三日目 PM〜四日目 AM 再会しよう!
ギリシアのお酒?』トマトソースのソーセージをかぶりつつ、どちらからともなくそんな話題が上っていた。
ガイドブックの地球の歩き方で、ウゾと言うのがギリシアのお酒だと言う事を知っていた僕は『じゃあ、明日買ってくるから一緒に…』と言い、再びサカキさんとの話を続けた。
彼女が留学しているスイスは物価が高い。普通のサラリーマンの手取りが日本円の40万円くらいとの事…
10年ほど前に自身がヨーロッパを訪れた時、スイスの登山鉄道に乗ってみたかったのだが物価が高い…と言う事前情報を得ていたので断念した記憶がある。
同じ理由でフランス、ドイツも滞在している期間が異様に短かった…(汗)。
ドイツではノイシュバインシュタイン城(よくカレンダーなんかに載っている古城)、フランスではルーブル美術館と言った場所だけ訪れ、物価から逃げるようにスペインへの夜行列車に乗った(笑)。
ルーブルの近くの売店でホットドッグが400円くらいしたかな…あと、地下鉄ではずっと二人組のスリに狙われていて、あまりいい記憶がない。
ルーブル美術館も広すぎて何を見ていいやら…モナリザとミロのビーナスが想像以上に小さかったのがとても印象に残っているが。
公用語がスイス語とドイツ語が混同している国でホームステイ(おそらく)しているサカキさんは、友人のカップルと共にスイスから南下してきたとの事…
途中でそのカップルと別れ一人ギリシアに来て、次はギリシアかトルコに向かうと言っていたように記憶している。
日本にはあまり執着がないみたいで、卒業後もスイスで働きたいと言いきっていた。
僕からすればその年代でそこまでの考えを持っているのはとても凄い事…だと思うと同時に羨ましかった。
30を超えた僕自身はまだ漠然としか、自分の進む方向がわかっていないのに(それも正しいかどうかも…)サカキさんは、もう自分の進むべき道が見えている…
当たり前だが…自分の本当にやりたい事を見つけるのは、人生の目的であり意味だと思ってる。
好きな仕事であったり、理解しあえる恋人、友人、家族と過ごすことであったり…
自分にとって大切な『何か』が見つけられれば本当の意味で人生が始まると思うし、早ければ早いほどチャンスをものに出来る確率は高いと思う。
僕の場合…気が多い性格で、色々な事をやってみて結局どれも中途半端で結果が出ずに、やっとたどりついた自分の『本当にやりたい事』だって全然ものになっていない(汗)。
そして今の仕事も、夢とは大きくかけ離れたもので…それ自体は嫌いな仕事ではなかったが、自分がその仕事をあと10年続けている姿は想像できなかった。
大方人生の折り返し地点を過ぎている僕にとって、これから先に残された時間はどんどん少なくなっているのに…何をしているんだろう。
心の中でそんな事を考えながら、僕とサカキさんはたくさんの事について話し合った。
そして話が尽きるとサカキさんは「オヤスミ」の言葉を残して二階へ、僕は一階のベッドに身を沈め眠りについた。
朝起きるとその足で外へ出る。
宿の道を挟んだ向こうに見える小学校を左手に白い街並みを散策する。
通りを北に向かい、小さなマーケットに入ると店の中を物色する。
日本と違い目新しいのは、レジの隣に焼きたてのパンがある事かな…香ばしい香りと安い値段に誘われるように、何個かパンを買うとそれを手に宿に戻る。
サカキさんはまだ二階で寝ているみたいなので、一階のテーブルで一人でパンを食べ、何個かをテーブルの上に置き『食べてください』の書置きを残して再び宿を出る。
ミコノスも二日目となると多少は道を覚えているかな…と思ったがこれが全然(汗)。
前にある道を歩いていると『いったい今どこを歩いているのか…』と言う錯覚に陥る…
とにかく海の方へ…と歩いていると、町の中心近くに別のマーケットと小さな公園を見つけ、そこでしばし足を休める。
その公園(ベンチ一つと小さな植え込み)にもネコがいて…人懐っこく僕の方へ近づいてくる。
シャープな三毛猫?のイメージのその猫はまだ子猫で、僕が喉を撫でてやると気持ち良さそうに喉を鳴らした。
僕はその子猫に『ミロ』と名付けると、隣のマーケットでツナ缶を買い御馳走した。
その姿を眺めながら僕は、いつになるかわからないけど自分がまたこの島を訪れた時、この子と再会できるかな…?
と、ふと感傷的に考えたりしていた。
ベンチに座り朝の太陽を浴びながら、しばらくミロ君と戯れ…再び僕は歩き出した。