四日目 AM 幸せのペリカン
ネロ君と別れた後、僕はあてもなくミコノスの街中を歩き続けた。
これと言って目的地は無かった。この白い迷路の中を歩いていると、自分が今どこにいるかわからなかったし、どこに向かっているのかもわからない。
どこにたどり着くのかわからない…次々に目に飛び込んくる風景そのものが新鮮で楽しかった。
感覚で海の方向を目指して街仲を南下していくと、小さなポート…浜辺にたどり着く。
ここはミコノスの中心部と、言ったらいいのか…小さな漁船、デロス島行きのボート、水揚げした野菜や魚をさばく場所、オープンカフェ風のレストラン、旅行会社のオフィス、土産もの屋が並んでいた。
浜辺で魚をおろしている場所に行くと、そこには数匹の猫が、たったいまさばいた魚を漁師のおじさんからもらっていて、自分の取り分を貰った猫が素早くも物陰に隠れると、鮮度のいい朝食を楽しんでいた。
その隣にはこの島の名物である、ペリカンのペドロ君が、猫達と同じようにう魚をもらっていた。
意外とデカいペドロ君を恐る恐る触ってみると、結構いい感触…(笑)調子に乗って触り続けていると、いい加減向こうが嫌がってきて、最後はその大きなくちばしを振りかざし「向こうへ行け」の意思表示をされてしまう。
ペドロ君に追い払われた僕は、浜辺をぶらっと歩いてツーリストに行き、デロス島へのボートのチェックをする。
世界遺産に登録されているアポロン生誕の地は、この旅で行きたい所の一つだった。
ペルシアとの戦いの後、ポリス同士の団結を固めようと結ばれたデロス同盟。アテネ全盛のその時代で、デロス島はかなり栄えたらしい。
アポロンが生まれたとされるその島では文化、貿易が栄えて、今自分がいるミコノス等はデロス島のおまけと言うか、穀物庫と言う位置づけだったの事…
(デロス島はその後荒廃し、今では誰も住んでいない『遺跡だけの島…』になってしまったが…)。
僕がツーリストデロス行きのボートの時間をチェックすると、一日に何便か出ていいるようで、お昼からもあるらしい…と言う情報を手に入れた僕は、ツーリストのお姉さんに笑顔でお礼を言うと店を出て、近くにあるスーパーマケットに向かった。
そこで自分が飲んだ事のない未知のお酒『ウゾ』を手に入れると(1000円くらいか)、ひとまずは宿へ帰る事にした。
帰る途中、もう一にここに泊まろうと考えていた僕は、宿主であるエレナさんの自宅へもう一泊分の宿代を払いに行こうとするが、道に迷い中々たどり着けない(汗)。
何とか見つけ出して、彼女のお母さんに宿代を手渡すと、それと同じくらい迷いながら何とか宿へ帰りつく。
宿に帰るとサカキさんが『パンありがとう』と笑顔で迎えてくれる。
サカキさんも少しで歩いていたらしく少しの間、町中の情報を交換し合う。
昼からデロス島へ行こうと思っていた僕は、それまでの時間を読書に充てる事にした。
とりたててやる事のないサカキさんと、宿のテラスに上がり…彼女の洗濯物が干されている広いテラスで、各々読書に勤しんだ。