。

なので明日が訪れて『さよなら』を言うと、おそらくもう一生会う事が無いだろうし、たとえあったとしても、ミコノスで過ごした不思議な関係にはなりえないだろう。

それがお互いにわかっているのか、夜の街を歩く僕達はとても親密…腕こそ組まなかったが、カップルのような感じで迷路の中を歩き、目にした土産物屋で時間を過ごした。

浜辺から海を眺め、幻想的な街並みを歩き疲れると、そのまま宿の前まで帰る。

鍵を開けて中に入ろうかと言う時に、ふと彼女が階段の所で腰をおろし夜空を見上げた。

「きれいね」

全てにおいて日本とは違う星空に感嘆の吐息をつくと、少しの間夜空に視線を釘づけにしていた。

僕も彼女の隣に腰を下ろすと、同じように夜空を眺めた。


そこから星を眺めながら少し会話した。

会話の内容はほとんど覚えてない。いや、正確に言うなら会話が途切れる事で、二人の間に何とも言えない沈黙が訪れるのが怖くて、無理やりに何かを言葉にしていていたのかもしれない。

言葉の会話の向こう側で、声にならない感情が僕の中に(あるいは彼女も?)沸き起こり、会話なんかどうでもよくなってしまう(汗)。


僕は彼女の肩に手をまわし、そっと抱き寄せたい衝動に駆られていた。

もしたとえそうなったとしても、きっと彼女は拒まないだろうと、僕は思った。

いや、むしろ彼女自身がそういう展開になる事を望んでいるとさえも…


海外の旅先で出会った日本人同士は、日本人と言う共通点で結構親密になれたりもする。

そういった今までの経験とはまた違った、不思議な感覚だった。

自分の容姿やキャラなど度外視すれば、まるで映画のワンシーンみたいだな…と話も上の空でそんな事を思う。


さて、どうする…

このまま肩を抱き寄せるか、それとも……

恋愛に関してのスキル不足を否めない僕は、タイミングを図れないままうわべだけの会話を続ける。

そして次に取った僕の行動で、意外なほどあっさりと物語は終わった。

内心の緊張を隠すために僕はおどけたように言った。

「このままここにいたら、僕は違うモードに入ってしまうかも」

もう既にそのモードに入っているのだが、あえて茶化すように言って見せた。

その一言でふと幕が下りたように彼女が腰を上げると、僕に背中を向けた。

「そろそろ帰ろっか」

煮え切らない僕に痺れを切らしたのか、それとも彼女自身も冷静になったのだろうか…

熱が冷めたみたいにいつもの笑顔になると『おやすみ』を言い残して、階段(彼女の部屋)を登って行った。

彼女の背中を見送る僕は、ほっと安心したような…なんだか心に忘れ物をしてしまったような気分になり、釈然としないままベッドに倒れ込むと、そのまま眠れぬ夜を過ごす事になった。


でも、実はここからもう一つのドラマがあって…

それから何時間かして、夢うつつの中でふと二階の扉があき、サカキさんが階段を下りてきたのだ。

サカキさんは階段を降り切ると、寝息を立てている(フリをしている)隣を通り、キッチンの隣にあるトイレに向かった(そう言えばトイレ一家にしかなった)。


サカキさんが用を済ませ再び階段を上がる。

目を閉じたまま彼女のたてる音だけ聞いていた僕の耳に、階段を上っていくサカキさんの足音が聞こえる。

階段を登り切ってドアを開けて、すぐに閉めると、今までの妄想を全て打ち崩すような音が耳に飛び込んだ。


『ガチャリ!』


扉の鍵を閉める無情な音…

侵入者を防ぐための鍵だけど、この場合の侵入者って『俺』の事?

ガチャリってオイ……僕は込み上げる笑いを堪えながら、心の中でツッコミを入れていた。

寝耳に水とはこういう事…そんな事をしなくても、僕は『そんな事』しないよ!いや、しないハズ(汗)。


今まで抱いていたのは、僕の一人相撲の妄想だったのか、なんだったのか…(涙)

まるでコメディー映画のようなオチというか、結末におかしくなって、僕はベッドの中でもう一度呟いた。


「ガチャリってオイ」

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